2024年9月28日、コープ自然派憲法連絡会では、「核兵器をなくす日本キャンペーン」の浅野英男さんを招いて学習会を開催。核不拡散条約(NPT)と核兵器禁止条約(TPNW)という2つの条約の違いをヒントに、世界から核兵器をなくすために何ができるかを考えました。

核不拡散条約(NPT)とは
核不拡散条約(NPT)は、1970年に成立し、現在191か国が参加する条約です。締約国を核兵器国(アメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリスの5か国)と非核兵器国(それ以外)の2つの地位に分け、非核兵器国は核兵器をもってはいけない、核兵器国は軍縮に誠実に取り組まなければならない、そしてどの国においても発電、農業、医療など軍事以外の分野での放射線使用は権利として認めると定めています。
非人道性というキーワード
NPTの強みは、 核兵器国も同じテーブルについて核軍縮について話し合いができるという点にあります。しかし一方で、核保有の全面禁止までは踏み込めていません。世界情勢の緊張が高まり、NPTにおける核軍縮が停滞するなかで、2010年のNPT再検討会議では「核兵器の非人道性への深い懸念」 が合意されました。「核兵器の特異性はその非人道性にある、だからこそ核兵器は全面禁止されなければならない」。この合意に基づいて「核の非人道性会議」が開催され、そこでの議論を経てつくられたのが核兵器禁止条約(TPNW)です。つまり、NPTとTPNWは対立するものではなく、NPTを母として生まれたのがTPNWなのです。
核兵器禁止条約(TPNW)とは
核兵器禁止条約(TPNW)は、2021年に成立した新しい条約です。核兵器を作ること、持つこと、使うこと、使うと脅すことなどのすべてを禁止し、核兵器の廃絶を義務づけた史上初の条約となります。さらに、原爆の投下を受けた広島・長崎だけでなく、核兵器の製造や実験で被害を受けた人たちも含めた世界中の被害者に対する援助と、環境修復も義務づけています。現在98か国が署名あるいは締約国となっており、世界の過半数(99か国)目前ですが、核保有国や日本を含むその同盟国のほとんどは未参加です。そのような国にまで参加を広げていくことが課題ですが、核兵器を禁止する明確な法的規範ができたことは、非核保有国や市民社会にとって大きなモチベーションになっています。

日本のTPNW参加に向けて
日本がTPNWに加わるためのステップとして浅野さんは、締約国会議にオブザーバー参加をすること、署名をめざすと表明すること、そして現実的に東アジアの緊張を緩和する外交を実現することで、条約への署名や批准が見えてくると考えています。
現在、日本政府は「アメリカの核の傘の下にいる限りTPNWには参加できない」という姿勢です。それに対して核兵器をなくす日本キャンペーンでは、2025年2月に「被爆80年核兵器をなくす国際市民フォーラム」を開催し、翌3月に予定されているTPNW第3回締約国会議へのオブザーバー参加実現に向け世論を高めていこうとしています。「TPNWも完璧な条約ではなく、みんなで育てていくという視点が大切です。核兵器廃絶に向け、日本がイニシアティブをとって進んでいけるよう、市民の声を盛り上げていきましょう」と浅野さんは締めくくりました。
日本被団協がノーベル平和賞を受賞
日本被団協がノーベル平和賞を受賞 10月12日、日本原水爆被害者団体(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞しました。68年間にわたり、被爆者の立場から核兵器廃絶を世界に訴えてきた活動が世界に認められました。今回の受賞を機に、私たち市民の手で必ず「核兵器のない世界」を実現しましょう。
Table Vol.508(2024年12月)