反貧困ネット事務局長・湯浅誠さん。2008年に日比谷公園で行われた「年越し派遣村」村長としても知られています。

2018年12月15日(土)、コープ自然派兵庫などが実行委員会を結成し、「いのちとくらしの映画祭with湯浅誠」を開催。
当日は2本の映画と湯浅誠さんの講演会が行われ、誰もが幸せに暮らせる社会はどうあるべきかを考えました。

みんなが楽しむために

「いのちとくらしの映画祭with湯浅誠実行委員会」は、市民デモHYOUGO、フードバンク関西、熟年者ユニオン、コープ自然派兵庫が結成。

 映画「みんなの学校」と「隣る人」の間に湯浅誠さん(法政大学教授)の講演会が行われました。湯浅さんは1995年からホームレスや生活困窮者の支援に携わっています。湯浅さんには障がいを持つ兄がいました。小学生の頃、近所の子どもたちと草野球するとき、参加できなくてつまらなさそうな兄を見ていると自分たちも楽しめなくなり、一緒に遊ぶためのルールをみんなで考えました。そして、兄が打席に立つときはピッチャーが3歩前に立ち、打つと代打が全力疾走するというルールにしたのです。「みんな楽しく遊べるようみんなでルールを変えたのです。法律や条例だって誰もが幸せになるよう見直すべきではないでしょうか」と湯浅さんは話します。

誰一人取り残さない世界

 日本では7人に1人の子が貧困だと言われていますが、果たしてその実感があるかどうか、湯浅さんは参加者に聴きます。すると、約6割が「実感がない」と回答。実感がないのは、子どもの貧困には赤信号と黄信号があり、黄信号は外見からは見えにくく、あえて助けを求めないからです。「でも、何かのきっかけで黄信号から赤信号に変わり、さらに深刻な事態になりますが、地域の人たちの支えがあれば赤信号に変りにくくなります。例えば子ども食堂なども地域の人たちの支えの1つです」と湯浅さん。貧困の国際基準を決めているのはOECD(経済開発協力機構)で、OECDの第一のミッションは各国の経済成長の促進です。世界ではある程度の経済格差は発展にとってプラスだとされていますが、行き過ぎた格差は発展にとってマイナスになるという世界的な合意があります。そこで、OECDは相対的貧困率を下回る人が多くなれば、その国は発展しにくくなると警告。つまり、貧困の問題は人権問題と同時に発展の問題でもあるというのです。

地域でできることは何か

 SDGsとは「持続可能な開発目標」の略称で、リーマンショックの反省から、地球上の誰一人として取り残さないことをメインスローガンに、2015年9月に国連サミットで採択されました。SDGsは180ヵ国で合意され、日本も参加しています。そこで、湯浅さんはSDGsを小学生時代の体験、つまり、誰かを取り残すとみんなが楽しめなくなるという体験から、「誰一人取り残さないような環境をつくることによって地域全体が元気になるのではないでしょうか」と湯浅さん。この世界の当事者として自分の地域でできることは何かと考え実践すること、それが結果的に子どもの貧困をなくしていくことにつながるのではないかと湯浅さんは話しました。

※子ども食堂
 家でおなかをすかせていたり、1人でごはんを食べたりしている地域の子どもたちに、無料または低額で食事を提供する取り組み。多くは地域住民がグループをつくり、朝日新聞のまとめでは、2018年4月末時点で少なくとも全国に2286ヵ所あります。

会場にはコープ自然派兵庫組合員などが参加する「子ども食堂」などのブースが並びました。

Table Vol.385(2019年1月)