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くらしと社会

原発からの命の守り方

2022年9月3日(土) 、コープ自然派兵庫(脱原発!チーム原っぱ主催)は森松明希子さんのお話シェア会を開催。
福島原発事故後、母子で大阪に避難している森松さんに「ふつうの暮らし」を取り戻すための活動について聴きました。

※イメージ

被災地の報道と情報差

 2011年3月11日福島第一原発事故当時、森松さんは福島県郡山市のマンションに0歳の娘と3歳の息子、夫の4人で暮らしていました。事故後、原発から20㎞圏内の強制避難区域(富岡町、大熊町、双葉町のそれぞれ全域、田村市、南相馬市、楢葉町、川内村、浪江町、葛尾村のそれぞれ一部)では、住民たちがバスで運び出されます。森松さんたちが住む郡山市は第一原発から60㎞圏内だったため、避難する人もいましたが、強制避難者の受け入れ地にもなりました。森松さんは5月に子どもと3人で大阪に避難、夫は現在も郡山市に住んでいます。

 大阪に避難してから、森松さんは被災地との情報の差に気づきます。関西で放映されているテレビのローカルニュースでは、福島第一原発事故はもちろん、チェルノブイリ原発事故との比較や子どもの健康被害など、放射能汚染や事故の深刻さについて詳しく報道されていました。一方、福島県内では入学式や店舗の再開など復興に関する報道に偏り、駅や街中には「がんばろう福島、がんばろう東北、がんばろう日本」などのスローガンが掲げられ、支援物資や給水車に人々が秩序正しく並ぶ美談ばかりが報じられました。知りたい情報は放射能汚染や健康影響といった生命・健康に対する権利が守られているのかでしたが、被ばく状況を報じるニュースは「健康に直ちに影響はありません」ばかりでした。放射能汚染や被ばくについて話すことはタブーとされる雰囲気は、まるで「『はだしのゲン(中沢啓治)』で読んだ太平洋戦争中の日本の雰囲気、当時の全体主義的な空気を当時の福島で体感しました。福島県住民でも原発関係者など原発の危険性をよく理解している人は、地震発生後すぐに避難するなど、対策がとられていたことが後でわかり、愕然としました」と森松さんは話します。

誰もが守られる社会を

 強制避難は憲法に明文化されている「居住移転の自由」「職業選択の自由」などあらゆる基本的人権が侵害されています。一方、自主避難は住み続けることが可能な場所から自分の意志で離れるため、居住移転の自由の侵害が侵害されていないかのように思われています。しかし、国や専門家が安全と線引きした強制避難区域外の地域でも放射性物質が存在し、子どもの体調不良が起き、避難する人たちがいるという事実があります。国連の「国内避難に関する指導原則」には、内戦や暴力行為、深刻な人権侵害や、自然もしくは人為的災害などによって家を追われ、自国内で「避難生活を余儀なくされている」人々を国内避難民とし、基本的人権を守らなければならないという国際社会で通用する基準があります。原発事故によって自主避難している人たちは人為的な災害によって居住地域から避難を余儀なくされた国内避難民であり、それらの人々の人権を保護しない日本は世界の常識から逸脱した状況が続いているということなのです。

 森松さんは「原発賠償関西訴訟」原告団86世帯約238名の代表を務めています。原発賠償訴訟は全国で起こされ、京都や兵庫などどの地域でも「避難の権利」を訴え、原告団世帯の多くは母子だけで福島県外に避難する分散型避難を強いられているということも自主避難の特徴です。憲法で保障された基本的人権、とりわけ13条の個人の尊厳・幸福追求権から導かれる自己決定権や憲法前文の平和のうちに生存する権利、25条の生存権をもとに、健康に生きる権利や自己決定権などを保護する責任が国にはあり、放射線被ばくから免れ健康を享受することは国民(市民)の権利です。森松さんはすべての人の生命・健康に対する根本的な権利を主張しています。

 福島第一原発の被害者の人権保護について、日本は国連から多数の勧告(第2回UPR勧告、グローバー勧告、社会権規約委員会、自由権規約委員会、女性差別撤廃委員会、第3回UPR勧告、子どもの権利委員会など)を受けています。「子どもの甲状腺がんと原発事故に因果関係があると多くの人が考えるでしょう。しかし、病気になっても裁判を起こさなければ認められず、立証は困難です。最も脆弱な子どもが守られない社会は、誰の人権も守られない社会だと私は考えます」と森松さんは話しました。

講師の森松明希子さんは、原発被害者訴訟原告団全国連絡会共同代表・原発賠償関西訴訟原告団代表を務め、国連人権理事会でスピーチするなど国内外で活動しています。

Vol.475(2022年11月)より
一部修正・加筆

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