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食と農と環境

人と森の新たな関わり方を創造しよう

2024年8月21日、コープ自然派しこく(徳島南エリア)では、徳島県立那賀高校にて地元の木を使った棚づくりイベントを開催。森で育った木が暮らしで活躍するまでの流れを体感しました 

森林のまち那賀町

 那賀町は、徳島県南部に位置し、面積の約95%が森林の中山間地域。町内には、おからクッキーやシャーベットでおなじみの「きとうむら」もあります。那賀高校はそんな地域にあって、林業の未来と地方創生を担う人材を育成したいと、9年前に「森林クリエイト科」を創設。充実した実習や資格取得で林業のスペシャリストを育成しています。学校のすぐ裏には那賀川が流れ、グランドの向こうには山がそびえる美しいロケーションです。

 町内の森林の約65%はスギやヒノキの人工林です。スギやヒノキはまっすぐに育つように密植されますが、葉が茂ってくるとそのままでは日光や雨が根元まで届かず、うまく育ちません。そこで間伐をし、残した木がしっかりと根をはり大きくなるように手入れをします。

森を学び、木を活かす

 山の手入れは土砂崩れを防ぐなど山の機能維持の意味でも大切な仕事です。適切に管理するためにはさまざまな技術が必要になりますが、那賀高校の丸山先生は、特殊伐採の技術を持つ職人でもあります。特殊伐採とは、木を根元で切って倒すのではなく、ロープワークなどで木に登り、上から切っていく伐採方法。木を倒すスペースのない場合や、高所の剪定などに使われる技術です。

丸太の前に立ち説明する丸山先生

 間伐された木は、細いものは薪として、もう少し太いものはキャンプで人気のスウェーデントーチとして販売し人気商品となっています。さらに板や角材をとった残りの小さな端材は積み木に。生徒たちは、木を余すことなく使い切る経験を通して資源を大切にすることを学んでいます。

スギやヒノキの端材で棚づくり

 今回のイベントでは、そんな間伐材を使い、思い思いの棚を作りました。設計図はありません。どんな形の木材を使うか、どんなふうに組み合わせるか、すべて自由。那賀高校の先生3名と生徒3名から技術的なサポートを受けながら、それぞれの発想をカタチにしていきます。差し金(直角が測れる金属製の定規)で長さを測り、のこぎりで切り、ボンドやビスで止めます。採寸に悩み、木目の向きに迷い、慣れないのこぎりやドリルに苦戦しながらも、作業に集中すること約1時間半。仕上げにサンドペーパーをかけて、世界にひとつの棚ができあがりました。那賀高校の丸山先生は「今日の体験をきっかけに、物を大切にすることや、想像力を養うことなど、これから生きていく上で大切なチカラを育ててもらえたら」と話しました。

環境共生型の林業

 主催メンバーのひとり、コープ自然派しこく理事の藤園さんは那賀町在住。那賀町には、自伐型林業のモデルと位置付けられる橋本林業の森があります。一般的な林業では皆伐といって、一定区域の木をすべて伐採し、更地となった山に一斉に植林します。対して自伐型林業は、樹木の調和を大切に、必要な木だけを選んで間伐を繰り返すやり方です。藤園さんは、「わたしは生物多様性を維持する林業の仕方を応援しています。低コストで家族経営など小さな林業家にとって持続しやすく、また生態系への影響や土砂流出のような災害の危険性も少ないといわれている自伐型林業もそのひとつです」と話します。

コープ自然派しこく理事の藤園さん

 森には木材の生産以外にもさまざまな機能があります。「未来の林業では森をどんなふうに使っていくのがいいのか、改めてみんなで考えて、那賀町の森をデザインしていけたら」藤園さんの思いは広がります。

Table Vol.506(2024年10月)

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