2024年5月26日、コープ自然派おおさか(ビジョンくらす)は、学校教育や登校拒否の問題について、トーキョーコーヒーの木ノ本まりさん(通称まりねえ)に話を聞きました。
トーキョーコーヒーとは
「トーキョーコーヒー」は、「登校拒否」のアナグラム(文字の並び替え)から生まれたネーミングです。目指しているのは、大人がイキイキと活動できて学び合える拠点をつくり、活動を通じて学校教育を進化させるムーブメントを起こすこと。その拠点は全国400カ所に広がっています。登校拒否の問題が、なぜ大人の拠点をつくることにつながるのでしょうか。
子どもたちの声を聴くこと
トーキョーコーヒーが大切にしているのは、子どもたちの声を聴くこと。文部科学省の調査では約30万人の小中学生が学校に行かないことを選択。この数字はここ10年、毎年増加傾向です。「これは子どもに問題があるのではなく、テストや通知表でこどもの評価を数値化する学校や教育システムの問題ではないでしょうか」と、まりねえは話します。数値化された評価で進路や就職先が決まり、少しでもいい会社に就職することが生活を安定させるためには必要だとされてきましたが、現代の社会のあり方ではそのような保障はありません。
子どもが登校拒否をすると、親は原因について悩んだり将来を悲観しがちですが、その姿を見て子どもは学校に行けない自分を責めてしまいます。「できれば登校拒否を大げさに取り上げるのではなく、当たり前だというぐらいに受け止めてあげてください。現在の教育システムに感覚的に拒否反応を起こしている子どもたちが、学校に行かない選択をしているのではないでしょうか。学校に行かなければ人生が終わるということはありません」とまりねえは話します。
大人が変わる
子どもは、自分の力だけで環境を変えることはできません。変えられるのは大人です。だからこそトーキョーコーヒーでは、まず大人が悩みから解放されて、楽しみながら子育てや教育について学び合える拠点が必要だと考えています。そして、大人が活動する間、子どもは何をしてもいい時間を安心して過ごします。まりねえは「安心できる場にいることで自己肯定感や主体性が育てば、子どもはどんなことからでも学ぶことができます」と。
邪魔をしない
誰でも得意なこと、不得意なことがあって当然です。これなら頑張れるということを見つけるのが教育で、子どもたちは失敗しながら学んでいきます。例えば、ケガをしないように危ないことはさせなかったり、人に迷惑をかけないように先回りしてやめさせると、子どもの学ぶ機会を大人が奪ってしまいます。「教育の真髄は、邪魔をしないことです」とまりねえは話しました。
コミュニティのチカラ
「トーキョーコーヒーは登校拒否の問題から始まりましたが、それだけでなく、まちづくりなんだなと感じているところです」と話すまりねえ。活動を通していろいろな人と出会い、集い、地域とつながっていきます。登校拒否の解決策として医療が掲げられることもありますが、例えば発達障がいがあっても、一律のやり方を押し付けるのではなく、受け入れられる社会であれば問題にはならないはず。医療だけではなく、人と人とのつながりや地域のつながりで解決できることもあるはずです。
「大事なことは、まず私たちが元気で楽しみながら笑顔でいること。自分が居心地のいいと感じる場にいることで、コミュニティが生まれ、それがたくさん広がっていくときっと面白いと思います。教育はこれから変わる、きっともう動き出してますよ」とまりねえは暖かく力強い言葉で締めくくりました。教育の未来を変えるのは大人です。
Table Vol.504(2024年8月)