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くらしと社会

みんなで子育て

コープ自然派兵庫には、イベント参加者のための託児を行う有償ボランティア「ママサポーター」があります。3月13日(月)、コープ自然派兵庫はママサポーターための学習会を開催。「NPO法人GivingTree」・野口婦美子さんを講師に迎え、里親支援や子どもとの関わり方についてお話を聴きました。

「毎週月曜日にコープ自然派さんからバナナなどをご提供いただいています。ありがとうございます!」とNPO法人GivingTree・野口婦美子さん。

家庭で育てる里親制度

 野口さんは児童養護施設「社会福祉法人神戸少年の町」で保育士として30年間勤務し退職後、里親としてファミリーホームを運営しています。里親制度は、事情があって家族と離れて暮らす子どもを、保護者の代わりに家庭内で預かり養育する制度です。里親の種類には、養子縁組をしない「養育里親」(預かれる子どもの人数が4人まで)と「ファミリーホーム」(子どもの人数が6人まで)、ケアが必要な子どもを養育する「専門里親」、養子縁組を希望する里親の「養子縁組里親」、親族が費用のサポートを受けながら養育する「親族里親」、児童養護施設で生活する子どもを週末や夏休み、年末年始などに継続して家庭に迎え入れる「季節・週末里親」があります。

 神戸市内に児童養護施設は13軒あり、ファミリーホームが5軒、乳児院(就学前の乳幼児)3軒、自立援助ホーム(原則、義務教育終了後から20歳まで)、児童自立支援施設があります。また、神戸市には「子育てリフレッシュステイ」というサービスがあり、保護者が病気や冠婚葬祭、出産、また、リフレッシュをしたい場合などに子どもを児童養護施設やファミリーホーム等に預ける制度があります(有料)。

自立後も続く里親家族

 欧米には児童養護施設は少なく、子どもたちは基本的に里親のもとで育てられます。日本は血縁者が子どもを育てるという考え方が根強く、主に児童養護施設が役割を担ってきました。「施設で生活する年月や保護者との関係など子どもたちの境遇はさまざまですが、0~18歳まで施設で過ごした子は他人との密接な関係の持ち方が苦手になることがあります。家庭的な暮らしを経験できる里親制度はとても大切です」と野口さんは話します。

 退職を機に野口さんは里親登録を行い、ファミリーホーム「野口ホーム」の運営を開始。野口さんが里母、夫が里父、夫の母が補助員として、子どもたちと生活をしています。児童養護施設は退所後のケアやサポートが受けにくいため、独立後の子どもたちが実家のように戻ってこられる場所をつくりたいと思い、ファミリーホームを始めたということです。「巣立った子どもたちは成人式や就職、結婚などの節目やお盆や正月などに帰省してくれます。成人式に私の振り袖を着てくれる子もいて、つながっていくことがうれしいです。私自身に子どもはいませんが、野口ホームに里帰り出産する子もいて、今では孫が4人います」と野口さん。また、野口ホームで育った長女が結婚して近くで暮らしながら、野口ホームの補助員をしています。社会的養護の経験者として、子どもたちへのアドバイスや子どもたちが孤立しないようサポートしているということです。

野口さんが子どもたちへの読み聞かせをするなかで誕生した物語が、野口さんのイラストとともに「ほんとうにかぞく」・「ばいばい おねしょまん」(さく・え/のぐちふみこ 明石書店)という絵本になりました。

子どもたちは社会の子

 活動を通して里親へのサポートが足りないと感じた野口さんは、2017年、「NPO法人GivingTree」を設立。里親向けの支援プログラムや相談支援、里親支援から自立した子どもたちに定期的に食材を届けてつながり続ける「ふるさとギフト」、社会人として必要になる費用の助成、行政のサポートが届いていない家庭やヤングケアラーの家庭向けに食材の提供や地域のこども食堂と連携してお弁当の配達など子育て世帯への食の支援、保護者のための子育てトレーニングや孤立した保護者のための講座などを行っています。

 野口さんは子育てを楽しむコツとして、「みんなで子そだて」を頭文字に構成した標語「ずにながす(根にもたない)・深呼吸をする・かまをつくる・こぼこはユニーク・育ては自分育て・うだんする・んだんかぞくになる・を出してはあかん」を紹介。子どもからひどい言葉で傷つけられることがありますが水に流す、子どもを叱る前に意識して落ち着く、親も子どもも話せる仲間をつくる、子どもの特性をユニークな面ととらえ、1人で抱え込まない、ケースワーカーに相談する、そして、どんなことがあっても暴力はいけません。

 「子どもを自分の分身のように考える愛情も大切ですが、子どもがしんどくなることもあります。子どもとの関わり方のレパートリーを増やす、他の人の子育てを知る、できていることを再確認する、わが子であっても社会の子どもなんだという認識をもつことです」と野口さんは話しました。

ママサポーター担当のコープ自然派兵庫・有吉理事と小林理事(左から)。

Table Vol.488(2023年5月)より
一部修正

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