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くらしと社会

\現役理事長座談会/コープ自然派のいまとこれから

社会が大きく変わりつつあるいま、変革を迫られているのは生協も例外ではありません。コープ自然派の中核を担う5つの生協の組合員理事長が、生協のいまとこれからについて率直に語り合いました。

協同組合の時代

上市 協同組合について考えるヒントとして、「プラットフォーム協同組合」というものが注目されています。例えば、ウーバーイーツの配達のような仕事は自由な反面すごく搾取されているじゃないですか。だからそのプラットフォームを協同組合的に運営することで、幸せな働き方を実現しようという動きがあるそうです。
筆口 若い人たちは資本主義的な利益追求型の考え方に疲れてきていて、「協同」という単語は使わなくても、自然と協同組合的な考え方になってきていると感じることも多いです。オンラインサロンとか、クラウドファンディングとか、同じ価値観の人たちが集まってその中で商品開発をしていたり。いろんなスペシャリストが集まって、リソースを出し合って商 品 開 発 を し て、そ れ を み ん な で 分 け合って買おうって、生協がやっていることそのままじゃないですか。
泉川 協同組合って夢が形になりやすい仕組みですよね。2012年に開設した「福祉ステーションそのせ」も、コープ自然派しこくの中期計画の中で「地元の木を使ったグループホームができたらいいよね」と話し合ったことが実現したものです。その経験がさらに、去年設立された「社会福祉法人コープ自然派ともに」につながっていきました。「ともに」では有機農業による就労支援で、すべてのいのちを大切にした新しい福祉を目指しています。こんなふうに願いが叶うからやりがいがあるし、夢が形になっていくのはすごく楽しいし学びにもなります。
筆口 でも、その魅力を知る人が少ないのがもったいないですよね。
泉川 もっと伝えていきたいから、もっと地域の占有率を上げたいって思います。組合員が増えないと叶わない夢もまだまだたくさんありますしね。

生協の可能性

正橋 コープ自然派は、とにかく安心安全な食、オーガニック、そして環境問題を突き詰めて取り組んできました。でもここ数年、他生協の方と接する機会が増えて、生協って実はもっと幅広くいろんなことができる組織なんじゃないかと感じるようになってきました。
 例えば尼崎市では、空き家対策の一環で、コープこうべが間に入って保証することで、空き家を貧困世帯や海外からの労働者に安く貸し出す事業を行っています。地域には生協以外にも医療生協や、森林組合や、農協や、労働者協同組合などいろんな協同組合があって、それぞれの得意なことを持ち寄ったらもっといろんなことが実現できますよね。
 そしてその中心を担えるのは、やはり「生活者」の集まりである生協ではないかと思うんです。生協を中心に、いろんな協同組合が手を結ぶ。生協は地域に貢献する存在として、もっともっと存在感を発揮していけるはずです。

裾野を広げる大切さ

泉川 周りの人に「なんでそんなに元気なの?」と聞かれることが多くて、そのたびに「良いものを食べてるから」って答えているんです。スポーツをしていることもあって、自分の体は自分が食べたものでできているとすごく実感していて。病院に行くこともほとんどないし、自分がコープ自然派の良さを体現しているというか、自分を見てもらうことでコープ自然派を勧められるのがすごく嬉しいなと思います。
上野 嘘がないのがいいですよね。商品にはすべてに物語があって、おいしいさや安全性にも理由がある。そして、それらは政治にもつながっている。そういうことって、たぶん生協に入らなかったら気づかなかったと思います。商品を買うことで、生き方、考え方をぜんぶ変えてもらった、その一言です。これからもずっと学び続けていくし、成長し続けていけると感じています。
 でも一方で、市民活動の余裕がなくなってきていることも感じています。自分たちが動かないと社会の歪みをよくしていけないと痛感しているのですが……。
筆口 組合員理事やコアな組合員と、これから組合員になろうとする人たちの感覚に乖離があるように感じることもあります。排他的にならないように間口は広くして、組合員になってからカタログ紙面や組合員活動を通して学んでいってもらうような階段をしっかり意識していたいと思います。
正橋 連合商品委員会もまさにそうで、商品が大好きな組合員理事が集まって商品開発をしているので、良い意見はいっぱい出るけれど、果たしてそうやってできた商品が本当に購買につながるか、こだわりと価格のバランスなど本当に悩ましいです。
筆口 組合員組織を山に例えたときに、裾野を広げれば広げるほど山の高さを高くできるという、長期的な見通しをみんなで共有できればいいですよね。例えば、よつ葉牛乳を飲む会から始まったコープ自然派の歴史を知る私たちとしては、牛乳でいちばん売れているのは低温殺菌ではなくUHTだと知ってショックを受けるわけです。でも、UHT牛乳を買って畜産を支えてくれる人がいるから、放牧やオーガニックを広げていけるんだと考えると、両方必要なんですよね。
上市 私たちが目指す「誰もが有機農産物を食べることができる社会」の実現に向けて、ブレるのはよくないですが、柔軟にやっていく必要性はあるのかなと思いますね。

自立したしなやかな組織に

筆口 コープ自然派は5生協10府県にまたがっていて、それぞれ地域性や県民性も違うので、もっとそれぞれの特色を活かしていけたらいいなと思います。
正橋 それと同時に、せっかく5つの生協が集まっているので、情報共有して良い取り組みは全体化するのも大事ですよね。どちらもしっかりできるように、生協ごとのチカラを強くしていかないといけないなと思います。
筆口 生協の職員と、事業連合の職員と、子会社の職員と、組合員と、みんなで意見交換やコミュニケーションをとる場がもっと定期的にあるといいですよね。
上野 それと、もっと失敗できる組織だといいですね。早いうちから仕事を任せて、いっぱい失敗を経験することで成長できる組織作りが早急に必要だと思います。
泉川 伸びたい芽が伸びられる環境をつくらないといけませんね。
筆口 社会が不安に覆われている中で、どうしても強いリーダーを求めてしまう傾向があるじゃないですか。支配されるのは一種の安心感があると思うんです。考えなくていいから楽ですし。でも支配とは逆の、自立的でしなやかな組織でありたいし、そのためには女性のチカラをもっと活かさないといけないのかなと思います。そして、不安は学習で解消できる部分も多いと思うので、学ぶことで不安を解消して、自分と組織を強くする良いサイクルができるといいなと思います。
上野 国が悪いとか政治家が悪いとかではなくて、自分たち一人ひとりがどうするかなんですよね。大人がしっかり動かないと子どもたちの未来は変わっていかない。責任をもって行動する大人の見本となれるような生協でありたいですね。

Table Vol.500(2024年4月)

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