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食と農と環境

遺伝子組み換えもゲノム編集もない世界をつくろう

2月25日(土)、「第17回GMOフリーゾーン運動全国交流集会in東京」が開催され(オンライン併用)、有機農業者によるパネルディスカッションや国内外の消費者・生産者からの取り組みなどが報告されました。

東京発フリーゾーン運動

 GMOフリーゾーン運動は遺伝子組み換え(以下、GM)やゲノム編集を含む遺伝子操作食品を「つくらない、食べない、買わない」運動です。1999年、イタリアのワイン農家によって始まり世界に広がっていきました。日本では2006年以降、毎年、活動団体が集まり、農地、牧場、山林のフリーゾーン登録状況や活動報告を行い、有識者からの最新情報発表、懇親会、農場見学ツアーなどを行ってきました。

 第17回集会は実行委員長の久保田裕子さん(日本有機農業研究会)の開会挨拶でスタート。「昨年から海のGMOフリーゾーンが加わり、ゲノム編集トマト苗の無料配布に反対する運動が全国に広がった1年でした。消費者が遺伝子操作食品を選ばなくてもいいよう自主表示などの取り組みを進めてきましたが、今年は遺伝子操作作物・生物をつくらない世界にしたいという願いを込めて『遺伝子組み換えもゲノム編集もない世界をつくろう― 大消費地東京から― 』をサブタイトルにしています。『みどりの食料システム戦略』で農地の25%を有機農業にする目標が掲げられましたが、ゲノム編集や遺伝子の働きを止める(ノックアウト)RNA干渉法を用いて虫を殺したり草を枯らせたりするRNA農薬などバイオテクノロジーがその中心です。『NO!GMO』の声を一層強め、GMOフリーゾーンを広げていきましょう」と話しました。

第17回GMOフリーゾーン運動全国交流集会in 東京は、全日本農民組合連合会・農民運動全国連合会・生活クラブ生活協同組合東京・日本有機農業研究会・秀明自然農法ネットワーク・日本の種子(たね)を守る会・日本消費者連盟・遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンが集まり実行委員会形式で開催。コープ自然派兵庫・塩見常任理事が取り組み報告を行いました。

ゲノム、フードテックへ

 全日本農民組合連合会・市村忠文さんのコーディネートで、全国から集まった5名の有機農業者によるパネルディスカッションが行われ、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表・天笠啓祐さんから「遺伝子組み換え・ゲノム編集食品の現状」について問題提起がありました。

 GM作物の栽培面積が広がっていないことから、2019年以降、国際アグリバイオ事業団は作付面積の発表を打ち切りました。モンサント社(バイエル社が買収)の除草剤グリホサートをめぐる訴訟が10万件を超え、被害者側が相次いで勝訴。世界中で不買運動が起き、GM作物全体が衰退に向かっています。しかし、GM作物は飼料や食用油に加工され栽培国の南北アメリカから東アジアへ大量に流入しているのが現状です。また、アルゼンチンでGM小麦、フィリピンでGM稲(ゴールデンライス)が栽培され、主食をターゲットにしたGM作物が登場。インドネシアではGMサトウキビ栽培が懸念されます。成長が早いGM鮭は販売不振からカナダの養殖場が閉鎖を発表、消費者のGM鮭の評価は低いということです。

 一方、ゲノム編集作物や魚・家畜の開発が急速に進んでいます。しかし、ゲノム編集の高オレイン酸大豆(種子や食用油など)の販売を行ってきた米国カリクスト社が経営破綻し、現在、ゲノム編集食品が生産されているのは日本だけという異常事態が起きているとのこと。日本政府は、ゲノム編集食品について環境影響評価も食の安全性評価も表示も不要とし、通常の食品同様に流通できることにしたのです。

 最先端の技術を用いて大規模に工場で食品を生産する「フードテック」(代替肉、昆虫食、培養肉)の開発が進められ、開発にはバイオテクノロジーが駆使されています。パテにGM大豆を使用した「インポッシブルバーガー」(米国)、ゲノム編集で開発が進められている昆虫食、バイオテクノロジーを応用した細胞培養肉など開発が盛んです。

 「GM食品、ゲノム編集食品、RNA農薬、フードテックに依存することは危険です。食の安全を守り、生物多様性を守り、未来の世代を守るためにGMOフリーゾーンを拡大しましょう」と天笠さんは話しました。

遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表、日本消費者連盟代表・天笠啓祐さん。

広がる受取拒否の運動

 ゲノム編集トマト苗の無償配布問題についてOKシードプロジェクト・原野好正さんからその経緯と現状が報告されました。ゲノム編集トマト「シシリアンルージュハイギャバ」は、「シシリアンルージュ」種のトマトにゲノム編集による遺伝子操作を施しGABA(γ-アミノ酪酸)の含有量を大幅に増加させたものです。サナテックシード社(筑波大学発のベンチャー企業)が開発し、パイオニアエコサイエンス社が販売しています。2021年4月から栽培モニターの募集が始まり、苗の無償配布、オンライン販売と続き、加工品のトマトピューレの販売なども始まりました。また、2022年から福祉施設へ、2023年から小学校へ苗の無償配布を発表しています。

 2021年10月からOKシードプロジェクトは、福祉施設・小学校への苗の無償配布に反対するオンライン署名を開始(2022年1月9195筆)。「北海道食といのちを守る会」による自治体への「ゲノム編集トマトの苗を受け取らないで」要望書提出をきっかけに運動が拡がり、全国1098自治体に要望書が提出されます。そのうち646自治体から回答があり、243自治体は「受け取らない」と回答し、「受け取る」と回答した自治体はゼロでした(2023年2月21日現在)。

 続いて、全国の生協からゲノム編集トマト受取拒否の取り組みについて報告があり、コープ自然派を代表してコープ自然派兵庫・塩見常任理事が登壇。「コープ自然派ではカタログに『OKシードマーク』を表記し、組合員の選ぶ権利を保障しています。今後も組合員・生産者に正確な情報を伝え、くらしと食を守る選択をしていきます。そして、さまざまな団体と連携しながら市民の声が地方自治を動かしていく力となり、点と点が線になり国が変わっていくことを願って活動していきます」と報告しました。

増えるフリーゾーン面積

 2023年のGMOフリーゾーン登録状況について遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン・原英二さんから報告がありました。農地面積が883ha増えて10万6919ha、牧場面積が17ha増えて319ha、森林面積が29ha増えて4476ha、海面積は12万17haです。また、GMOフリーゾーン宣言農家を支援するサポーター登録(2013年登録開始)は、個人登録者数が1940人増えて2万5638人、事業社数は18社増えて172社になりました。

 京大発のベンチャー企業リージョナルフィッシュ社は、ゲノム編集魚の陸上養殖施設を京都府宮津市につくりました。2021年12月から宮津市のふるさと納税の返礼品にゲノム編集トラフグが出品されています。そこで、「宮津麦のね宙(そら)ふねっとワーク」が呼びかけ団体となり、「ふるさと納税返礼品の取り下げを求める署名」活動を開始。2022年4月から今年2月12日の署名期間に1万661筆集まりました。

 来年の開催地は熊本県に決定、実行委員長・久保田さんからグリーンコープくまもと・小林香織理事長にバトンが受け渡され、集会の幕が閉じられました。来年に向け、各所属団体による取り組みが始まります。

ゲノム編集作物・魚類の登場でGMOフリーゾーン運動の新しいマークができました。

Vol.487(2023年5月)より
一部修正

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