BLOF理論を提唱する「NPOとくしま有機農業サポートセンター」校長・小祝政明さん

2019年11月13日(水)、コープ自然派事業連合は第1回「国産オーガニック小麦栽培技術講習会」を帯広市で開催、BLOF理論を提唱する小祝政明さんをはじめ、約100名の生産者、流通、行政関係者が参加しました。

司会を務めたコープ自然派事業連合・辰巳副理事長。

BLOF理論で生産向上

 「国産オーガニック小麦栽培技術講習会」はJR帯広駅前・とかちプラザにて開催。コープ自然派事業連合・岸専務理事が挨拶に立ち、「日本の有機市場規模は1,850億円(2017年・農水省)の需要がありますが、耕作面積割合は0.2%(有機JASのみ)で、原材料のほとんどを海外に依存しています。今後、国産有機小麦の開発が鍵になるでしょう。技術的な課題は小祝政明さんのBLOF理論を用い、価格面での仮題は横のつながりを強め加工・流通などバリューチェーンを駆使して解決することが可能です」と話しました。

主催者挨拶をするコープ自然派事業連合・岸専務理事

 有機小麦栽培の最大のハードルは赤カビ病です。その対策と収量アップを目ざして、BLOF理論による栽培技術をどう確立するか、NPOとくしま有機農業サポートセンター校長・小祝政明さんがBLOF理論について説明します。今の野菜は50年前の野菜に比べてビタミン・カルシウム・鉄分など栄養価が激減。また、施肥し過ぎた野菜は虫に食われやすく硝酸態チッソが蓄積され、栄養価・味にも影響を与えています。おいしく栄養価の高い野菜をつくるには綿密な土壌分析とそれにもとづく正確な施肥設計が必要です。コープ自然派が支援するNPOとくしま有機農業サポートセンターでは、植物生理について理解を深め、化学的な有機栽培技術による高品質・多収穫の仕組みを習得、短期間で即戦力となる有機農業者を育成しています。

 BLOF理論は、アミノ酸・ミネラル・土壌の団粒化促進という3つのカテゴリーに基づいて科学的・論理的に行う有機栽培技術。作物は水と二酸化炭素と太陽光を吸収し、光合成によってエネルギー源となる炭水化物をつくり出します。そこで、データ解析された土壌分析に基づきカルシウム・マグネシウム・カリウムなどのミネラルを補い光合成を促進。さらに、炭水化物付きの液肥を与えることで、天候に左右されることなく収穫量が増加し、糖度を上げて葉や茎の表面が強く病害虫の被害を受けにくい野菜をつくります。

国内有機食品市場の増加

 農林水産省生産局農業環境対策課・神園健太郎さんは「有機農業をめぐる事情」について報告。世界の有機食品市場は年々増加し、2017年は約970億ドル(10.7兆円)、面積6,980万haと1999年から約6.3倍に拡大。有機食品売り上げは米国が世界全体の43%、欧米で約90%を占めます。一方、日本の有機食品市場は1,850億円、世界13位。国内で有機JAS認証を取得した農産物は年間約7万トン、海外から日本に輸入される有機農産物は年間約3.3万トンです。消費者の約90%が有機やオーガニックという言葉を知っているものの、表示に関する規制などの認知度は低く、消費者の17.5%が週1回以上、有機食品を利用しています。有機農産物に対する消費者のイメージは、「安全」「価格が高い」「健康に良い」が多く、価格は慣行栽培より1割高までを希望する人が過半数です。現在、有機専門スーパー「ビオセボン」が東京都と神奈川県で14店、食品宅配事業「ビオ・マーケット」は農産物の売り上げが増加。「スーパーホテル」では2012年から約130店舗の朝食サラダに有機JAS野菜を使用しています。有機農産物のマッチングサイト「ファーモ」は事業開始以降、新規商談件数が892件にのぼり、有機農業に対する需要は消費者・流通加工業者ともに高いことがわかります。

世界の有機農業に関する状況について報告する農林水産省生産局農業環境対策課有機農業調査係・神園健太郎さん。

コムギ赤カビ病の現状

 国産有機小麦栽培において赤カビ病リスクは深刻です。基準値を超えると流通できない上に規格外小麦として、直接支払交付金制度の対象外になります。コムギ赤カビ病について、北海道農業研究センター上級研究員・池田成志さんが話しました。海外の農業微生物研究において、小麦などのイネ科作物の病害は慣行栽培より有機栽培の方が少なく、サビ病、ウドンコ病、葉枯病等の発生も少ないことが報告されています。EUでは慣行栽培より有機栽培の方が小麦の赤カビ病の発生もカビ毒の含有量も少ない傾向にあると結論づけられています。また、グリホサートを主成分とした除草剤には長期連用による病害の助長傾向があり、グリホサートの使用は赤カビ病菌の増殖を促進し、結果として実験圃場レベルで発病を増やすことが報告されています。また、作物の病害抵抗性を弱めるだけでなく、植物と共生する細菌の増殖を阻害し、赤カビ病のような病害を助長する可能性があることも指摘されています。「日本の研究者は独立性が低く、命に関わるような被害が発生しない限り、農薬の害について研究は進みません」と池田さんは話します。

グリホサートの有害性について話す、北海道農業研究センター上級研究員・池田成志さん。

「ワタミ」の6次産業モデル

 居酒屋「和民」をはじめ、全国でさまざまな形態の外食チェーンを展開するワタミグループは、2002年、安全な食材を使った料理を提供したいと有限会社ワタミファームを設立、「日本に有機農業を広げていく」ことを目的に、全国の生産者と連携して有機農業を推進しています。ワタミファーム代表・西岡亨祐さんはワタミファームにおける有機農業と6次化の取組み」について話しました。

 ワタミファームによる1次産業(生産)、ワタミ手づくり厨房の2次産業(加工)、外食・宅食事業の3次産業(販売)を通じて全国の消費者に有機農産物を提供。2次産業の加工度を上げることで商品の付加価値を上げ、産業・雇用の創出、農家の収入増といった農業の産業化を図ります。さらに、地域循環型農業、風力発電設備開発による再生可能エネルギー事業に取り組み、ワタミグループ独自の6次産業モデルづくりを目ざしています。

ワタミグループの有機農業の取り組みについて話す有限会社ワタミファーム代表取締役・西岡亨祐さん。

イオングループの取り組み

 大手流通グループ・イオン株式会社の農産物ブランド生産・加工を行うイオンアグリ創造オーガニック事業部・南埜幸信さんは「生産者と小売企業の直接取引によるオーガニックの展開」について話しました。

 EUでは、農業政策として地下水を守るために水源地を中心に有機農業への転換が行われ、コスメやコットンなど農産物以外の広がりが顕著です。米国では土壌の砂漠化防止と、成人病対策など国民の健康のために有機農業促進法が制定され、高級スーパーから広がり始めた有機市場は大衆化が進んでいます。世界の共通テーマとして健康と地球環境を守る有機農業が推進されていますが、日本市場は高価格、鮮度不足、販売側の伝える力の不足が要因で世界から大幅に遅れています。

 「有機栽培と特別栽培は生産現場に限らず売り場で明確に区分することが有機を評価する上で重要」と南埜さん。有機栽培の取り組みは地球環境を保護し、真の健康社会を創造するとともに農業者の人生を豊かにすると、ビオセボン・ジャパン株式会社設立、イオンのプライベートブランド「グリーンアイ」の有機専用ブランドへの展開など、イオングループでは農産物の5%を有機にする取り組みを進めています。

イオングループの農産物ブランド生産・加工を行うイオンアグリ創造オーガニック事業部・南埜幸信さん。

 講習会後には懇親会が行われ、北海道の生産者と交流しました。

「 日本のオーガニック生産者を支えるために、 組合員のみなさんにはオーガニック製品をコープ自然派以外でも購入してほしいと日頃からお願いしています」と話すコープ自然派事業連合・ 小泉顧問(前理事長)。

北海道中富良野町で農産物・加工品の生産・販売を行う相内農園・相内賢悦さん。作付面積 28haの圃場で水稲、タマネギ、馬鈴薯、ニンジンなどを有機栽培しています。

講習会翌日、帯広市の株式会社斎藤農場を見学。 有機小麦栽培10年、「有機は雑草との闘いだからね」と話す斎藤正志さん(前列左から2番目)。 息子さんの一成さん(前列左から3番目)は「すべての畑を有機にしたいです」と話します。

Table Vol.411(2020年3月)