「アマゾン大火災や地球温暖化も私たち一人ひとりの問題です」と話す橋本慎司さん。

2019年9月7日(土)、コープ自然派兵庫(なでしこ原っぱチーム主催)は、橋本慎司さん(兵庫県有機農業研究会理事長)を招き、農業者の立場から見た農産物の安全性についてお話を聴きました。

世界に広がる有機農業

 橋本さんは兵庫県丹波市市島町で40~50種の野菜をつくり、コープ自然派には有機キュウリを出荷。父親の仕事の関係で高校はリオデジャネイロのインターナショナルスクールに通い、日本の大学を卒業後、農業に従事、語学力を活かして国際的な有機農業の活動にも関わってきました。

 近年、有機農業が世界的に広がり、欧米では空前のオーガニックブーム。アメリカのスーパーマーケットでは年20~30%の割合でオーガニック製品が増え、ヨーロッパのオーガニックスーパーマーケットでは、食品から洗剤、歯みがき粉までオーガニック製品が揃っています。このような背景には遺伝子組み換え(GM)食品が健康に悪影響を及ぼすことが明らかになってきたという状況があります。そして、欧米の消費者はGM食品を飼料も含めて敬遠する方向にあり、日本はその余剰分も合わせて輸入が増えています。

有機農業の里・市島

 市島町は「有機農業の里」と呼ばれ、1975年に有機農業出荷組合が設立されました。有機農業の1つの方法として、多様な作物を栽培することで互いに助け合うしくみをつくるという方法があります。ブロッコリーのそばにニンニクを植えると虫を寄せ付けません。また、自然界では一定の虫が増えるとそれを食べる虫が増え、益虫と害虫のバランスが良い環境がつくられます。しかし、農薬を散布し続けると農薬に抵抗性をもった害虫が増え、ますます農薬をかけるという悪循環が発生します。橋本さんは米づくりでは合鴨農法を採用。鴨が水田を移動することで草を取り、糞は肥料になり、虫は鴨が食べるというしくみです。

 橋本さんの野菜の多くは「旬の野菜セット」として供給。「トマトは体を冷やすので夏に、大根は体を温めるので冬に食べるというように、旬の野菜は人間の身体にやさしく、栄養価も高い。また、エネルギーも削減できます」と橋本さん。鶏は平飼いで草を主な飼料とし、近くの氷上酪農で分けてもらった牛乳をヨーグルトにして与えています。

世界の流れに真逆の日本

 日本は世界3位の農薬大国。フランスの4倍、アメリカの6~7倍、スウェーデンの24倍もの農薬を使用、農薬使用量の多い国では自閉症など発達障害の有病率が高くなっています。1990年代からリン酸系農薬に代わって世界的にネオニコチノイド系農薬が使われるようになりました。日本でも黒斑を防ぐなどコメや野菜の栽培に多用されています。しかし、世界各地でハチの大量死や人を含む神経毒性などが明らかになり、EUで使用を規制、続いて中国、アメリカ、韓国でも規制を強化していますが、日本では適用拡大、残留基準の緩和などが進んでいます。

買い支えることで協力

 うどんやラーメン、パスタ、お菓子などの原料として欠かせない小麦、豆腐や納豆などの原料である大豆の多くをアメリカからの輸入に頼っています。また、家畜の飼料はほとんど輸入し、アメリカから輸入される大豆やトウモロコシの9割以上はGM作物です。GM作物には除草剤・グリホサート(商品名・ラウンドアップ)が使用され、グリホサートはEUを中心に世界各国で使用を禁止しています。しかし、日本ではホームセンターでも販売され、校庭や墓地などにも多用。さらに、GMの新しい技術としてゲノム編集が登場、日本ではゲノム編集には表示義務はありません。

 「コープ自然派のカタログには有機JASマークがついた野菜が並ぶようになりました。市販品より少し高くても買い支えてくれる消費者がいるからです。消費者の協力によって有機農業の技術は向上し価格も下げられます」と橋本さん。市島では消費者とともに大豆トラスト活動などを行い、消費者も有機農業に関わる体験を大切にしています。

声を上げることが大切

 福島原発事故の直後、橋本さんは福島県を訪ね、高い放射線量の地域で多くの人たちが暮らしているのを目の当たりにしました。チェルノブイリ原発事故後のウクライナなどでは年間被ばく線量が1ミリシーベルト以上で移住の権利が与えられますが、日本では2014年12月、年間20ミリシーベルトを下回った地域は「特定避難勧奨地域」の指定が解除されました。福島県では甲状腺がんの子は増え続けています。橋本さんは広島原爆の被爆二世、中学生の時には平和使節団としてドイツに行った体験もあり、福島原発事故後、自身の体験と重ね合わせました。福島産のお米や野菜も全国に出荷されていますが、福島原発事故後、放射能測定基準値が引き上げられたままです。

 さらに、溜まった放射能汚染水を海に流すことが大問題になっていますが、「こんなことはやめてほしいと声をあげることが大切。消費者としてぜひ反対運動に取り組んでください」と橋本さんは話しました。

司会・進行は「なでしこ原ったぱチーム」の吉本さん。

Table Vol.402(2019年10月)