2022年11月30日(水)、コープ自然派兵庫(ビジョン「地域と福祉」主催)は、瀬戸大作さん(一般社団法人「反貧困ネットワーク」事務局長)による講演会「生きてくれ~駆けつけ支援の現場からの報告と提言~」を開催。
日々、過酷な現場に向き合う瀬戸さんの活動から改めて生協の原点を問い直しました。

瀬戸大作さんはパルシステム連合会職員としてさまざまな活動を行っています。「ぼくの活動を生協の役割として位置づけてるパルシステム連合会に感謝しています」。

原発事故避難者と出会う

 コープ自然派ではこれまで3回、瀬戸さんの講演会を開催しています。1回目は2009年にパルシステム連合会事業部長として、2回目の2017年には「避難の共同センター」メンバーとして原発事故避難者の生活支援打ち切りに立ち向かう活動について、そして、今回は「反貧困ネットワーク」事務局長として貧困の現状を聴きました。

 福島原発事故後、多くの被害者・避難者と出会い、今、何をすべきかと瀬戸さんの仕事や活動は大きく転換しました。2017年3月、自主避難者の住宅無償化が打ち切られ、瀬戸さんたちは東京都と家賃補助の交渉などを行いました。そんなある日、母子避難した母親に「これから死のうと思っている」と告げられ、「これはまずい」と「避難の共同センター」を立ち上げました。また、「反貧困ネットワーク」の活動にも参加していて2020年2月からは事務局長を務めています。

誰一人取り残さない!

 「反貧困ネットワーク」は、相談支援事業、難民・移民支援事業、シェルター事業、反貧困犬猫部、就労支援事業、連帯事業などを行っています。相談支援事業は、2020年4月からHPに設けた相談フォームに現在の場所、所持金、携帯電話の有無、生活保護を受けたいか、支援してほしいことは何か、今後の生活についてなどを書き込んでもらうことから始まります。メール対応なのは所持金100円以下で身動きできなくなっている人が多いからで、支援スタッフが駆けつけるという相談体制を継続しています。「仕事がなくなって家賃滞納、死のうと考えているというような人が現在6人、そのうち5人が女性です。明日、東京に帰ったら対応が待っています」と瀬戸さんは講演中も事務所と電話対応しています。

 カンパから成る「支え合い基金」の約7割は生活に困窮している移民・難民など外国人給付に充てられています。現在の日本では彼らは働くことができず、医療を受けることも容易ではありません。さらに、コロナ禍で入国管理局(入管)の仮放免が急増。「反貧困ネットワーク」は「国境など関係なく誰一入取り残さない」を目ざして入管から仮放免になった高校生たちの奨学金制度も始めました。

 居所のない人にはシェルターを用意しています。現在25の個室アパート式シェルターを運営し、11部屋に外国人、8部屋に女性が入居。ペットを連れて住まいを失った人からの相談も多く、シェルターではペットも受け入れています。

 2020年12月から、ワーカーズと共催して「しごと探し、仕事づくり相談交流会」を開始。派遣や日雇い労働に戻るのではなく、協同労働を通じてともに支え合い、ともに働く体制づくりを目ざしています。

この国は底抜け状態

 女性の貧困率が上昇しています。また、SOSで駆けつけた時、所持金100円以下という人は20.7%で、「福祉事務所に相談したが追い返された」「施設に入らなければ生活保護申請は受理できないと言われ、二度と相談したくない。死のうと思ったが死ねなくて最後にメールした」というような人たちです。野宿状態24.6%、ネットカフェ43%、年代は20代と30代を合わせると6割でその比率は高くなっているということです。

 「彼らは社会を絶望的に見ています。毎日、死にたいというような人ばかり。秋葉原事件のように人をたくさん殺すから殺処分してくれと言われたときはショックでした」と瀬戸さん。駅前でビッグイシューの販売をしていて「臭いから出ていけ」と罵倒された若者。高校卒業後ずっと非正規雇用で豊かなくらしなど体験したことない若者、「友だちなんか昔からいなかった、ネットだけが逃げられる場所だった」という若者。「最近、国会前で抗議する若者たちがいなくなりました。今、若者たちは政治や社会に期待も関心も失くしています。やり直しがきかないことも知っています。この国の将来は貧困と絶望で底が抜けてしまった」と重い口調で話す瀬戸さん。ロスジェネ世代(就職氷河期と呼ばれる世代)が親になって親も貧困、子どもも貧困。非正規雇用や派遣で雇い止めになりネットカフェを居場所にしていたのに、コロナ禍でネットカフェにも行けなくなった人たちがいます。そういう人たちが精神的な問題を抱えやすくなっているのも危険な状態です。

 「障がいがある子の母親からクリスマスの夕方、メールが届きました。生活保護を申請したのにいつになっても決定通知が来ない。所持金8円で電気も水道も止められている」と。「生活保護を決定しない福祉事務所の対応は人を殺します」と瀬戸さん。一方で、福祉事務所の職員は非正規雇用が多く、互いに潰し合いをしている状況で、生活保護を利用すべき人の利用率は20%程度です。

 日本の住宅事情は深刻です。東京都の公営住宅では60歳未満の単身者は入居要件を満たしません。2017年の調査では東京都内のネットカフェで4000人が暮らし、今はさらに多くなっています。非正規雇用の人たちの6割は貯蓄ゼロなので敷金・礼金を払えないのです。「今、日本でやっていることは国連の人権勧告に違反する行為ばかり、原発事故後、国家公務員住宅に避難した人たちが出て行かないからと福島県は裁判を起こしています。11名のうち9名が非正規雇用で単身者。母子避難の女性たちは家族の反対を押し切って避難したのに県が実家に圧力をかけているケースもあります」

生協の原点を見直そう

 東京都水道局の水道料金滞納者の給水停止が昨年の2倍になっていますが、訪問して事情を聞くことをやめて郵送だけで給水を停止しています。「では、生協はどうだろうか、商品代金が払えず、配送停止する際に事情を把握する作業をしているだろうか、脱退申請書に『買う商品がないから』と書かれていても本当は生活が苦しくて脱退するしかない組合員さんの存在に気づいているだろうか、気づくこと、想像すること、足元から助け合うことが大切ではないだろうか」と瀬戸さんは話します。

 韓国では市民と生協と医療生協が同じビルに入り、居場所もつくっています。異なる生協が共同セットセンターを運営し、オーガニック食材を給食に導入しているケースもあります。もちろん給食は無償提供です。市民農園をグループで借りて収穫物の半分を困窮者に提供するような取り組みもあります。

 「福祉現場に派遣会社がどんどん進出し、非正規雇用が増加しているなど自分が住んでいる地域の実情を知り、市民参加の自治体にすることが大切です、生協がネットワークの拠点になり、横でつながり合う住民連帯経済をつくることもできます」と瀬戸さん。そして、協同組合の先駆者たちの目的に立ち返るべきではないかと話します。1844年、協同組合の先駆的存在であるロッチデール先駆者協同組合は設立目的を以下のように掲げました。「本組合の目的と計画は、1口1ポンドの出資金で十分な資金を集め、組合員の金銭的利益と家庭的状態の改善をはかることにある。このために、次のような計画と施設の建設を実行に移す」
①食料品、衣類等を売る店舗を設置する。
②多数の住宅を建設または購入し、社会的家庭的状態の改善に協力しようとする組合員の住居に充てる。
③失職した組合員、あるいは引き続く賃金の引き下げで苦しんでいる組合員に職を与えるため、組合の決議した物品の生産を始める。
④さらに、組合員の利益と保障を増進せしめるため、組合は若干の土地を購入し、または借入し、失職したリ、労働に対して不当な報酬しか得ていない組合員にこれを耕作させる。

 「反貧困ネットワーク」は2022年8月から西早稲田の東京DEW(民主的な「学び」と「働き」が融合する拠点)に事務所を移転。ここはビル丸ごと社会的企業や協同組合が入居し、フードパントリーや在留外国人が主催するCAFEなども設置。難民・移民を支援する団体と共同してフェスタを開催したり、地域のイベントなどに出張して現状を知らせる活動を行っています。

講演会はオンラインとリアルで開催され、会場には瀬戸さんと旧知の人たちも駆けつました。

Vol.480(2023年1月)より
一部修正