TVでさかんに流れる柔軟剤や芳香剤、消臭剤などのCM。これらに含まれる香りが今、「香害(こうがい)」として問題となっています。2018年7月3日(火)、コープ自然派兵庫(ビジョン平和主催)では、日本消費者連盟関西グループ・山崎昌子さんを講師に「香害」について学習会を行いました。
「香り」の実態調査より
講師の山崎昌子さんは1975年に友人たちと日本消費者盟関西グループを立ち上げ、合成洗剤や食品添加物、農薬、シックハウスなどの問題に取り組んできました。5年程前からは柔軟剤などの香りによる健康被害に心を傷め、調査や広報活動などに力を入れています。
2013年10月、日消連関西グループでは「人工的な香りによる健康被害アンケート調査」(対象213人、うち女性120人・男性31人・不明52人)を実施。その結果、苦手な香りトップ3は、香水類・芳香剤・柔軟剤。香りに困る場所は「電車の中」「隣家からの洗濯物のにおい」「商店などの販売員の衣類や香料」「宅配便などの配達員の衣類」など。苦手な香りに接した時の症状としては「吐き気」、「イライラ」「イガイガ」「身体がだるい」「せき込む」「目がちかちかする」など。そして、化学物質過敏症と診断されている人は78人、診断されていない人119人、不明11人でした。
強い「香り」が主流に
香害のうち、とくに大きな問題となっているのが柔軟剤の香りです。日本では1962年に発売された「ソフター」(花王)が最初の柔軟剤で、その後さまざまな製品が発売されました。当初は微香性のものが主流でしたが、2005年頃に「ダウニー」(P&G)が発売されてからは、強い香りがブームに。さらに、持続する香りがセールスポイントとなり、柔軟剤を購入する際、肌触りを良くすることより、香りによって選ぶという人が多くなっているということです。
柔軟剤は家庭用品品質表示法の政令指定品目に該当しないので表示は各社の自由裁量に任され、柔軟剤に使用されている香料成分は「香料」とのみ表示されます。そして、香料成分は数千種類あると言われ、メーカーはそれらをブレンドして使っているということです。EUでは2011年から一部の香料成分を規制し、2013年にはアレルゲン性香料の一部を成分表示するよう規制しました。
「香り」に苦しむ人が増加
国民生活センターや化学製品PL相談センター、市町村の消費生活相談担当部署では香害の相談件数は年々増えています。しかし、相談を受けても担当部署は対処できていないのが現状。学校でも教室内の衣類の匂いで気分が悪くなったり、頭痛が起きたりして教室に入れないなど教育の機会を奪われるという事態も起きています。
2017年、日本消費者連盟は、2日間限定で電話相談「香害110番」を実施、全国から電話・メール・FAX合わせて213件の相談が寄せられました。この結果を受けて日本消費者連盟など7団体は2017年5月に院内集会を開催。国やメーカーに対して香害を引き起こす製品の製造・販売の中止、公共施設での香り付き製品の使用を自粛、保育園・幼稚園・学校での使用自粛を促すことなどを消費者庁に求めました。NPO化学物質過敏症支援センターでは年間2000件を超える相談が寄せられ、ほとんどが匂いに関する相談で症状が重い場合は学校や職場に通えなくなった人もいるそうです。
求められる行政の対応
無添加せっけんを製造・販売する「シャポン玉石けん」(本社:北九州市)は6月5日と9日の2回、朝日新聞と毎日新聞の朝刊・全国版1面で香害を訴える広告を掲載し、香害に苦しむ人たちからのコメントが相次いだということです。「香害は個人の問題ではなく社会問題です。国・自治体は香りによる健康被害の実態を調査し、議会で審議するとともに相談窓口を特設してほしいです。そして、メーカーに対して宣伝・広告を控えるよう指導していただきたいと思います。メーカーは香害が増加している現状を認識し、 企業の社会的責任を考えるべきです」と山崎さんは訴えます。
学習会にはコープ自然派兵庫・前田専務理事をはじめ姫路・ 西宮・神戸センター長が参加。「現在、各センターでは朝礼時に匂いをチェックし合っていますが、この学習会を機に組織的に対応していきたいです」と前田専務理事。参加者の意見交換では共用する給食エプロンの香りに悩む人たちが多く、個人用の着用を学校に働きかけた参加者も。司会の上﨑常任理事は「香害は公害であるとの認識のもと、香害は誰でも被る可能性があることを伝えていきたいです」と結びました。
Table Vol.374(2018年9月)