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食と農と環境

第3回ネオニコフリー連続オンライン学習会~ネオニコフリーの栽培技術とは~

コープ自然派など全国のこだわり10生協・事業連合が加盟する生協ネットワーク21は、ネオニコチノイド系農薬の学習会を3回連続開催。2022年4月22日(金)には、日本有機農業普及協会理事長・小祝政明さんを講師に、ネオニコフリーを実現するための栽培理論と技術について学びました。ネオニコチノイド系農薬は、昆虫の神経伝達を阻害することで効果を発揮し、ミツバチの失踪や大量死の主犯とされる農薬です。

「有機野菜だからといって栄養価が高いわけではありません。今後、日本では栄養を摂る目的で野菜を選ぶという論理的消費が中心になるでしょう」と一般社団法人日本有機農業普及協会理事長・小祝政明さん。

害虫や病気に強い作物

 小祝さんが提唱する「BLOF理論(Bio Logical Farming:生態調和型栽培理論)」は、自然生態系のメカニズムや植物生理を科学的・論理的に再現する有機栽培技術で、作物本来の力を引き出すことで、虫や病気に強く、高収量・高品質・高栄養な作物を安定的につくることができます。

 米栽培にはカメムシとウンカ対策にネオニコチノイド系農薬(以下、ネオニコ)が広く使われています。しかし、JA東とくしまでは「ツルをよぶお米」の生産者・西田聖さんが中心になり殺虫剤・除草剤・殺菌剤を使用しない栽培方法を指導し、BLOF導入後は収量も品質も上がって、結果的に農薬を使う必要がなくなりました。

 一般的な(化学肥料を使う)栽培の稲は茎が柔らかく手で折ることができ、田から簡単に引き抜けます。一方、BLOF理論に基づく有機栽培の稲は茎が硬く根の量が多いため、折れず引き抜けません。硬い茎はウンカが針を刺せず、籾殻も硬くなるのでカメムシ被害が減り、殺虫剤を使わないため益虫が増えるということです。

 大根・キャベツ・白菜などには、蝶が野菜の匂いに誘われて卵を産み付けます。野菜特有の青臭い匂いは細胞壁から漏れ出るため、葉や茎の壁が頑丈だと虫が寄ってきません。なぜ、虫に食べられるのか、病気になるのか、植物が体を守る方法がわかれば、BLOF理論が理解できるということです。

強い細胞壁と撥水効果

 植物は水と二酸化炭素を使い、光合成によって酸素とブドウ糖やショ糖、クエン酸、ビタミンC、酢酸、セルロース、ワックス(クチクラ層)などの炭水化物をつくります。セルロースは植物の細胞を覆う細胞壁を頑丈にし、ワックス(クチクラ層)は植物の実や茎、葉の表面で撥水効果を発揮したり、匂いを閉じ込めて害虫の誘因を抑え、病害虫の発生を抑えます。しかし、十分な量の炭水化物をつくれないと細胞壁は薄くなり、ワックスの膜(クチクラ層)もつくれません。

 光合成による活性化を促すためには、植物に必要な土壌中の栄養成分を調べる土壌分析が重要です。光合成にはマグネシウム、マンガン、塩素、鉄、硫黄、銅などのミネラルが欠かせません。国内の土壌分析は一般的に重量法を用いますが、BLOF理論では植物の根が接する土の肥料濃度を正確にはかるために体積法を使用。そして、正確な施肥設計を行い、根から設計通りの養分を吸収できるよう団粒構造のやわらかな土をつくらなければなりません。

 植物の細胞はアミノ酸を合成して増えていきますが、化学肥料による栽培ではその過程で炭水化物を消費してしまいます。しかし、アミノ酸肥料を与えて根から直接アミノ酸を吸収させることができると炭水化物が節約され、余った炭水化物で植物の外壁が丈夫になり、デンプン、糖、ビタミン類の量が増えてきます。

 さらに、近年、植物は根から水や養分を吸収するだけでなく水溶性炭水化物も吸収できることがわかりました。2017年6月、理研は植物が酢酸を吸収すると乾燥耐性が強化することを発表。BLOF堆肥は土壌で酢酸にまで分解され、酢酸が吸収されて合成されるとブドウ糖の原料にもなります。

 米栽培は稲を頑丈にすることでネオニコフリーが実現できます。光合成を最大化して炭水化物を大量につくるためには、正しい施肥設計による土づくりを行い、アミノ酸で炭水化物の消耗を抑制し、水溶性炭水化物の吸収で光合成補助することが大切です。

Table Vol.467(2022年7月)より
一部修正・加筆

生協ネットワーク21連携開催ネオニコフリー連続オンライン学習会
・第1回学習会(2022年2月23日)

・第2回学習会(2022年3月22日)

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