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生産者訪問・商品学習会

日本の水産業を守る

2022年5月18日(水)、コープ自然派事業連合商品委員会は水産学習会を開催。コープ自然派事業連合品質管理部・馬場マネージャー、商品部・野口サブマネージャーにコープ自然派の水産の考え方や基準について聴きました。

※イメージ

漁獲量と消費量の減少

 国内の魚介類の1人当たり年間消費量は、ピーク時の2001年度40.2kgから2019年度23.8kgまで減少、2011年度には肉類の消費量が魚介類を上回りました。水産物の消費量が減少している要因として、価格の高さ(肉類より高価格、イワシやサンマなどの高騰)、調理の手間、食の簡便化志向の高まりなどが挙げられます。

 日本の水産業は沿岸から沖合、遠洋と漁場を拡大して発展してきました。1945年、アメリカ近海で海底油田が発見されたことから、領海を広げる動きが世界中で起きます。1982年、国連海洋法条約が採択され領海を12海里(22km)以内とし、排他的経済水域も決められました。排他的経済水域とは陸地から200海里(370km)までの海は沿岸国に権利があるというもの、200海里内を他国船が出入りするのは自由ですが、魚や海底資源をとるにはその国の許可が必要なため、遠洋漁業の漁獲量が大幅に減少しました。また、マイワシの漁獲量が1984年まで急激に増大し、その後ゆるやかに減少。この変動は、気候や海洋環境が短い期間に変化し、その影響で海の生態系が大きく変化する自然現象「レジームシフト」による説が有力視されています。”気候のジャンプ“とも呼ばれ、最近では1988年から1989年にかけて発生し、気候が寒冷から温暖な状態にシフトしました。東日本大震災の発生で三陸地域の漁港が甚大な被害を受けるなどさまざまな要件が重なり、日本の漁獲量は1984年の1282万トンのピークから2018年には442万トンまで減少。漁獲量の減少とともに魚価が高騰し、漁業協同組合や担い手の減少も深刻な状態です。

コープ自然派の水産基準

 「国産・天然であること(一部除く)」「加工は国内であること」「調味をしたものは取り扱い基準に準ずること」がコープ自然派の水産品取り扱い基準です。

 国産とは日本船籍の船舶が漁獲し国内の港で水揚げされたもの。例えば、オーストラリア船籍の船舶が漁獲した魚が日本国内の漁港に水揚げしても原産国は「オーストラリア」になります。国産.天然魚が中心ですが、漁獲量が極めて少ないウナギなどは養殖を、また、日常的に食べるが国内で水揚げできない魚種(紅鮭、赤魚、カラスガレイ、シシャモ、エビ、カニ類など)は外国産を取り扱います。しかし、外国産を扱う場合は水揚げ地や漁獲海域をわかりやすいように表示することとし、このルールは震災を機に始まりました。

 捕獲した魚介類はそのままの状態(ラウンド)で水揚げして日本国内で加工処理することが基本で、国内で水揚げのない魚種に限り船凍処理を認めています。処理が多くなるほど、添加物の使用の可能性が増し、加工賃が上がるなどのデメリットが増えるためです。また、国内加工の推奨は水産加工の仕事を支えることにもつながります。ただし、ムキエビは品質を保つために現地で殻剥きなどの処理をして、冷凍で輸入します。

商品開発と供給の安定化

 馬場マネージャーが水産担当になった2008年頃は水産品の利用が伸び悩んでいて、さらに2011年の東日本大震災・福島第一原発事故では放射能汚染の不安が高まりました。組合員にアンケート調査を行ったところ、魚加工品の開発を希望する声が多数あり、自然派Style鮭フレークの開発に取り組みます。連合商品委員会で試食を重ね、委員からの塩こうじを入れるアイデアが採用され、今では年間13万パック(2021年度)を販売する大ヒット商品が誕生。現在、コープ自然派が取り扱う水産商品(水産加工品.魚介練り物.鮮魚)の受注金額はトップ5(37カテゴリー)に位置する人気部門です。「組合員の声を聴きニーズに合った商品づくりと、組合員と生産者が直接意見交換することの大切さを実感しました」と馬場マネージャーは話します。

「放射能検査は新商品や特集ページ、きのこ類、水産を優先して行っています。水産物からの検出事例は一度もありません」とコープ自然派事業連合品質管理部・馬場マネージャー。

 鮭フレークやスモークサーモンなどは、全国規模で販売するメーカー・ブランドのNB商品と自然派StyleのようなPB商品の両方を扱っています。漁獲状況が不安定なため、滞りなく組合員に供給するためです。また、物流システムを工夫し遠方の生産者を増やす取り組みも進めています。日本の水産業を守るため、漁業者、加工業者を支えていくには消費者として何ができるか、コープ自然派の取り組みは続きます。

「生産者や専門家を招き、私たちの理解を深めながら、今後何ができるか一緒に考えていきたいです。」とコー プ自然派事業連合商品部・野口サブマネージャー(左)。
「私たちの暮らしは海につながっています。学習会を通して海の汚染や環境問題も一緒に考えていきましょう」と司会進行を務めたコープ自然派事業連合商品委員会・正橋委員長(コープ自然派兵庫理事長)(右)。

Table Vol.466(2022年6月)より
一部修正・加筆

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