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くらしと社会

【組合員紹介】大阪の河川や地下水のPFOA汚染を伝えたい

大阪府摂津市の地下水から国の暫定目標値の37倍と高濃度の有機フッ素化合物が検出されています。摂津市在住の木村牧子さん(コープ自然派おおさか)に汚染源やその危険性についてお話を聴きました。

※イメージ

地球を汚染し続ける物質

 2020年、環境省が全国171ヵ所の河川水と地下水で実施した有機フッ素化合物(PFOAとPFOSの合計値)の汚染実態調査結果を発表。摂津市の地下水で1L当たり1885.6ng(国の暫定目標値50ng)を検出、全国で最も高い数値でした。これらの報道を見た木村さんは、「週刊金曜日」Tansa提携連載企画「公害PFOA」やYouTube動画、映画「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」( 2019年/米国)、京都大学名誉教授・小泉昭夫さんのオンライン講座などで情報収集し、その危険性やダイキン淀川製作所との関係について知りました。

 有機フッ素化合物「PFOA」は、化学的に安定し水や油をはじくことから、「焦げつかないフライパン」(フッ素樹脂加工・テフロン加工)などの調理器具、撥水スプレー、化粧品、歯間フロス、食品包装紙、消火剤などさまざまな製品に使われてきました。分解されにくく体内に蓄積されやすいこと、また、自然環境中での残留性が高く、大気・土壌・水など地球規模で汚染し続けることから、「永遠の化学物質(フォーエバー・ケミカル)」とも呼ばれています。2019年、PFOAは残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約で製造・使用、輸出入が原則禁止され、類似の化学物質PFOSは2009年に製造・使用、輸出入が制限されています。

原告7万人の集団訴訟

 1930年代、有機フッ素化合物は米国デュポン社が開発、原子爆弾の継ぎ目をコーティングするために使われ、その後「テフロン」の商標で製品化、さらに米国3M社が有機フッ素化合物を扱いやすくしたPFOAを製造し、生活の中に浸透していきました。

 映画「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」は、米国デュポン社による有機フッ素化合物廃棄汚染について実話を映画化したものです。1998年、企業弁護士ロブ・ビロットはウェストバージニア州パーカーズバーグのデュポン社に隣接する農場で起きた牛190頭の病死について調査を始めます。そして、デュポン社が有機フッ素化合物の危険性を隠したまま40年間も大気中や土壌に垂れ流していたことを突き止め、7万人の住民を原告団とする集団訴訟を起こします。この時の7万人の被曝住民の疫学調査で、妊娠高血圧症ならびに妊娠高血圧腎症、精巣がん、腎細胞がん、甲状腺疾患、胃潰瘍性大腸炎、高コレステロールとPFOAとの関連が確認されました。

河川・地下水・土壌汚染

 日本では、摂津市にあるダイキン淀川製作所が1960年代後半からPFOAを製造していました。ダイキン淀川製作所は1941年に軍需工場として新設、1953年〜1955年に周辺の田畑で農耕用に飼育されていた牛47頭が怪死。ダイキン淀川製作所から流出した工場排水が川に流れ、牛が飲んだことが原因と考えられます。

 2002年から、京都大学名誉教授・小泉昭夫さんが国内での有機フッ素化合物調査を開始。全国の河川のPFOA濃度調査では、阪神地区の河川から高濃度で検出され、なかでもダイキン淀川製作所の近くを流れる安威川(淀川の支流)から6万7000ngと世界最高レベルの数値を検出しました。また、人の血液と尿中のPFOA濃度を調査したところ、尿中濃度は低く血中濃度が高く検出されたことから、尿と一緒に排出されず体内に残ることが判明。2020年の環境省の全国調査の結果を受け、ダイキン淀川製作所周辺住民9名の血液検査を行ったところ、9名全員から高濃度のPFOAが検出され、高い人では非汚染地域の70倍でした。住民の中にはダイキン淀川製作所周辺の畑の野菜を食べていた人たちもいて、周辺一帯の土壌汚染が懸念されます。そして、近隣の小学校では生徒が野菜を栽培し、近くの田んぼで稲づくりを毎年行い、家庭に持ち帰っているということです。

 2002年、3MがPFOAの製造から撤退。3Mはダイキンの取引先でしたが、ダイキンがPFOAの製造・使用、およびそれらを原料とした製品の製造を終了するのは、2015年末のことです。2019年、ストックホルム条約で製造・使用、輸出入が原則禁止。2021年10月、国内でPFOAが第一種特定化学物質に指定され、製造・輸入が禁止されました。

 「ダイキンは税収や雇用などの経済面で摂津市を長年支えてきました。そのため、ダイキンと行政は20年前にわかっていた廃棄汚染について住民に知らせず、摂津市民はPFOA汚染に暴露され続けていたのです。PFOAの製造・使用が禁止になっても摂津市の地下水・土壌汚染は放置されたまま。自分たちの身近な場所で公害が起きていること、そして、電磁波や環境ホルモン問題も同じ公害として考えてください。また、PFOAの製造・輸入が禁止される前につくられたテフロン加工のフライパンは使わないよう気をつけましょう」と木村さんは話しました。(参考文献:「週刊金曜日」「永遠の化学物質 水のPFAS汚染」)

Table Vol.465(2022年6月)より
一部修正

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