柳澤史樹さんは自分史活用アドバイザー、フリーライター、イベントプランナーなどで活躍。2016年からは相模原市に転居して農的暮らしも満喫。

2019年3月11日(月)、コープ自然派事業連合(神戸市)では、柳澤史樹さん(自分史活用アドバイザー)を招き、「自分史」でコミュニケーションを活性化しようという研修を実施、各部署から職員が参加し画期的なワークショップを体験しました。

「自分史」の魅力って?

 講師の柳澤史樹さんにとって8年前の3月11日は人生のターニングポイントでした。この日に阪神淡路大震災を体験した神戸で研修できることに大きな意味を感じていると柳澤さんは話します。

 「自分史」という言葉は1975年に誕生し、人生の集大成としてシニア世代を中心に広がりましたが、柳澤さんは「自分史」を若い世代にとっても生き方を豊かに元気にするコミュニケーションメソッドだと考えています。柳澤さんは「自分史」を作成するメリットとして、自分の生きてきた証を残せる、自分をよく知ることができる、生きがいが見つかる、自分のことが好きになる、自分をよく知ってもらえる、コミュニケーションを深められる、脳を活性化できる、つくることが楽しい、という8つのポイントを挙げます。

 一方で、平凡な人生なので自分史としてまとめるような経験をしていない、残しても誰も読んでくれない…などと考える人に対しては、「『自分史』を残すことは自分のためではなく家族のためでもあり、社会のためにもなります。過去にとらわれてはいけないけれど過去を見直し、向き合わなければ逆に過去にとらわれてしまいます、ありのままの自分を受け入れることで自分らしく自信をもって生きられるきっかけになるのではないでしょうか」と柳澤さん。誰もが人生の主人公、一人ひとりの事実を綴ったものこそが本当の歴史ではないかと柳澤さんは考えています。

さあ、「自分史」の世界へ

 さあ、タイムマシーンにのって人生を振り返ります。年齢に沿って、社会の動き、学校・仕事、家族・家庭、友人・出会い、健康・環境、趣味・遊びなどのキーワードをもとにうれしかったこと、悲しかったこと、努力したことなど思い出したことを書いて自分史年表をつくります。
 
 20分間のワーク後にはシェアリング。中学2年生のときに初めておやつをつくって家族に褒められたのが食に興味を持つきっかけ、やがてパティシエになり、その後、コープ自然派へという男性職員。大学時代にドイツ生活を体験してどんなことでもやれるという自信につなった。ドイツの食体験から和食の素晴らしさを見直したという女性職員、与えられた環境によって自分の適性に気づいたという女性職員など、職場や日常生活では話せないことが「自分史」という視点では話しやすく、自分も他者も意外な一面があることを知って驚き感動します。

それぞれ自分史年表を作成。1つのキーワードにとらわれないよう柳澤さんがアドバイスします。

他者を理解し表現する

 次に、「自分史」を活用したコミュニケーションの方法を学びます。ワークは2人でペアになってヒーロー(ヒロイン)インタビュー。自分の歴史の1ページを語り、相手の歴史を引き出すワークです。聞き手は相手の良い点を発見することを心がけ、相手の言うことを受け入れ聞き役に徹します。話し手は積極的に相手に語りかけ、自分のことがわかってもらえるように伝えます。そして、それぞれが相手に感じたことを伝え合い、最後に発見内容を共有する他己紹介を行いました。

 1分間の他己紹介では、「すばらしい」「すごいね」などと柳澤さんを感動させる紹介が続き、個性あふれる一人ひとりの人物像が浮かび上がります。特にアドバイスされたわけではないのに仕事ぶりへの評価や理解、感謝、さらに期待が伝えられ、意志力、楽しみ力、応用力などのキーワードを使っての表現も適格でした。

 柳澤さんの「自分史」を披露するシーンもありました。「史樹」という被ばく二世で亡くなった子の名前を継いだことに向き合えなかった過去。20代・30代は自分の人生を生きているという実感がなく、何とか立て直したいと思っているときに3・11に遭遇し、食べものは自分でつくろうと農的暮らしを開始。知識や情報を発信し、政治的にも表現するようになって名前に込められた意味に向き合います。その過程で出会ったのが「自分史」でした。

さらに素晴らしい職場に

 研修を終えて、「自分のことを深く考えられた」「どうやったら相手の魅力をうまく伝えられるかを真剣に考えた」「自己肯定感が低いが、他者に評価されていることがうれしかった」「自分とコミュニケーションをとることで相手に幸せになってほしいと思った」「表現することは難しいことがわかった」などの感想が晴れやかな表情で語られました。

 「人間を知るには『自分史』作成は大いに役に立ちます。他者のことを知ろうとするのがコミュニケーションの第一歩。理念を事業に生かし、社会貢献しようと努めるコープ自然派には愛が溢れています。私も若い頃にこんな職場と出会いたかった(笑)。素晴らしい職場と信頼できる仲間に恵まれていることに自信をもち、自分はどうありたいか、どうなりたいかを考えるきっかけになれたならとてもうれしいです」と柳澤さん。研修後は遅くまで柳澤さんを囲んで熱い交流が続きました。

Table Vol.389(2019年4月)