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くらしと社会

刺しゅうがつなぐアフガニスタンと日本 ~アフガニスタン女性支援活動のお話~

アフガニスタン女性支援プロジェクト「エジャード」は刺しゅう作品の製作を通じて、アフガニスタンの女性たちを支援しています。2021年12月11日(土)、コープ自然派おおさか(チームJINKEN主催)は「エジャード・ジャパン」共同代表でチームメンバーの筒井百合子さんに活動の状況を聴きました。

長年、国際交流活動を続けてきた筒井百合子さん。会場となったTIFAカフェ・サバナは地元に住む各国の人たちが日替わりで料理を提供、アブドゥルさんは留学生時代、アフガニスタン料理でキッチンに立っていました。

長年、戦闘が続く国

 アフガニスタンは、パキスタン、イラク、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、中国などに囲まれた内陸国で首都はカブール。シルクロードの要衝地でもあり、ペルシャ文化や中国文化などさまざまな文化が息づいています。多民族であることから統治が難しく、これまでソ連やイギリスなどが介入しましたが、いずれも撤退。一方、NATOや米軍、ロシアなど海外から大量の武器が持ち込まれ、長年、戦闘が続いています。2001年にはアメリカ軍の侵攻によりタリバンは権力から排除されました。しかし、2021年8月15日、アメリカ軍の撤退によりタリバンが首都カブールを制圧して、ガニ政権は崩壊、再びタリバンが権力を掌握しました。

 タリバンはこれまでデモを許可制にして抗議の声を封じ込めるほか、女性の教育や就労は保障するとしたものの大学での男女共学を認めないなどイスラム原理主義に基づいた統治を進めています。そして、現地では空路と陸路とも物流が滞り、食糧や医療物資などが国内に入りにくい状況です。

プロジェクト設立に参加

 筒井さんは、2016年から2018年に大阪大学経済学部大学院に留学していたアフガニスタンの男性・アブドゥルさんとNPO国際交流の会とよなか(TIFA)が開催したイベントで出会いました。彼はアフガニスタンの復興を求めて熱心に活動していました。筒井さんは彼から母国の窮状を聴き、「エジャード」立ち上げに参加。アブドゥルさんが現地の代表を務め、筒井さんは大阪在住のジェニファーさんとともに、「エジャード・ジャパン」共同代表として活動紹介や作品の展示・販売を担当しています。筒井さんたちはこれまでネパールで女性や子どもの支援活動を長く行ってきましたが、このプロジェクトでは支援だけでなく、アフガニスタン女性たちによる起業を目ざしています。活動はジェニファーさんがアート教師を務める関西学院千里国際高校にも広がり、刺しゅうワークショップなども行われています。

 アフガニスタンの刺しゅう作品制作グループとの窓口になっている女性はペシャワールの難民キャンプで生まれ育ち、数年前にアフガニスタンに家族で帰国。難民キャンプで教育を受け英語も話せるようになりました。刺しゅうグループで英語を話せるのは彼女だけ。作品は幾何学的なものやミラーを縫い込んだようなものが多く、若い女性が多いので独自のデザインのものも出てきているということです。

カラフルなアフガニスタンの刺しゅう作品。筒井さんたちは新作が届くのを待っています。

 「アフガニスタンでは刺しゅうの技術は母から娘へと伝えられていましたが、それを売るというような発想はなく、家族の結婚衣装をつくったりするだけでした。でも、自分たちの作品が海外で受け入れられることがうれしいようで、売れる作品をつくるのが目標です。タリバン政権後、外に出られず家でたくさん作品をつくっているのですが、空港で留め置かれてなかなか作品が届かないのが悩みです」と筒井さんは話します。

研修センター建設へ

 現地の女性たちは自宅の暗い部屋の床で手仕事をしていますが、みんなが集まれるセンターがあれば刺しゅうや縫製のトレーニングを受けたり、一緒に作業することができます。学校へ行けない女性たちのための識字教室を開きたいという希望もあります。そこで、小さな研修センターをつくろうと2020年から準備し、カブール市内の安全で安い土地の提供を受けました。建設資金は2021年9月〜10月に行ったクラウドファンディングで150万円集まりました。建物の設計は「国境なき建築家集団」が担当。2階建ての研修センターは作業室や勉強室、オフィス、キッチンなどを備え、タリバン政権下、建築工事によって地元の職人約20人の生活も支えています。11月末までに外装は終え、冬季はマイナス10℃以下になるため春になって内装を完成させます。

 筒井さんたちは現在35家族に冬を越すための食糧支援も行っていますが、送金規制が厳しく、トルコ経由で送金するなど工夫を凝らしているとのこと。「小さな組織なのでできる範囲でオンラインで話し合いながらやっています。小さな組織だからできることもあります。とにかく現地が早く平和になってほしいです」と筒井さんは話します。

Table Vol.458(2022年2月)より
一部修正

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