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食と農と環境

福祉を農業で活かす、農業を福祉で活かす

茨木オーガニック推進協議会(コープ自然派おおさか参加)は連続講座を開催。第5回講座(2021年12月17日)では、(株)情熱カンパニー代表・三木義和さんを講師に「農福連携」について学びました。

(株)情熱カンパニー代表・三木義和さん

「情熱」あれば夢かなう

 (株)情熱カンパニーは徳島県阿南市で野菜やお米を生産・販売する農業生産法人です。現在、約20haの農地で年間約10品目の野菜を栽培し、キャベツは年間約50万個を出荷、約8000㎡のハウスでは秋から春にかけてチンゲンサイ、夏場はキュウリ、ナスなどを栽培しています。

 三木さんは徳島県藍住町で生まれ、大学卒業後は神戸市内の人材派遣会社に就職。営業職としてハードな日々を過ごすなかでさまざまな業界の人と接する機会を得ました。29歳で独立し、共同人材派遣会社を設立しますが、30歳の時に「もっとワクワクした仕事がしたい」と農業を志します。農業に可能性や魅力を感じ、一生の仕事にしたいと思ったのです。そこで、香川県の農業生産法人で農業技術や農業経営を修得。フォークリフトやトラクターなど大型特殊の免許も取得し、外国人研修生との交流も楽しみました。その後、徳島県阿南市に広大な農地があり、若者を探しているとの情報を得て、「低資本ででっかい農業をやりたい」と2012年に阿南市に移住、2014年に(株)情熱カンパニーを設立しました。社名にはどんな困難があっても「情熱あれば夢かなう」の思いが込められています。

「農福連携」を目ざして

 (株)情熱カンパニーは滑り出し絶好調でしたが、半年後に大きな台風でハウスがすべて水没。チンゲンサイもネギも全滅し、農業の厳しさや脆弱さを体験しました。そんなとき、野菜の販売先であるクリニックから障がい者や病気の人たちの社会参加を相談され、農業の多面的な価値を生かせるのではないかと、2015年3月に農作業を中心とした受託サービスを行う(株)チーム情熱を設立、4月に就労継続支援A得ました。(株)チーム情熱は障がいや病気を抱えていて「働きたい」思いがあるのに、働き続けることができない人たちをチームで「情熱」をもって応援し、夢をかなえることを目ざしています。

 農業が抱える難しさとしては、繁閑の波の大きさによる人手不足、天候による作業予定の変更、低粗利、汚れる、夏場の高温、判別の難しい作業や複雑な機械作業など。一方、障害者雇用環境が抱える難しさは、複合的作業の難しさ、習得までの時間、生産性、好調不調の波、対応できる作業の幅、集団作業、環境変化への対応など。これらをどうマッチングさせるかについて、「農家さんが本当に忙しいときにやってほしい作業を分解してできる部分を組み合わせることでマッチングさせます。事前に現場を見て、仕事をやりやすいように組みかえて提案。これが(株)チーム情熱の農福連携の進め方です」と三木さん。現在、(株)チーム情熱のニーズは地域で広がり、好評を得ているということです。

 一方で三木さんは「支援」の定義に悩みました。そして、たどりついた答えは「一人ひとりの光るものを見つけ、すぐに結果が出なくても輝くまで磨くこと。その人の幸せにこだわり続けること」でした。作業を通して個々人の強み弱みを見つけ、どんな仕事をしたいかという夢を明らかにし、その夢に対して目標を設定して評価を行う…。これを半年ごとに繰り返しているということです。そんななかで三木さんが確信していることは、「誰もが自分が主人公のかけがえのない限りある人生を生きている。働く人にとって会社は人生の場面にしか過ぎず、自分たちは人生の登場人物のひとりにすぎない」ということ。そして、できればみんなで一緒にやっていくことと自分の幸せが重なることを三木さんは願っています。

「(株)情熱カンパニーでは、年齢も経歴も異なる人たちがそれぞれの夢をかなえることを目ざして働いています」と話す三木さん。

さらに広がる夢を求めて

 また、世界の状況を知ろうとJICA(国際協力機構)のツアーでインドネシアを訪問。「若い人たちがわいわいやっていて、こんな人たちと働くのは面白いだろうなあ」とカンボジア事業所を設立。カンボジアでは42haの農地でバナナやパイナップル、野菜を栽培し、販売とレストランを併設した店舗を開設しています。また、2018年には、コープ自然派の小分け作業を請け負うために(株)チーム情熱・神戸事業所を設立しました。

 ここまで三木さんは一気に駆け抜けてきましたが、ここで足元を固めようと2018年から3年間は新しい事業は行わないと決めてこの間に世界各国を訪問し、これから何ができるのか、何が必要かを学びました。

 そして、2021年から社会課題に向き合う事業をしたいと考え、まずは健康寿命を伸ばすために新しいスタイルの貸農園サービス「情熱ガーデン」を始めました。定年退職後の人たちが自分で野菜をつくることで働きがいを見出すというサービスです。オーガニック野菜を一緒につくるのは子どもたちの教育にもつながります。会員制で会費は必要ですが、(株)情熱カンパニーの農作業を手伝うことで収入を得られます。

 さらに、フードロスゼロの社会を目ざし、廃棄食品を堆肥化して野菜をつくる事業もスタート、おいしくて栄養価の高い野菜が栽培され高評価を得ているとのこと。「これからも農業の多面的な価値を生かしながら、農業で幸せに生きていきます」と三木さんは満面の笑顔で話しました。三木さんは65歳までに夜間学校をつくりたいという夢を抱いています。その夜間学校は子どもから高齢者まで誰でも入学でき、自分が学んできたことを伝えたいと考えているということです。

(株)情熱カンパニーのキャベツ畑。コープ自然派では自然豚の豚ぷん堆肥を使用し栽培されたキャベツを取り扱っています。

Table Vol.458(2022年2月)より
一部修正・加筆

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