2021年6月29日(火)、コープ自然派連合商品委員会は麻布大学教授・大木茂さんによるアニマルウェルフェア学習会を開催。国内外での動向について学び、オーガニック卵の旭商事をはじめアニマルウェルフェアに取り組む生産者の報告を聴きました。

5つの自由と歴史的背景

 近年、家畜の感受性を理解し、その生態や習性による行動を妨げないよう、アニマルウェルフェア(以下、AW)に配慮した飼育が求められています。ウェルフェアとは「望み通りに生活する」という意味で、可能な限り「喜び」を増やし「苦痛」を減らす行為が正義だとする西洋発の倫理です。「飢え、渇きおよび栄養不良からの自由」「恐怖および苦悩からの自由」「物理的、熱の不快さからの自由」「苦痛、傷害および疾病からの自由」「通常の行動様式を発現する自由」の5つの自由は、AWを考える基本的理念になります。

 1960年代~1980年代、西側諸国の高度経済成長下で畜産が工場・工業的な生産として人の目に触れないものへと変化しました。そのような中、1964年の「アニマルマシーン」出版を機に5つの自由が提案され、EUでは1997年にアムステルダム条約議定書で「家畜は単なる農産物ではなく感受性のある生命存在である」と規定。一方で、1985年のBSE(牛海綿状脳症)発生、1999年の鶏肉・鶏卵のダイオキシン汚染などから、2000年に「トレーサビリティ」「リスクアセスメント」「リスクコミュニケーション」が制度化され、AWに配慮する表示システムに関心が高まります。これらの2つの流れからOIE(国際獣疫事務局)の動物福祉ガイドラインが策定されました。

世界と国内のAWの動向

 現在、EUの採卵鶏舎はエンリッチドケージ(改良型のケージ)48%、平飼い34%、放し飼い12%、オーガニック6%の状況です。さらにケージ飼育への反対が高まり、欧州議会は、2027年までに農場動物のケージを違法とすることを欧州委員会に求めています。

 米国の平飼い卵は2015年の約5%から2021年には30%近くまで増加、価格差は2.8倍から2倍程度に減少しています(日本の平飼い卵と10個入り白卵との価格差は2.5倍)。カリフォルニア州では2022年からのケージフリーの法制化をきっかけに、全米8州(約1億人が居住)でもケージフリーが最低基準になりました。

 日本では、「キューピー」がAWに対応した鶏卵を原料調達し、ケージフリー鶏卵を活用した商品開発に取り組むとHP上で発表、「イオン」は6月以降、全国の約500店舗でトップバリュ平飼い卵(バーン方式またはエイビアリー方式)の販売を開始しました。小泉環境相がバタリーケージは推奨しない立場を明言していますが、その一方で養鶏大手企業によるAW対応ケージの導入(2018年)に対して業界からの大きな反発があるなど消極的な姿勢も見られます。

 国際的な動物保護活動を行うWAP(世界動物保護協会)が発表した2020年版動物保護指数レポートは、日本を畜産動物福祉において最低ランクGと評価。また、世界の食品企業150社の取り組みを評価する団体BBFAWは、「イオン」「セブン&アイ・ホールディングス」「マルハニチロ」「日本ハム」を最低ランクのティア6、「明治」は昨年から1ランク昇格してティア5と評価しました。

国内のAW商品の可能性

 「JGAP認証」(農場管理の基準)「持続可能性に配慮した鶏卵・鶏肉JAS規格」(農・林・水・畜産物およびその加工品の品質保証規格)における「アニマルウェルフェアへの配慮」は、畜産技術協会が作成した「飼養管理指針」のチェックリストを実施することで取得できます。しかし、チェックリストには欧米で見られる飼養面積基準やエンリッチメント規定はなく、客観的判断指標がありません。また、現在販売されている平飼い卵の飼養方法には大きなばらつきがあり、砂浴び場や産卵箱、止まり木などのエンリッチメント設備がなく、EUの最低面積基準を満たしていない農場が半数程度あると推測されます。

 消費者が卵を買う判断基準として「価格」「鮮度」「国内産地」が上位を占め、生協組合員においては「産地」「安全性」への関心が一般消費者と比べて2~3倍高いとのこと。都内中心宅配型生協組合員(モニター調査)では、平飼い・放し飼い・有機の卵を日常的に購入すると答えた人が19.8%(一般的に1~5%)で、これらの組合員の90%がAWの詳細な基準や認証マークの設定を歓迎しています。「産地や飼育方法を気にする消費者層は確実に存在します。生産方法を公開して共感してもらえる方法が必要であり、どの程度の価格差なら購入可能かも課題です。一方で、取り組みを組織内にとどめることなく社会標準にするための政治的取り組みも必要です」と大木さんは話しました。

「AWは生産の標準化と表示の適切性、基準と認証システムの整備が課題です」と講師の麻布大学獣医学部教授・大木茂さん。

Table Vol.449(2021年9月)より
一部修正・加筆