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くらしと社会

ネットワークで「こども食堂」を支援

「こども食堂」が全国各地で開かれています。徳島県では、「徳島こども食堂ネットワーク」が再編され(NPO申請中)、新たなスタートを切りました。その経緯などについて「徳島こども食堂ネットワーク」代表・佐伯雅子さんに聴きました。

※イメージ

フードバンク活動に参加

 佐伯雅子さんは、(株)阿波有機を経て、「NPO法人フードバンクとくしま」事務局長に就任。「NPO法人フードバンクとくしま」は2012年4月に設立され、主に徳島県内の余剰食品を団体に届ける活動を中心に、就労支援やセーフティネットにつながる活動などを行ってきました。2016年8月には「いきいき安心とくしま子ども食堂」を開始。2019年10月、全国に先駆けてキッチンカーを導入し、「いきいき安心移動こども食堂」と改名しました。

 この間に、佐伯さんは湯浅誠さん(NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長)と交流し、2018年に「広がれ、こども食堂の輪!」全国ツアーinとくしまを開催。2019年9月には「徳島こども食堂ネットワーク」が設立されました。

ネットワーク再編を目ざす

 コロナ禍でフードバンクの活動は多忙を極め、「こども食堂」に手が回らないことが佐伯さんの悩みでした。徳島県は全国で「こども食堂」の数は45番目。「こども食堂」に携わる人たちは一生懸命でしたが、資金面やスタッフの問題、書類作成などさまざまな悩みを抱えていました。佐伯さんは「こども食堂」をもっと増やしたいと考えていたので、「このままでは新しく始めにくいし、既存のものもダメになってしまう」と危機感を抱いていました。そこで、「こども食堂」に専念したいと願い出て、ようやくこの6月に「フードバンクとくしま」事務局長から副理事長になり、「徳島こども食堂ネットワーク」代表に就任。これを機にNPO法人として再編成することになりました(現在、徳島県にNPO申請中)。

団体や企業の応援を得る

 全国各地で行われている「こども食堂」。その始まりは2012年、東京都大田区にある八百屋「だんだん」からスタートしました。「ごはんを食べるだけじゃない食堂」は話題になり、全国各地に広がり、さまざまな「こども食堂」が現在約5000ヵ所以上あります。しかし、全国の小学校校区2万ヵ所に「こども食堂」をつくるのが佐伯さんたちの願いです。

 徳島県では「こども食堂」は現在33ヵ所、そのうち5ヵ所がコロナ禍で開けない状態です。「そんななかでもみなさんネットワークに参加してくれました。助成金の申請書が書けないなどの悩みに応えられるようネットワークを強化したいです」と佐伯さん。NPO法人化するのは行政や企業の信用を高めるためにも必要だと判断したからです。事務所となったマンションの一室と事務机・椅子・冷房設備は企業から無償で提供されました。

 理事として、「こども食堂」から6名、議員2名、「こども食堂」を応援する企業から1名、財団法人から2名、大学の栄養学研究者1名を予定。代表の佐伯さんは運営の透明性、迅速かつ公平な活動、そして、楽しむことをメンバーに約束しました。

子育ては社会全体で

 2013年6月26日、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」成立。7人に1人の子が貧困と言われていますが、なかなか外からは見えないのが現状です。とくに地方の場合は貧困を隠す傾向が強く、精神的な負担にならないよう食品を渡す工夫も必要となります。栄養は給食に頼る子がいるという現実もあり、民生委員と連携して食品を渡す場合もありますが、「困っているとき声を上げることは生きていく上で大切なこと、貧困は悪いことではないのですから」と佐伯さん。コロナ禍でいじめ件数も増え、家庭内DV被害も発生しています。湯浅誠さんは「最大限のコロナ感染対策を講じて、できるかぎり子どもたちの居場所を減らさないようにしてほしい」と発信しました。全国的に行政が積極的にかかわっているのは沖縄県、北九州市、高知県、山口県、鳥取県、神戸市、明石市、滋賀県、埼玉県など。明石市は子育てしやすい自治体として知られるようになり、住民が増えたということです。「このような例は私たちにとっても心強く、政党の枠を超えて、また、子育てを終えた人も子どもがいない人もみんなが子育てに参加してほしいですよね」と佐伯さんは話します。

コープ自然派も支援

 コープ自然派しこく理事会の協力を得て、この夏休みには週1回、子どもたちの夕食を配る企画が進行中。これまでにもコープ自然派からはフードバンクにバナナやパンの提供を受け、自然派Style山食パンコウノトリの未来が大好きな中学生男子は「これを食べると心が落ち着く」と。また、ミルクパンが大好きな小学生女子は厚切りミルクパンにバターをつけ、はちみつを塗って「こんなにおいしいパンを食べたことない」と感激しているということです。「こども食堂」運営者の手づくりバナナケーキやバナナパフェも大好評です。現在、バナナは月・水・金、パンは火・水・木・金に提供されています。

 ある日、佐伯さんは三好市の「こども食堂」運営者から「やめたい」という連絡を受けました。とにかく事情を知りたいと駆けつけると、最高齢92歳、70代中心のスタッフが笑顔で子どもたちを迎えている家庭的な「こども食堂」でした。「こんなにいい雰囲気なのに残念」と思っているとJA徳島共済連から食材を提供されることになりました。そこで、キッチンカーを使ったイベントを提案。コープ自然派からはバナナが提供されました。そして、キッチンカーでのイベントは大成功、もう一度やってみようということになりました。「ちょっとした後押しで続けてくれたことがうれしいですね。ネットワークの力でこれからしっかり下支えしたいと思います」と佐伯さんは話します。

徳島こども食堂ネットワーク・佐伯雅子さん。徳島のマルシェで配ったチラシ、名刺、ホームページ、ポスターなどは「こども食堂」の若い運営者が制作。

Table Vol.447(2021年9月)より
一部修正・加筆

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