2021年1月24日(日)、コープ自然派兵庫(はなさかの会主催)では菅原真樹さんを講師に「どんなゴミが落ちてるの?世界のゴミを見てみよう」を開催、菅原さんのお話や動画の後に感想や意見をシェアし、私たちにどんなことができるか考えました。
世界のゴミ事情とは?
菅原さんは兵庫県西宮市生まれ、ハワイ島コナ在住。幼い頃から海や川で遊ぶことが大好きで、ある日、奇形の魚を釣り上げたことが環境問題に関心を持つきっかけになりました。小学校4年生のときです。それからは海岸に流れ着いたゴミを毎日のように拾い、大好きなフィールドで「自然」が苦しんでいることに心を傷めていました。
「今、世界中でゴミがどんな状態になっているか、まず知ってほしい」と菅原さん。日常的に扱うプラスチックは石油からつくられ、1950年代から本格的に生産が始まりました。2015年までの世界の総生産量は83億トン、そのうち63億トンがゴミになり、49億トンが埋め立てられたり投棄されています。そして、7.5億トンが焼却され、5.7億トンがリサイクルされているということです。
日本で回収されるペットボトルは年間60万トン、そのうち20万トンは中国に送られていました。中国は2018年に世界各国からのプラスチックゴミ輸入禁止を発表、その時に世界の先進国は自国でリサイクルせず、お金を払って中国に送り続けていた事実が判明。日本政府は2016年だけでも80万トンのプラスチックゴミを送り、その量は世界一です。中国の村に送られたプラスチックゴミは汚れたまま川に捨てられ、長江や黄河などから海へ流されて現在も何万トンというプラスチックが排出され続けています。世界中で投棄されたゴミは川や海に流され、最終的に日本とハワイの間にある「太平洋ゴミベルト」などに溜まっていきます。
プラスチックが命を奪う
太平洋ゴミベルトに位置するミッドウェイ島で起きている現実について動画を見ました。海岸で死んだ鳥たちの腹からおびただしい量のプラスチック類が出てきます。「簡単・便利なプラスチックが彼らの命を奪ってしまう現実を知ってください。そして、どうしたら良いか考えてほしい」と菅原さん。菅原さんはミッドウェイ島の現状を子どもたちに伝えようと、ハワイ島から通って日本全国の小・中学校、幼稚園などで話す活動を続けています。さらに、プラスチックゴミをリサイクルしようとガベージサムライプロジェクトを結成、リサイクルからのエネルギー素材化にチャレンジしています。
菅原さんのお話を聴き動画を視聴して、参加者からは「次世代に負債を残さない活動をしたい。子どもたちにきれいな海を残そうと海岸のゴミを拾っている」「神戸に引っ越して15年近く。ここ10年くらいで海岸のゴミが多くなり、子どもたちと拾ってもすぐ袋がいっぱいになります」などの感想が出されました。
プラスチックは海水にさらされてマイクロプラスチックになり、そうなるともはや拾うことができません。毒性をもつものもあり、それが大量に流れてイルカやクジラ、アザラシなどの内臓に吸収され、濃縮されていきます。
「モノ」の背景を考えよう
日本のプラスチック製品のうちで、もっとも多いのが使い捨て容器・梱包材(41%)、そして、土木建設資材、合成繊維、日常生活用品、電気素材、工業製品の素材と続きます。あえてプラスチック製品を買わなくてもトレーやお菓子の包装紙、食品の袋などがなかなか減らせないという声が上がりました。「ゴミをひとつでも拾うことは大切ですが、どんなものを買うか考えることも大切。それがつくる側の責任を問うことにもなるかもしれません。使い捨て容器や梱包材を減らすことで多くの生きものたちの命を救い、将来的に子どもたちの命を救うことになります」と菅原さんは話します。
最後の動画は、バングラデシュの皮製産業の様子。牛の生皮に薬品で色付けしてバッグや靴をつくる工場が映し出されました。劣悪な労働環境、工場から流れ出る有害物質、地元の人たちは下痢が日常的で、川で釣った魚もガソリン臭がするということです。「バッグや靴が住民の生活や健康を脅かしながらつくられることを知って衝撃を受けた」「モノが溢れる今の社会、必要なものを必要なだけ求める暮らしの大切さを痛感」「モノを買うとき、どんなふうにつくられ、どんなふうに捨てられるかも考えたい」などの感想が出され、「こういう現場にいる人たちに想いを馳せ、周りの人たちに伝えてください。私自身は現地を訪ねて実体験として伝えています。1人からでもアクションを起こしましょう」と菅原さんは結びました。
Table Vol.438(2021年4月)より
一部修正