吉田太郎さんは1型糖尿病を発症しますが、有機野菜中心の食生活に変えたところ、体重が10キロ近く減り、インシュリン注射を打たなくても血糖値が正常化するなど、食の大切さを身を持って体験しました。

2019年9月13日(金)、コープ自然派事業連合商品委員会は「タネと内臓」の著者・吉田太郎さんを講師に学習会を開催、グリホサートの危険性と有機農業の可能性、腸内細菌がもつ力など、様々な事例を交えながら話していただきました。

「10年前から野菜生活を始め、子どもたちは体質改善はもちろん性格まで変化しました。私は風邪をひかなくなり、毎日が楽しいです」と司会を務めたコープ自然派京都・平出理事。

安全性が世界中で論争されるグリホサート 日本では緩和!?

 米国のモンサント社(ドイツのバイエル社が買収)の除草剤「ラウンドアップ」に含まれる主成分グリホサートが原因でガンを発症したと賠償を求める裁判が米国内で次々と起こされ、8000万ドルから20億ドルの高額な賠償額の判決がくだされています。グリホサートは、アメリカの環境団体では子どもの健康を考える基準値として、最大許容濃度160ppb※をひとつの目安としていますが、米国・アイオワ州の遺伝子組み換え大豆からは平均1万2000ppb(12ppm)と目安の75倍もの濃度でグリホサートが検出されています。

 中国は米中貿易戦争にこれを利用し、200ppb上のものを輸入の規制対象とする方針を発表しました。その後、日米貿易交渉によって日本に大量の米国産の農産物が輸入されることが決定。これは、米国内で売れず海外からも拒否され行き場を失なった大量のグリホサート入り穀物をゴミ捨て場として引き受けさせるためではないかと吉田さんは指摘します。実際に世界中でグリホサートの規制が高まるなか、日本は2017年、一部の農産物のグリホサートの残留基準値を大幅に緩和し、小麦は5ppmから30ppm※(6倍)に、そばは0.2ppmから30ppm(150倍)に、食用油をとるための種子(ひまわりの種子0.1ppmから40ppmなど)になりました。

※1ppm=1,000ppb

腸内細菌とともに人は生きる

 「腸活」と言われるように腸内環境と腸内細菌が着目されています。腸が注目されるのは、腸の不調がさまざまな病気や不調を招くことがわかってきたからです。

 わたしたちの腸内には300~1000種、重量にして約1.8kgの腸内細菌が棲息(腸内細菌叢(そう)や腸内フローラ)しており、腸は「栄養の消化吸収」と「外的と闘う」2つの役目を担っています。細かいヒダを含めて腸の面積は広げるとテニスコート1面もの広さ。免疫細胞の7割も腸にあり、健全な腸内細菌叢を維持したり、腸の細胞間のつなぎ目から異物が入らないようしっかりと防衛したりしています。ところがこのつなぎ目が緩んで腸の粘膜をつなぐ結着細胞が壊れると、未消化の食べもの分子や有害な微生物、毒素、重金属、環境ホルモンなどが体内に侵入してしまいます。これが「リーキーガット(腸漏れ)症候群」です。リーキーガットになると栄養分が吸収されないだけでなく、異物が体内に侵入するため免疫力の低下、自己免疫疾患の発症、大量の毒物処理による肝臓の不調などさまざまな問題を引き起こすと言われています。

腸内細菌にグリホサートが与える悪影響

 グリホサートはアミノ酸を作り出すシキミ酸経路を働かなくすることで植物を枯らします。この経路は人間には存在しないため、モンサント社はグリホサートは安全だと説明してきました。しかし、人間の腸内細菌の中には植物と同じくシキミ酸経路をもつものもあるため、人間の腸内細菌にも影響を及ぼします。腸は善玉菌と協力してリーキーガットが起こらないよう防衛しているのですが、善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れるとリーキーガットを引き起こすことが疑われています。

 そして、この腸と似た現象が起きているのが「土の中」です。植物は光合成により自ら合成した炭水化物の40%を根から放出し、それを使って根の周囲で微生物を繁殖させ、その代わりに植物が自力では吸収できないミネラルを得たり、微生物が合成した養分を得ていることがわかってきました。現在、モンサント社は抗生物質としても特許を取っているからわかるように、グリホサートは抗生物質です。よって、畑にラウンドアップ(グリホサートが主成分)を撒くということは、畑に抗生物質を撒くことです。微生物が死滅すれば、体だけは大きくても養分が不足した作物になることも考えられます。実際に、遺伝子組み換え(GM)トウモロコシは非遺伝子組み換え(NON-GM)に比べて、カルシウム473分の1、マグネシウム56分の1、マンガン7分の1と栄養価がほとんどないという研究結果もあります。

 グリホサートは元々は産業用パイプやボイラーの洗浄液として開発されましたが、除草剤としての用途を見出したモンサント社が特許を取得(2000年に特許は失効)し、商品名「ラウンドアップ」として販売しました。モンサント社は特許が切れてからも独占的にラウンドアップを売り続けるためにを除草剤を散布しても枯れない「除草剤耐性遺伝子組み換え(GM)作物」を開発したといわれています。

有機食でデトックス

 有機の食べものを食事に切り替えた結果、体内の農薬が減らせるとの多くの研究結果が出ています。農薬被ばくは避けられなくても有機の食事を積極的に摂ることで農薬を排出できることがわかってきたことは海外での有機農産物の需要増に一役買っています。

 2014年、フランスでは世界の有機農業の指導国になることを目標にアグロエコロジー法を推進する新たな農業基本法「農業および食品,森林のための未来の法律」を制定。同法に基づきフランスは、農薬・家畜の抗生物質の使用削減、環境と経済の調和、ミツバチの保護、有機農産物の販売促進、地元の在来種子の保全を政策として掲げています。パリ協定が結ばれたCOP21の会議では、ホスト国のフランスは「1000分の4イニシアティブ」を表明。これは土壌炭素貯留量を毎年1000分の4ずつ増加させることで地球温暖化の原因となる二酸化炭素を減らすプロジェクトで日本も参加を表明しています。フランスの持続可能開発国際・関係研究所のオベール博士は、2050年にEU領域内の5億3000万人を有機農業で養え、かつ農業からの二酸化炭素の排出量を40%削減できるとの研究結果を発表しました。有機農業では生産量は35%(カロリーベース)低下しますが、ビタミンやミネラル分が豊富な農産物を食べることでむしろ健康になれるということです。

 また、タネも多様性を失い、画一化された食物を摂取していると腸内細菌の多様性も失われます。有機農業のように多様な農業でタネの多様性を守ることが多様な食を実現させ、ひいては、腸内細菌を健全化させ、健康を維持することにつながります。

「コープ自然派は国産オーガニックを広げる国産派宣言を新たに掲げています。国産を食べ続け、日本の農業を守ることは、アマゾンなど地球の環境を守ることにつながるのだと実感しました」とコープ自然派事業連合商品委員会・正橋委員長(コープ自然派兵庫理事長)。

Table Vol.403(2019年11月)掲載分より一部修正・加筆