2021年3月9日、大阪府茨木市北部の畑でつくられた無農薬のゴマが市内の小学校の給食に登場。
里山でゴマづくりに励む「いばらき有機の会（通称ゴマの会）」のみなさんにこれまでの経緯やこれからについて聴きました。
里山の畑でゴマを栽培
茨木市は大阪府43市町村の中で8番目に田畑の面積が広く、北部の里山には段々畑が点在しています。NPO自然派食育・きちんときほん代表の大川さん（コープ自然派元理事長）はもともと農業に関心が深く、大川さんや木村さん（コープ自然派おおさか元理事）が中心となって組合員活動として米づくりを楽しんでいました。この田んぼは組合員の農業体験の場となり、田んぼの生きもの調査や田植え、稲刈り、餅つきなども行われていました。今は主に野菜づくりを楽しんでいます。
10年ほど前のあるとき、グループのメンバーはコープ自然派のゴマ生産者、和田萬・和田さんから無農薬のゴマをつくりませんかと提案されました。ゴマは栄養豊富で栽培しやすく、和え物、ゴマ豆腐、ドレッシング、トッピングなど料理を引き立てる万能の健康食品です。そして、国産ゴマの自給率は0.1％にも満たないことを知りました。「やろうやろう、セサミストリートをつくろう！」「将来、6次産業化できるかもしれない」…などとメンバーの夢は広がり、茨木花木センター・小阪さんとともにゴマづくりが始まりました。いざ始めてみると、種まき、草取り、収穫、乾燥、選別と続く作業は大変でしたが、景観を楽しみながらの農作業は何にも代えがたい貴重なひとときでした。のちに、グループはコープ自然派おおさか認定サークル「いばらき有機の会」として、NPO自然派食育・きちんときほんメンバーや地域住民も参加して活動しています。
茨木を有機農業の町に
一方で、茨木市農業委員でもある大川さんは、耕作放棄地が増えている現状に心を傷めていました。茨木市は農とみどり推進課を中心に農業を目ざす準農家（大阪府認定）を応援し、市民にも農業体験を呼びかけるなど地産地消の取り組みをすすめています。そこで、少しでも茨木の畑を元気にしようと、準農家、茨木市、NPO自然派食育・きちんときほん、コープ自然派おおさか（事務局）などの協力を得て、茨木オーガニック農業推進協議会を設立、茨木で収穫された安全なお米や野菜を茨木の子どもたちに食べてもらいたい、農薬に頼らず生きものたちの力を借りる有機農業をもっと活発にしたいとの想いが込められています。2020年には農水省の補助事業として有機農業技術講座（全4回）を開催、有機農業の意義や土づくりの大切さ、BLOF理論についても学びました。
「イバゴマ」が学校給食に
今、世界各国はオーガニックへの流れが進行しています。日本でも地元産の有機農産物を学校給食に取り入れることで有機農業を活性化させる取り組みが各地で始まっています。また、2020年度、コープ自然派は地域の生産者と有機農業を広げることを目標に掲げています。そこで、茨木オーガニック農業推進協議会は、収穫されたゴマを学校給食に使ってもらいたいと市長や給食担当者、市議会議員などに働きかけ、3月9日、無農薬のゴマが市内32小学校（約1万6000人）に供給されました。ゴマづくりには準農家や茨木市が募集した市民も参加、市内の上音羽・泉原・福井地区で栽培されました。
連作障害を避けるため、今年度は耕作放棄地を利用して約3倍の栽培を予定。また、地域の福祉団体と連携して農作業を分かち合うことも考えています。「ほんの一歩ですが、私たちがつくった安全なゴマが学校給食に使われたのはとてもうれしいです。日本の農業を元気にするために、茨木市でも有機農業が活発になることを願っています」とメンバーは話します。市内の中華料理店では「いばらき有機の会」のゴマ「イバゴマ」を使ってゴマ団子をつくり、ふるさと納税の返礼にするという企画が進行中、「いばらき有機の会」の今後の活動が大いに期待されます。
Table Vol.440(2021年5月)より
一部修正
