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くらしと社会

私たちの声を届けるには?

ふだんの暮らしの中で行政や学校・保育園などに意見を伝えたいと思うことはありませんか?そんなとき、どんなふうにしたらよいのでしょうか。
2020年11月26日(木)、コープ自然派奈良(「オリーブの木」主催)では、東日本大震災後、放射能被害から子どもたちを守ろうと「としま放射能から子どもを守る会(現在は「としま子どもを守る会」」を立ち上げた伊藤恵美子さん(東京在住)にお話を聴きました。

伊藤恵美子さんは、405号で紹介した「12人の絵本作家が描くおうえんカレンダー」に取り組む一般社団法人を支える理事でもあります。

一人からでも行動できる

 伊藤恵美子さんは学生時代の体験から障害者地域福祉の現場に携わり、その後、NPO法人自然育児友の会・事務局を務めました。自然なお産や母乳育児を楽しむ母親教室などを開催する中、1994年、4人目の赤ちゃんを自宅出産。家族全員で赤ちゃんを迎える様子を写真絵本にした「うちにあかちゃんがうまれるの」(ポプラ社)を出版し、今も多くの人たちに愛読されています。

 2011年3月11日、東日本大震災により福島第一原発事故が発生、放射能から子どもたちを守ろうとあちこちでグループや団体が発足しました。東京でもすぐに避難した人たちもいて、NPO自然育児友の会では予定していたイベント開催の中止について話し合う日々でした。当時、伊藤さんの子どもたちは、専門学校生、高校生、中学生、卒園を目前に控えた保育園児の4人。伊藤さんは安全な食べものを求めて駆け回り、そのうち多くの親たちが給食の食材は大丈夫だろうかと不安な気持ちを持ち始めました。

 そこで、6月から始まる定例区議会に「豊島区で安心して子育てできる放射能対策について」という陳情書を提出しました。「本当は子育てママたちとの連名にしたかったのですが、時間がなくて、何とか一人で締め切り直前に書き上げて提出しました。陳情書は継続審議とされたままでしたが、一人でもアクションを起こせるという実感を得ました。すぐには変わらないけど、こんなことを考えている住民がいるのを伝えることは大切。電話やFAX、メールを行政は必ずカウントしています。電話をかけるときは今でもドキドキしますが、一人でもやれることをやるのがスタートではないでしょうか」と伊藤さんは話します。この時の区議会では放射能関連の陳情書は2通提出されました。

 「福島原発事故後、政府は食べものの放射能基準値を500〜100ベクレル/kgに引き上げました。これは原発ではドラム缶に詰めて保管されなければならない数値です。私の場合は自然育児というバックボーンがあり、子どもたちのいのちや笑顔を大人たちが何としても守らなければという思いでした」と伊藤さんは振り返ります。そして、Twitter を通して出会った人や地域のママ友とともに「としま子どもを守る会」を設立しました。

給食への要望書を提出

 当初、「としま子どもを守る会」は茶話会を頻繁に開催し、情報共有や悩み・不安などを話し合いました。また、講演会や学習会を開催し、地域の新たな仲間を募りました。一方、給食の食材の放射能測定を求める要望書を区の担当部署に提出。要望書は区議会では審議されないのですが、区は区立保育園と学校給食の食材にタケノコとシイタケを使わないという対応を決めました。「当時、豊島区は1回ずつしか各学校や園の給食測定をせず、私たちは不満を抱いていましたが、後から考えると具体的なこの対応はとてもありがたかったです」と伊藤さん。「としま子どもを守る会」と保育園・学校・給食・危機管理の各担当課長・係長との意見交換会は今も年に一度行われ、「要望書を提出したことは決して無駄ではなかった」と伊藤さん。並行して活動してきた「子ども全国ネット」では、各地で活動する人たちを招いてお話し会を開いたこともあり、「共通しているのは行政の担当者や議員さんたちとの人間関係を大切にしていることです。彼らも安心して子育てできる地域にしたいと考えているはずですから、対決から得られるものより共感から得られるものの方が多いように思います」と伊藤さんは話します。

安心して暮らせる地域へ

 3.11からまもなく10年、「としま子どもを守る会」は当初に比べてメンバーが少なくなりましたが、東京でも路肩の土の放射能を測定すると未だに数100ベクレル/kgといった高い数値が出ます。「小さな子をもつママたちの不安を茶話会で聴くと背中がしゃんとします」と伊藤さん。今年はコロナ禍で初めてZoom茶話会を行ったということです。

 請願書が採択された経験もあります。「子ども全国ネット」では、2012年6月に衆参両院とも全会一致で可決成立した「原発事故子ども・被災者支援法」の具体的な実施を求める意見書を各地域で出してもらうよう陳情書・請願書を提出することになり、「としま子どもを守る会」でも取り組みました。そのときはまず多数派の与党議員たちにこの法律の大切さを丁寧に伝えました。そして、各会派を訪ねて全会派の議員の署名をもらい請願書を提出、区議会で採択されました。「『支援法』は動かないままですが、思いを形にするという自信は得られました。そして、このようにつくられたネットワークは、安心して暮らせる地域づくりにつながっていると思います。会やグループづくりにはSNSをうまく使ったり、小さなイベントを開催することも有効で、無理のない方法でやっていくことが次につながると思います」と伊藤さんはアドバイスします。

Table Vol.433(2021年2月)より
一部修正・加筆

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