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生産者訪問・商品学習会

コープ自然派アンバサダーin四国③ 有機栽培米生産者の育成

 コープ自然派アンバサダーの最後の訪問地は、「NPOとくしま有機農業サポートセンター」(小松島市)、「1000人の有機農業者を育てる」目標を掲げ、2009年に開設しました。BLOF理論を提唱する小祝政明さんが校長を務める「有機の学校」では140人の農業技術者を輩出。BLOF理論とは、アミノ酸・ミネラル・土壌の団粒化という3つのカテゴリーに基づいて、高品質・多収穫を実現する有機栽培技術です。さらに、経営・ICT技術などを学ぶ学科、土壌分析・施肥設計・微生物培養・堆肥づくり・農機具の使い方などを学ぶ実技、企業実習など短期間で即戦力となる有機農業技術者を育成しています。

NPOとくしま有機農業サポートセンター総務経理チーフ・山下さん(左端)が施設内を案内。ビニールハウス、露地、訓練生のための実習用の畑が約2000㎡あります。

 来年度からは、「ツルをよぶお米」生産者で日本有機農業普及協会公認BLOFインストラクター・西田聖さんを校長に迎えて、有機栽培米づくり実践型の学校としてリニューアルします。西田さんは慣行農法からネオニコチノイド系農薬排除の米づくりに取り組み始めて約10年。BLOF理論による有機栽培米づくりを実践し、ネオニコチノイド系農薬排除の取り組みでは生産者150名、農地面積198万㎡まで拡大しました(現在、高齢化や離農、農地の集約などで120名、99万㎡に減少)。

「コウノトリは1日で90匹のカエルを食べ、2019年は約45日間田んぼに滞在しました。他の野鳥と共存するには相当数の生きものが必要です。野鳥が舞う水田を再現し、守るために活動を続けます」と日本有機農業普及協会公認BLOFインストラクター・西田聖さん。

 「昔の稲作作業は草取りが中心で、1000㎡の田んぼの草取りに家族2人で95時間を費やしていました。除草剤の開発でその作業は30分に減少し、農家の救いとなりました。無農薬栽培は除草作業に大変な労力を使っているのです」と西田さん。しかし、BLOF理論の抑草システムにより、除草剤を使用する特別栽培米が約5年で無農薬栽培に切り替えられるため、毎年1haの無農薬の田んぼが増えています。BLOF理論の抑草システムは、雑草が発芽する時に必要な土中の酸素を奪う秋処理という方法。収穫後、稲わらを田んぼに鋤き込み半年間かけて腐植・分解させることで、団粒構造が起こり、抑草効果と保水力が豊富で多雨・干ばつに強く、微生物が豊富なフカフカの土になります。

 また、収穫前の稲の倒伏を防ぐためにも団粒構造の土が重要です。稲が倒れると収穫作業が困難になり、収穫量の減少、品質低下を招き、穂が水に浸かって籾が発芽するなどの問題も起きます。倒伏は稲の根本近くの節間が長く弱くなることが原因で、過剰な生育による日照不足、窒素肥料・化学肥料などの影響によるもの。節間が短く、丈夫な稲に育てるには、「みみずふん土」が有効で、窒素・炭素・カルシウム等のミネラル分・アミノ酸含量・酵素などが豊富な団粒構造の土づくりに欠かせません。「みみずふん土」は徳島県の菌床椎茸の廃菌床がミミズの腸を通過してできたミミズのふんです。

「収穫前の稲の倒伏は農家がもっとも恐れることです」と「ツルをよぶお米」生産者、阿波農産代表取締役・浜田孝俊さん。
「ミミズを飼って約50年、みみずふん土は植物を活性化し根力がつきます」とみみずふん土を製造販売する豊徳代表取締役・笠松則和さん。

 これらの技術を駆使した西田さんによる有機栽培米生産者の育成が「NPOとくしま有機農業サポートセンター」で始まります。

Table Vol.432(2021年1月)より
一部修正・加筆

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