一般社団法人農民連食品分析センター所長・八田純人さん

「子どもたちは感受性が強いため食品添加物や農薬などに敏感に反応します。大人がそれに気づいてあげたいですね」と一般社団法人農民連食品分析センター所長・八田純人さん(写真は昨年の学習会の時のもの)

2020年8月28日(金)、コープ自然派奈良・農民連共催でオンライン学習会を開催。講師の八田純人さん(農民連食品分析センター)に、輸入食品の残留農薬などのデータをもとに食の安全性について聴きました。

加工食品のからくり

 八田さんが所属する農民連食品分析センターは、消費者や農業者の募金によって設立され、輸入食品の残留農薬や添加物など危険物質の分析・安全性・栄養成分などの比較、健康への影響調査などを独立的な立場で行っています。2000年、農民連商品分析センターが中国産冷凍ホウレンソウの残留農薬を検出したことが食品衛生法の改定と残留農薬のポジティブリスト制度化のきっかけになりました。

 和牛の脂やうまみ成分、結着剤などの食品添加物を注射器で注入してつくられる成型肉、同じく注射器で脂を入れたホッケの一夜干し、同様に軟化剤やうまみ成分を注入して形を均一化した牛タン、かまぼこ状に黄身が端まで入ったロングエッグたまご、ゼラチンと安定剤で固め電子レンジ加熱しても爆発しないフェイク生卵、1.5倍に薄めた豆乳を凝固剤で固めた豆腐などスーパーマーケットやコンビニ、飲食店など身の周りにある食品のからくりを八田さんは紹介し、「これらの商品の加工はすべて基準値内、法的に問題ありません。しかし、知らずに食べるか、何かわかって食べるのとでは大きな違いです」と話します。

グリホサートによる被害

 農林水産省の調査(2013年~2017年)で、米国・カナダ産小麦の9割以上から除草剤成分「グリホサート」が検出されています。グリホサートは、1970年代にモンサント社が開発した除草剤ラウンドアップの主成分で、植物がアミノ酸を合成する際に働くシキミ酸経路を妨害して枯らします。モンサント社はこのシキミ酸経路が動物にないため人に影響がなく、土壌中では微生物によって速やかに分解されると主張し、世界で最も安全な除草剤だと宣伝。また、特許が切れていることから、ジェネリック農薬としてさまざまな商品名で安価に販売されています。米国・カナダでは、小麦や大豆の栽培でグリホサートによる「プレハーベスト処理」が一般的に行われています。プレハーベスト処理とは、収穫直前にグリホサートを散布することで、作業性・品質の向上、収穫時期の調整などの目的で行われているということです。

 近年、EU諸国では行政が中心になりグリホサート使用禁止の動きが広がっています。2018年8月、グリホサートの発がん性を問う裁判で、米国サンフランシスコ地裁が農薬大手企業モンサント社に約320億円の賠償命令を下しました。その後、12万件以上の裁判が起こされ、最大109億ドル(1兆6000億円)を支払うことで原告75%と和解しています。

 国際がん研究機関・IARC(世界保健機関WHOの一機関)がグリホサートの発がん性について「group2A 人に対しておそらく発がん性がある」に分類。また、世界中の有名な研究機関からグリホサートの危害性を指摘する論文が多数発表されています。ヒトに影響する疾患や異常として発がん性・急性毒性(皮膚炎、肺炎、血管炎)・自閉症など発達障害・生殖系への影響・妊娠期間の短縮・パーキンソン病。動物実験では発がん性やDNAの損傷・発達神経毒性(腸内細菌叢の異常・NMDA型グルタミン酸受容体への影響)・金属のキレート化・内分泌かく乱作用(環境ホルモン)と生殖毒性・次世代影響(エピジェネティックな変異)があると伝える研究論文をネオニコチノイド系農薬研究の第一人者・木村-黒田純子さんが報告しています。また、磯焼け(沿岸域の海藻が減少し水産業に影響する)の原因となる実験が行われ自然界への害も懸念されます。

輸入小麦製品から検出

 市民グループ「デトックス・プロジェクト・ジャパン(DPJ)」が国会議員を含む28名の協力を得て毛髪中の農薬検査を実施。19名(全体の70%)からグリホサートとその代謝物質が検出されました。

 農民連食品分析センターによる小麦製品の残留検査でも、輸入小麦(米国・カナダ産中心のもの)を使用した製品のほとんどから検出。一方、国産小麦を使用した製品からは検出されていません。学校給食パンからもグリホサートが検出され、地元産の小麦や米粉への切り替えを求める動きが強くなっています。また、日本は小麦のプレハーベストは禁止されていますが、大豆は可能です。今夏、農民連食品分析センターの検査でホクレン農業協同組合連合会(北海道)の大豆からグリホサートが検出されましたが、「遺伝子組換え食品いらない!キャンペーン」と「日本消費者連盟」がホクレンに中止を求めた結果、事実上禁止になりました。

(左)コープ自然派奈良の「野菜セット」生産者の農民連奈良産直センター事務局長・水井康介さん。(右)司会進行を務めたコープ自然派奈良・西澤常任理事。

Table Vol.426(2020年10月)より一部修正・加筆