秋の夜長に一献といえば、当然日本酒ぬる燗で!と女子大生の頃からの筋金入り日本酒党なわたくし。出産を機に引っ越してきた日本酒発祥の地・奈良で、灘や伏見など有名醸造地とはひと味ちがう、小さな酒蔵の個性的で素晴らしいお酒に出会いました。そして、近隣の酒蔵見学をいろいろするうちに、日本酒文化の奥深さに触れ、ますますどっぷり日本酒ワールドのトリコに。お酒の神様の気配がするような、歴史を感じる建屋の独特の空気感や香り。酒造りを説明してくださる蔵人さんがタンクの中でピチピチ発酵する酒を見る時の、わが子に向けるような眼差し。どの蔵の歴史もそれぞれドラマチック。こだわりポイントや目ざす味わいがさまざまで、蔵主さんの代替わりで、醸すお酒の方向性が変わっていくのを知るのも、また楽しいのです。酒造米の品種によっても味が変わり、他にも精米度合、酵母の種類や醸造方法、絞り方など、お酒の味の微妙な違いを作る要素は無数にある。おまけに微生物に気持ちよく働いてもらわないと思うようには仕上がらない。今どきは醸造学を学び化学の力を使うこともあるとはいえ、それらを全部構想して緻密にコントロールしながら醸す蔵人さんは、オーケストラの指揮者のようだなぁ、かっこいいなぁといつも思うのです。 

 そんな訳で、日本中に無数にある美酒が私を待っているから、外食時はともかく、家呑みでは、とりあえずビール!の後は、日本料理に限らずどんなメニューでもほぼ日本酒。よつ葉シュレッドチーズたっぷりの自家製ピザに、キーンと冷やした薄濁りの日本酒クィっ。ビリビリスパイシーに仕上げた麻婆豆腐には、キレのある山廃をひや(常温)でグビっ。バスク風チーズケーキに熟成古酒をチビチビなんてのも、焦げた風味にまろやかな香りが相性完璧!どれもこれも、たまらん美味しさなんですよっ♪ 10歳ぐらいから酒蔵見学に同伴したわが娘(事前に許可をいただけた場合だけね)。蔵の神秘的な雰囲気が気に入ったのか、アホな親に仕方なく付き合ってくれていたのか定かではありませんが、一緒に搾りたての新酒の香りを嗅ぎ、仕込み水の味をきき、飲み比べする親の横でおとなしく香り比べをしていました。大学生になってもアルコールに興味を持つ様子なく、それはそれで健康的でよいかと思っていたら…ある日突然、日本酒の美味しさに目覚め、社会人になった今や旅先でみつけた美味しいお酒を教えてくれるように。幼少時の英才教育(笑)は裏切らないのです! 味覚の秋、今宵はちょこっと日本酒なんぞ、いかがですか?

料理研究家 うの まきこ
日本の伝統食を考える会会員。食品メーカーでアイスクリームなどの新製品開発等に従事したのち、料理研究家古川年巳氏に師事。わかりやすいレシピと、野菜をたっぷり使ったヘルシーで簡単な料理に定評がある。アトピーっ子のための簡単な除去食メニューも得意。コープ自然派奈良前理事長。

Table Vol.424(2020年9月)

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