「子ども脱被ばく裁判」を支える会・西日本代表の水戸喜世子さん。子どもたちへの熱い想いにあふれた水戸さんのお話し会の開催企画を募集しています。

2018年4月30日(月)、コープ自然派しこく徳島センターは「子ども脱被ばく裁判」を支える会・西日本代表の水戸喜世子さんを迎えお話し会を開催しました。

予測されていた被害規模

 2017年3月末、政府は年間追加被ばく線量20ミリシーベルト(一般公衆の被ばく限度は年間1ミリシーベルト)以下の地域の避難指示を解除し、住宅対策などの支援を打ち切りました。現在、福島県では放射線管理区域の基準を超える地域で子どもたちが暮らし、通学しています。

 1954年、中曽根康弘議員を中心に提出された原子炉建設予算案2億3500万円が可決し、日本の原子力発電政策が始まりました。日本学術会議(科学者による学術機関)は政府の方針を非難し、原子力研究の軍事利用を防ぐために「原子力三原則」が物理学者によってまとめられます。「原子力三原則」とは①研究の民主主義的運営②日本国民の自主的運営(米国に頼らず、日本で技術を開発する)③一切の情報の完全公開。これらは原子力基本法に盛り込まれ、被爆国として日本特有のものになりました。その後、政府は日本原子力産業会議に原発事故を見積もる災害評価を依頼。その報告書では、事故時の死亡人数、葬儀費用、除染費用などが詳細にまとめられ国家予算の1.7倍を超える金額になりましたが、国民の反対を恐れた政府は内容を公開せず原発をスタートさせます。そして、日本で最初の商業用原発である東海原発(総出力16万kW)で事故が起きたときの損害評価額は1兆円( 現在に換算して54兆円)、急性死者数540人、急性障害者数2900人、放射能放出量1000万キュリー、農業制限・除染面積3万6000㎡が予測されていました。「核物理学者だった夫・水戸巌(1986年、双子の息子さんとともに北アルプスで死亡)は、当時から原発事故を予言し、原発で起きる事故をすべてチェックしていました。しかし、日本の事故の報告回数は米国の50分の1、『おかしい、そんなハズはない!』と常々話していました」と水戸さん。小さい事故もすべて明るみにして調査すれば、大きい事故を防げるということです。

不溶性のセシウムボール

 福島第一原発事故から7年、拡散と除染で空間線量は少しずつ低下していますが、除染で取り除いた表土や草木を入れたフレコンバッグ700万袋が海岸線に山積みにされています。さらに、フレコンバッグは県庁前など町の中心に溢れ、学校の近くや子どもたちの公園にまで埋められるほどです。

 最近、セシウムボール(ホットパーティクル)という高線量の放射性粒子が注目されています。セシウムボールとは放射性セシウムやさまざまな放射性核種が固まって花粉状の粒子になったもので、水に溶けないため、吸い込むと呼吸器官に付着して数十年間も体内に留まり(セシウムの生物学的半減期は大人80日、子ども40日)、内部被ばくし続けるということです。「セシウムボールは最近見つかったため、未だに解明されていないことが多く、リスクの程度はわかりません。土壌汚染のひどいところに存在すると考えられ、原発はこのように解明されていないことがまだ多くあります」と話す水戸さん。帰還困難区域の山間部では7年間伐採による除染に取り組んできましたが、線量に変化はなく、大部分は土壌に原因があったということです(土壌91.5%、樹4%、落葉4.5%、NHKスペシャル「被爆の森」より)。

権利を確認し責任を問う

 水戸さんが代表を務める「子ども脱被ばく裁判」支える会・西日本は、裁判傍聴のサポートや署名活動、会報の発行、学習会の開催などを行っています。「子ども脱被ばく裁判」は福島地方裁判所で提訴した「子ども人権裁判」と「親子裁判」の2つの裁判から成り、2014年8月にスタートしました。「子ども人権裁判」は、小中学生が市町村に対して、「安全な環境(追加実効線量が年0.3ミリシーベルト以下)で教育を受ける権利があることの確認」を求める裁判。「親子裁判」は子どもたちを無用に被ばくさせたことの責任を国と福島県に問う裁判で、原告は原発事故後に福島県に居住していた子どもとその保護者です。

 4月25日に行われた第14回公判で、国(被告)は「100ミリシーベルトを超えない限りガン発症リスクはない。線量の多寡に関係なくすべて健康に悪影響が生じるという考え方は国際的治験に反する」とし、事故後の国の対応は法令に則った正しい対応だったと主張。これに対して「放射性物質は拡散することはあっても消えてなくなりません。放射線の影響にしきい値はなく、被ばく量と発がんは相関関係があり、幼い頃の被ばくほど発症率が高いとの結論が出ています」と水戸さん。そして「事実を隠し、あったことをないことにする国に対して、私たち一人ひとりが賢くなり、自分の想いを正直に話し合える仲間をもつことが大切です」と訴えました。

お話し会を主催したコープ自然派しこく・徳島センター「統一テーマ活動」メンバーのみなさん。

Table Vol.368(2018年6月)