佐藤さんの畑にて。冬の寒さで畑が凍ると葉の成長が抑えられ、栄養が根に行き糖度が上がります。にんじんが身を守るために糖度を上げる自然現象です。

2019年11月21日(木)〜23日(土)、コープ自然派アンバサダーは九州(福岡・熊本・鹿児島)の生産者を巡る研修会を開催、熊本県山都町の種採りにんじんの生産者・佐藤勝六さんを訪ねました。

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独自の種に成長

「種採り運動は買い支える人とともに取り組むべきです。毎年、コープ自然派のカタログに毎年掲載していただいていることに感謝します」と佐藤勝六さん。

 野菜の種は、F1品種と固定種に大別されます。F1品種は収量が安定して形がそろった作物ができる一代限りの品種で、市販される種の多くはF1品種です。固定種は何代にも渡って優秀な野菜を選んで種採りをくり返し品種改良したもので、長い年月をかけてその土地の気候風土に適応、毎年生産できます。1960年代頃までほとんどの野菜は固定種でした。

 出荷用と採取用ににんじんを分け、採取用に選抜したにんじんをハウスに植えて花が咲くまで育てます。春に白いアジサイのような花が咲き、7月中旬に種を採取。マイナス3〜4℃の状態で休眠期間を設け、8月に種をまきます。にんじんは九州の代表的な品種「黒田五寸」、高栄養で肉付き・食味がよく、柔らかいのが特徴。採取用にんじんの選抜は、美しい形のものだけ揃えるとうまく育たず、種の数が少なくなります。そこで、平均的な形、首が太くて生命力があるものなどを1〜2割、それに佐藤さんが理想とする色と形を選びます。「科学的な根拠はよくわかりませんが、種がなくなると困るので毎年、一生懸命続けてきただけです。採取する際に足りない点を補い、時間をかけて独自の種になりました」と佐藤さんは話します。

 種まきは8月1日から10日の間で適期を見極めて行い、まき直しはできません。近年の異常気象による大雨で、毎年、発芽時に流される畑が発生し、昨年も畑1,500㎡分が流れました。さまざまな苦労を経て、収穫時には「ありがとう、ようがんばったね」と声をかけ感謝しているということです。

有機農業で学んだ生き様

 1945年、長野県生まれの佐藤さん、30歳で公益社団法人全国愛農会(有機農業の普及・教育、有機食品の検査・認証などを行う団体)と出会い、1976年、山都町で有機農業を営むるい子さんと結婚。以来、山都町で有機農業を続け、有機農業以外は経験ありません。種採りにんじんの栽培を始めたきっかけは、長崎県で長年、種採り農業を続ける岩崎政利さんの講習会に参加し、種を採り次代へ受け継ぐ技術と哲学に感動したことから。2002年、有機JAS認証を取得、九州・山口県の自家採種農家の集会で種子・情報の交換をして互いに学び合う努力を続けています。

 度重なる大雨で保水力の限界を超えている土、2016年の熊本地震で崩れた畑は未だに工事中と、生産農家を取り巻く環境の悪化は深刻ですが、「1年1年、がんばって有機農業を続け、気がついたら有機以外はできなくなっていました。人智を尽くして天命を待つ、悔いが残らないよう精一杯、思いついたことから試し、より良くしようと努力します」と佐藤さんのお話は農業から人生哲学にまで及びます。完熟堆肥(有機物が十分に分解・発酵した堆肥)が昔から広く使われてきましたが、現在は完熟になる前の堆肥にエネルギーがあり、一定期間土になじませることで害が取り除かれてエネルギーを取り入れることができるとされています。「悪い部分があっても、良い部分を有効に使うことを農業で学びました。人生には答えが出ないこともあります。本当にキツい時は逃げてください。でも、あきらめずに問い続けていると、ある時スッと気持ちが軽くなる時があります。有機農業は生きざま、すべてのことはバランスにある、これが真理だと思います」と佐藤さんは話しました。

佐藤るい子さんは、1970年代初頭から山都町で有機の米づくりに取り組んできました。

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Table Vol.410(2020年2月)