「天水みかん」生産者の田尻勝寛さん・篤子さん夫妻。

 「天水みかん」の生産者、田尻勝寛さん・篤子さん夫妻のみかん畑がある熊本県玉名市天水町小天地域は、全国的に名高い極早生温州みかんの生産地。南向きの斜面に広がるみかん畑は日当たり抜群、さらに周囲の石垣に太陽光が反射して温度が上がるため糖度が高くおいしいみかんが育ちます。「最近のみかん畑は平畑が主流ですが、石垣のある場所にみかん畑をつくった昔の人はよく考えていたとつくづく感服します」勝寛さんは話します。

 慣行栽培のみかん畑で使用される農薬は12回、収穫前には防カビ剤・防腐剤が施されます。田尻さんは畑の土が痩せてきたことをきっかけに、約40年前に除草剤とワックスかけをやめました。もちろん、ネオニコチノイド系農薬・防カビ剤・防腐剤は不使用。収穫後、みかんが腐りやすくなりますが、地元の人たちから「このやり方は味がよかばい」と理解されています。

 2019年10月、温暖化の影響でカメムシが大量発生し、畑一面が全滅するほど被害が広がりました。実が小さい時期に発生するハナムグリという害虫は、実に放射線状の引っかき傷のような傷みをつくり商品価値がなくなります(見た目は悪くなりますが、味は変わりません)。「それでも、農薬は散布する時に空気中に舞うので生産者の体に悪いから」と田尻さんの畑では使用を抑えています。また、低地ではイノシシによる被害が深刻化し、畑が全滅することもあります。

 1991年、日米貿易摩擦からオレンジの輸入自由化がスタートした結果、国産の柑橘類の価格が下がり、生産農家に深刻な影響を与えました。自由化以前、みかん栽培だけで生産農家の生活は成り立っていたということですが、現在、みかん栽培の収入は厳しく、水やりなどの作業は採算がとれないため省略されています。

 田尻さんはみかん畑約5000㎡、晩柑1500㎡、田んぼ10haを障がい者を含む8名で運営。「40年以上前から畑を手伝ってくれる人たちを家で預かり、家族のように暮らしてきました。今は寮を建てて住んでもらっていますが、わが子のようにかわいいです」と愛情たっぷりに話す田尻さん夫妻。後継者の村田陽介さんが立派に成長し、穏やかな表情でみかん畑を眺める夫妻の様子が印象的でした。

田尻さんの畑からは雄大な雲仙と有明海が望むことができます。

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Table Vol.410(2020年2月)