2021年5月26日(水)、コープ自然派奈良(GMO委員会主催)は「藤井養蜂場」(福岡県朝倉市)による生産者学習会をオンライン開催。
BusyBees・藤井さんにハチミツの品質検査の大切さや海外の生産者について話を聴きました。

自社工場での品質検査

 1909年創業の藤井養蜂場はハチミツの生産・販売、養蜂家へのハチミツ・ミツバチ・養蜂資材などの販売を行っています。また、1950年代から養蜂家を志す若者たちを受け入れて養蜂家を育成し、その卒業生を中心とした藤井養蜂場グループ(50名超)は、国内で圧倒的な生産量を誇ります。

 現在、国内の養蜂家数は10年前の約2倍に増加、一方でハチミツの生産量はほぼ横ばいながら、小規模養蜂家の増加とともに直売所などで売られる商品が増えています。趣味・副業で行う養蜂家の製品も同様に販売され、その中には品質管理や安全性の確保が不明なものが混在し、採れたハチミツをビンに詰めただけの商品が売られているケースもあるとのこと。2017年、日経新聞の記事によると、東北から沖縄の各都県で28製品のハチミツ、38地点のミツバチ、7地点のサナギにネオニコチノイド系農薬が検出され、うち18製品は国の基準値を超えていました。

 藤井養蜂場では日本全国および世界中から入荷したハチミツを缶ごとに通し番号を付けて原料倉庫に保管。1缶ずつサンプリングを行い、自社研究室で糖分析や抗生物質検査などの厳格な品質検査により安全性を証明。いつ、どの農場で採ったかという記録書類から原料倉庫まで消費者にも開示しています。

マヌカハニーの偽装問題

 近年、強い殺菌作用があると言われるマヌカハニーが人気です。世界で消費されるマヌカハニーは年間1万トンですが、ニュージーランドで生産される量は1700トンと不可解なデータがあり、成分含有量の誤りや抗菌物質の人為的な添加など国際的に偽装商品が問題になっています。パッケージが同じマヌカハニーのレプトスペリン(有効成分) の含有量が、ニュージーランドで販売している商品は164nmol/g(表記通り)、日本で販売している商品は22nmol/gだったことが兵庫県立大学の研究で判明。藤井養蜂場では、マヌカハニーをはじめ、すべてのハチミツを生産者からドラム缶で直接購入し、品質検査を行って容器に充填、ビン詰めしたものを輸入することはありません。また、可能な限り現地に赴き、生産状況を確認し、生産者との信頼関係を築いています。

 ローハニーや生ハチミツなどの非加熱ハチミツが人気です。しかし、非加熱と謳う商品は疑問点が多く、全国はちみつ公正取引協議会は「非加熱ハチミツ」の定義をしていません。採れたてのハチミツには、蝋のかけらやミツバチの死がい、砂、ゴミなどが混じっています。それらを取り除く作業を何回か行いますが、採蜜時の温度33〜35℃(巣箱の温度)のままでは粘度が高いため、温度を上げずに細かい夾雑物を取り除いたり、ろ過作業はできません。藤井養蜂場では45℃以下の温度帯で3段階のメッシュフィルターを使って夾雑物を取り除きます。マヌカハニーは温めることで有効成分の抗菌活性が高まるため、厳密に非加熱と言えるかどうかは不明です。

カンガルー島のハチミツ

 1885年、南オーストラリア州・カンガルー島はリグリアンという種類のミツバチの保護区として法制定された世界で唯一の島です。ミツバチの病気や感染を防ぐためにミツバチ、ハチミツ、花粉、養蜂器具など島への持ち込みは一切禁止。オーストラリア本島から離れているため、開発や外来種による影響を受けず、国立公園と23の自然保護区には貴重な動植物が多数生息しています。そのため、リグリアンミツバチの純血種が守られ、現在までミツバチの病気が発生していません。

 「カンガルー島のオーガニックはちみつ」は、南オーストラリア州を本拠地とする有機農産物の認証機関「NASAA」の有機認証を取得。その内容は、ミツバチの病歴がない、ミツバチの巣箱から半径5㎞以内に汚染の可能性がある畑、設備などを含み何もないこと、45℃未満の処理で採蜜すること、その他ミツバチのエサ、飲水、移動経路などすべて管理していることが条件です。

 2019年9月から半年間続いたオーストラリアの大規模森林火災でカンガルー島の半分が影響を受け、カンガルーやコアラなど多数の野生動物が犠牲になりました。生産者のピーターさんは巣箱の半数が焼失するなど甚大な被害を受けました。養蜂の回復には3年間を要し、年末に入荷する予定の20トンのハチミツは有機認証が取れません。「カンガルー島は全体がオーガニックのような豊かな自然と環境に恵まれた島です。藤井養蜂場では島の状態が回復するまで未認証ハチミツの取り扱いを続けることにしました。生産者を応援するために、ぜひ、コープ自然派さんでもご検討ください」と藤井さんは話します。

コープ自然派でも取り扱っている、ミツバチ保護区・カンガルー島のはちみつ。

 

世界のオーガニック養蜂家

 カナダのオーガニックハチミツは中西部に位置するサスカチュワン州で採れます。カナダでは遺伝子組み換えナタネの栽培が行われていることから、オーガニックハチミツが少なく、養蜂地域も限られます。ウクライナからの経済移民であるイスチャック夫妻が飼うミツバチは穏やかで巣に人が近づいても刺しません。ミツバチは飼い主に似ると言われ、丁寧な世話により、ミツバチにストレスがかからないからです。イスチャック夫妻はチェルノブイリ原発事故による避難を経験していることから、食の安全性に関心が高く、自家菜園などの食事はすべてオーガニックだということです。

 EUから経済援助を受けているブルガリアは、もっとも厳しい有機認証基準で運用されています。ブルガリアのオーガニック・ハチミツ生産者のネシェフさんは九州大学に留学経験がある金融マンでしたが、リーマンショックをきっかけに養蜂家に転身。ブルガリアで初めてオーガニックの養蜂を行った第一人者です。昨年からネシェフさんの紹介でブルガリア産の菜の花ハチミツの取り扱いを始めました。藤井養蜂場は、他にもハワイ、ミャンマー、中国など世界中の養蜂家からハチミツを輸入しています。

(左)「カンガルー島の生産者ピーターさんにコープ自然派さんからの義援金を送り、大変感謝されています」とBusyBees代表取締役・藤井さん。 (右)日本各地で輸入された遺伝子組み換えナタネが自生しています。奈良県内に自生するナタネが遺伝子組み換えに交雑していないか、コープ自然派奈良・米田常任理事が検査しました。

Table Vol.446(2021年8月)より
一部修正・加筆