自身の体験を思い起こしながら、世界と日本の情勢を分析し、これからの課題について話す湯浅誠さん。

2019年12月15日(日)、神戸市教育会館大ホールにて「いのちとくらしの映画祭with湯浅誠Ⅱ」が開催されました(コープ自然派兵庫は実行委員会に参加)。映画上映に続く湯浅誠さんのお話では貧困問題の深刻さが語られました。

「1945年の精神」とは

 まず、「1945年の精神」(2013年制作・イギリス)を上映。この映画は政治活動家としても知られるケン・ローチ監督が手がけたドキュメンタリーです。第二次世界大戦後、イギリスに誕生した労働党政権は戦争への反省から、貧国をなくそうと水道や電気などのインフラを国有化し、なかでも国民保険サービスを整えることで「ゆりかごから墓場まで」安心して暮らせる社会を実現していきました。しかし、サッチャー政権以降、この路線は否定され、労働者たちは貧困に苦しむようになります。そこで、ケン・ローチ監督は労働者に「1945年の精神」を検証し、再び目覚めようと訴えます。この訴えは、小泉政権以降インフラやサービスの民営化が推進され、貧困が拡大する日本でも受け止めなければならないのではないかと、この映画が上映されました。

イギリスがEU離脱を決定した翌日に上映された「1945年の精神」は、日本の現状と重なります。司会はコープ自然派兵庫・上﨑常任理事。

深刻化する貧困問題

 続いて湯浅誠さんの講演。日本では高度経済成長期(1955年〜1970年)を機に多くの人たちは3つの傘に守られてきました。3つの傘とは、国、大企業、正社員です。大企業に勤める男性には終身雇用を基本として一家を養える生活給が支払われました。女性は専業主婦が一般的で、妻が働く場合はあくまで小遣い稼ぎのパート労働として低賃金が支払われました。そして、男性たちは長時間労働、家庭不在が定着します。一方、3つの傘に入れない少数の人たちがいました。母子家庭と日雇いの人たちで、働いても働いても貧しいままでした。

 このような状況が大きく変化するのがバブル崩壊の1990年代。政府は減税政策と公共事業で現状維持を図りますが、多額の借金を抱えました。そして、小泉政権時にさまざまな分野で民営化が進みます。また、仕事に就けない若者たちが増え、もはや多くの人たちが3つの傘で守られなくなりました。

 湯浅さんがホームレス支援活動に関わるようになった1995年当時、渋谷区には約100名のホームレスの人たちがいました。しかし、1995年〜1999年で6倍に増え、日本社会の底が抜けたと湯浅さん。2000年頃からホームレスは社会問題化し、湯浅さんたちは、食べものを供給するためにフードバンク活動や保証人を提供する活動などに取り組みます。「戦後は終わった、もはや貧困問題はなくなった」と1966年から貧困問題の調査を中止していた政府は、2009年10月20日、貧困問題の存在を認めました。

SDGsの実現を目ざす

 2008年のリーマンショックを機に新自由主義が世界を席巻。一方で、SDGs(持続可能な社会の実現)への模索も始まっています。「持続可能な発展は誰一人取り残さない世界の実現によって可能になる」とのSDGsの理念のもと、国連は2030年までに達成すべき17の目標を定め、180ヵ国・地域が合意。「1つの現象からは好ましいものと好ましくないもの、光と影が同時に生まれたりしますが、私たちはできる限り好ましいものを伸ばしていく主体でありたいですね。私は社会の責任の一端を担う者として、SDGsの実現を目ざしたいと思っています」と湯浅さんは話しました。

会場には子ども食堂などのブースが並びました。コープ自然派兵庫も出展し、アップルキャロットなどを販売。

Table Vol.409(2020年2月)

昨年の様子はこちらから

いのちとくらしの映画祭with湯浅誠