巧みな日本語でユーモアたっぷりに厳しい現状を話すアーサー・ビナードさん。

2019年9月21日(土)、「アーサー・ビナード講演会 with みんなのデータサイト『ちっちゃいこえ』があつまって」(さよなら原発神戸アクション主催・コープ自然派兵庫賛同)が開催され、私たちは「被ばくの時代」を生きていることを確認しました。

内部被ばくの恐ろしさ

 2019年9月19日、東京地裁は東京電力旧経営陣3名の刑事責任を問う裁判で、いずれも無罪の判決を下しました。直後に開催されたこの会は満席。第1部は、アメリカ生まれの詩人、アーサー・ビナードさんの紙芝居「ちっちゃいこえ」朗読から始まりました。「ちっちゃいこえ」は丸木俊・位里夫妻が1950年から約30年かけて描いた「原爆の図」をもとにした紙芝居です。私たちは新しい細胞が次々とつくられて生きています。8月6日朝、広島に原爆が投下され、黒猫「クロ」の家族だった人たちは死んでしまいました。「クロ」は生き残りましたが、しだいに細胞が壊されていき、エサが食べられなくなり、そして、「ちっちゃいこえ」は消えてしまいました。ビナードさんは内部被ばくの怖さを「細胞」を主役に、黒猫「クロ」を語り部として表現しました。

 ビナードさんは、「鼻唄三丁矢筈斬り(はなうたさんちょうやはずぎり)」という落語に出てくる言葉を内部被ばくに当てはめました。「侍の斬り方があまりに見事なので鼻歌交じりに三丁歩いて初めて斬られたことを知った」というこの言葉は、すぐには事態の深刻さがわからない内部被ばくと同じではないかと。そして、広島・長崎の原爆だけでなく、長崎に原爆が投下されたわずか11カ月後にビキニ環礁で核実験が行われ、その後、アメリカやソ連の核実験で多くの人たちが被ばくしています。「ぼくらは被ばくさせられている。ぼくらの未来が奪われている。そんななかで生きていかなければならない。そして、子どもたちに何を手渡すのかみんなで探っていかなければならない」とビナードさんは話します。

市民の力があつまって

 第2部は、全国の市民放射能測定室のデータを検索できるサイト「みんなのデータサイト」スタッフのお話。その1人・中村菜保子さんは土壌汚染の状況がよくわかる「放射能測定マップ」を紹介、簡易英語版「放射能測定マップ」は2020年の東京オリンピック開催を前に海外の人たちに日本の現状を伝えるために制作したということです。

 もう1人のスタッフで市民放射能測定センター運営委員でもある大沼淳一さんは汚染土壌の現状と今後について話します。2011年8月、政府は原発事故で外に出てしまった放射性物質については、8000Bq/kg以下なら放射性物質とみなさないとしました。それは「当面の考え方」とされていましたが、その2ヵ月後に議員立法で「放射性物質汚染対処特措法」として法制化されました。今、放射能汚染水の海洋排出が問題となっていますが、大沼さんはすべての汚染物は帰還困難区域に設置する堅固な保管施設に全量投入して集中管理すべきだと言います。

 続いて、「さよなら原発神戸アクション」共同代表・小橋かおるさんは放射能汚染を防ぐためには市長や市議会に働きかけ、行政レベルで取り組むことが大切だと訴えました。会場との意見交換では、福島原発の放射能汚染水を大阪湾に流すという意思を松井・大阪市長が表明したことへの不安が語られ、具体的な抗議行動が提起されました。

Table Vol.403(2019年11月)