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食と農と環境

「種子法」廃止とこれからの日本の農業について

講師の山田正彦さん。大学卒業後、牧場経営や肉屋を経て弁護士に。1993年に衆議院議員初当選し5期務める。2010年には菅内閣のもとで農林水産大臣に就任。2015年1月「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」設立。2017年7月「日本の種子(たね)を守る会」設立。

2019年1月18日(金)、第4回コープ自然派生産者&消費者討論会を開催(コープ自然派&コープ有機共催)し、山田正彦さん(弁護士・元農林水産大臣)に基調講演を行っていただきました。

TPP協定に伴う法改正

第一部の司会は、コープ自然派京都・坂本理事長

2016年3月、日本はTPP協定を批准、これに伴う国内法の整備が行われています。主要農産物種子法廃止、農業競争力強化支援法制定、水道法改定(民営化)、カルタヘナ法改定、市場法改定(事実上廃止)、漁業法改定などがそうです。背景にあるのは、2016年、日本がTPP協定に署名する際に交した日米交換文書。この文書の最後には、「日本政府は投資家の要望を聞いて、各省庁に検討させ必要なものは規制改革会議に付託し、同規制改革会議の提言に従う」と記載されています。

このような状況について、「すべて規制改革会議の提言に従って閣議決定し採決するということで、もはや日本は独立国家とは言えない」と山田さん。例えば、現在までほとんど報道されていない「漁業法改定」とは、これまで地域の漁業協同組合や漁業者が持っていた漁業権を多国籍企業などに開放し、すべて入札制度にするというもの。また、200海里水域の権利についてもTPP協定で留保しなかったため、200海里内にもいずれ海外の大型漁船が入ってくるようになり、日本の漁業は成り立たなくなるのではないかと山田さんは懸念しています。

「種子法」廃止でどうなる?

「主要農産物種子法」(以下「種子法」)は2017年2月10日に閣議決定された廃止法案が国会に提出されました。「種子法」とは、主要農産物であるコメ、麦、大豆の種子は国が管理し、各都道府県に原種・原原種の維持、優良品種の選定および奨励、審査を義務付けた法律。コメの種子については各地の農業試験場で雑種の混入や不良な種を取り除いた後、種苗農家に増殖させ、優良な品種を公共品種として安価で提供してきました。そして、コメだけでも300種以上を安定的に提供できたのですが、「種子法」廃止と一体となった「農業競争力強化支援法」が2018年8月に成立し、「銘柄を集約する」とあるので数種に絞られる怖れがあります。現在、三井化学「みつひかり」、住友化学「つくばSD」、日本モンサント「とねのめぐみ」は公共品種の4~10倍の価格で販売、「みつひかり」はF1品種なので自家栽培できず、毎年種子を購入しなければなりません。さらに、農家は民間会社と直接契約して、肥料・農薬などの資材の購入が義務付けられ、収穫したコメも他に出荷できなくなることが懸念されます。

30~40年前、日本の野菜の種子は国産100%で伝統的な固定種でした。しかし、F1の種子になり、いまや日本の野菜の種子の90%は海外産。現在、世界の種子市場の約80%はモンサントを買収したバイエルやデュポン・パイオニア、シンジェンタなど上位8社が占有しています。

また、「農業競争力強化支援法」8条4項では、これまで日本が蓄積していたコメなどの原種・原原種、優良品種の知見をすべて民間に提供することが記載されています。「各都道府県だけでなく農水省の知見の集積もすべて民間に提供するということが法律によって義務付けられたのです。いずれコメ農家も日本の原種なのに、外資にロイヤリティを支払うことになるでしょう」と山田さん。さらに、農水省次官が通知を出しました。その内容は、「民間事業者によるコメ、麦類および大豆の種子生産への参入がすすむまでの間、種子の増殖に必要な栽培技術などにかかわる知見を維持し、民間事業者に対して提供する役割を担う」というものです。

日本の食と農が危機に!

これまでは「種子法」によって主要農産物の種子は自給できましたが、世界の種子を支配しようとしている多国籍企業は日本のコメ市場を見逃すはずがありません。1999年、モンサントは日本のコシヒカリで除草剤ラウンドアップ(有効成分グリホサート)耐性遺伝子組み換え種子を開発し、茨城県の同社実験圃場で試験栽培を始めています。また、2001年には愛知県農業試験場と共同研究を始め、「祭り晴」での遺伝子組み換えコメの栽培に成功、水に弱いグリホサートの難点を克服しました。日本政府はすでに70の行政法人農研機構に遺伝子組み換えコメの種子の一般圃場での栽培を認め、作付けの申請があれば承認する手はずを整えています。

2017年12月、日本政府はドイツやフランス、イタリアなどでは使用禁止もしくは3年以内に使用禁止となっているグリホサートの残留許容量を大幅緩和(最大400倍)、コメ・麦は6倍、そばは150倍、てんさいは75倍に緩和しました。

さらに、ゲノム編集による種子は遺伝子組み換え技術に該当しないとの環境省の見解で来年から生産が始まり、流通する可能性があります。「コメは自家受粉といっても、これが栽培されると花粉が1.5㎞先まで飛散し、有機栽培できなくなる怖れがあります。何としてもやめさせなければなりません。世界の流れに反して日本は遺伝子組み換え農産物の承認大国になっています」と山田さんは語気を強めます。

そして、TPP協定では日本独自の遺伝子組み換え表示ができなくなります。これまで5%以下の混入については「遺伝子組み換えでない」という表示が認められていましたが、これから0%でなければ表示できなくなるのです。また、牛肉、豚肉、鶏肉の飼料に遺伝子組み換えのものがわずかでも混入していれば、「エサにも遺伝子組み換えの飼料は使ってない」という表示ができなくなります。

2018年8月、モンサントの除草剤ラウンドアップが原因で悪性リンパ腫を発症したと訴えていた米国の末期がん男性に対して、サンフランシスコの裁判所は訴えを認めモンサントに約330億円の支払いを命じました。この男性は校庭整備の仕事をしていてラウンドアップを繰り返し使っていたとのこと。この情報は世界各国で大きく報道されましたが、日本では報道されていません。米国ではグリホサートに関わる裁判が次々と起き、バイエルは約4兆円の賠償金を免れないだろうと言われています。ヨーロッパでは、グリホサートの使用を禁止する流れが大きくなっています。そんななか、日本はグリホサートの規制基準を大幅に引き下げ、国産大豆の乾燥の手間を減らすため、収穫前にラウンドアップを大豆に散布しているという実例もあり、ラウンドアップが100円ショップで売られているという現状です。

私たちにできることは?

突然の「種子法」廃止に対してJAや農家が不安の声を上げるなか、大阪府、和歌山県、奈良県などは「種子法」廃止の方針に沿って優良なコメの認証制度をすべてではありませんが、廃止しました。

しかし一方で、各地からさまざまな動きが起きていることを山田さんは紹介します。「種子法」に代わる種子条例を新潟県、兵庫県、埼玉県、山形県、富山県が制定。岐阜県、宮崎県、北海道、長野県は近く条例を制定し、栃木県、岩手県なども準備しています。

山田さんたちは2015年1月、「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」を結成し、現在、最高裁に上告中、同時に「種子法」廃止違憲訴訟をスタートするため原告および賛同者を呼びかけています。

全国各地から160名が集合、基調講演後にはパネルディスカッションや交流会が行われました。

参考:『 タネはどうなる?!~種子法廃止と種苗法運用で』(山田正彦著 CYZO)

Table Vol.387(2019年3月)

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