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くらしと社会

憲法は戦争の反省から生まれた未完のプロジェクト

歴史を知ることで、私たちの平和や権利を守る憲法の意味が見えてきます。2025年10月22日、コープ自然派兵庫(ビジョン平和)は愛知県立大学教授の久保田貢さんを招き、戦争と憲法について考える講演会を行いました。

愛知県立大学教育福祉学部教授 久保田貢さん 
趣味は碑めぐり

戦争がもたらした国内外の犠牲

 80年前、私たちの身近な町や家族も戦争の影響を受けました。戦争は命が軽んじられた歴史といえます。日本は日清・日露戦争のあと台湾や朝鮮半島を植民地化し、1932年には中国東北部を占領して満州国をつくりました。その後、日本軍による侵略は太平洋戦争へと向かい、アジア・太平洋戦争での死者は日本310万人、インドネシア
400万人、中国1000万人など国内外に多くの犠牲を生みました。また、連行された朝鮮・中国人や捕虜も過酷な環境下で重労働を強いられたのです。こうした歴史を忘れないため、各地に記念碑が建てられています。

いのちの選別

 戦時下の学童疎開は、将来の兵士や兵士を生む女性を確保する政策でした。そこでは命に優先順位がつけられ、障碍のある子どもたちは疎開の対象とされませんでした。沖縄では日本軍が住民に集団自決を強い、長野県松代では本土決戦に備えて天皇を守る地下壕が建設されました。「戦争は国民の命でさえ選別して進められていたことが分かります」と久保田さんは話します。

憲法は「再発防止装置」

 戦争を二度と繰り返さないという深い決意が日本国憲法には示されています。多くの命が国家や天皇のために失われた経験から、何よりも国民の自由と権利を守ることを重視しています。第十一条では、「基本的人権」を永久に保障し、第十三条では生命、自由、幸福追求の権利が尊重されると明記。第九条は「戦争放棄」を宣言し、国家が再び侵略戦争を行わないことを誓った世界でも稀有な条文です。
 久保田さんは、映画「火垂るの墓」の監督・高畑勲さんの言葉を紹介します。「あの戦争を知る者ならわかる。戦争が始まる前、つまり〝今〟が大事です。始まってしまえば流されてしまう。だから小さな歯止めではなく、絶対的な歯止めが必要であり、それが九条です」と。「戦争を許さない仕組みを憲法に組み込んだ理由がここに凝縮されています」と久保田さん。

憲法は未完のプロジェクト

 憲法は国家権力を制限し、国民一人ひとりの権利や自由を守るものです。日本国憲法には人の生きる権利を国が支える「社会権」や、国民の自由を保障する「自由権」を定め、戦前の貧困や抑圧を繰り返さないために「生存権」「教育を受ける権利」、公務員による拷問の禁止などが盛り込まれています。久保田さんは「憲法は歴史の反省から生まれました。でも、権利は書かれているだけでは実現しません。憲法は育てていくべき『未完のプロジェクト』です」と話します。
 戦後80年、人々の声や運動が憲法の理念を少しずつ現実のものにしていきました。かつて、医師法施行規則では「視覚・聴覚・言語に障碍がある人は医師免許を与えない」とされていましたが、2001年の改正で撤廃され、障碍のある人も個別に判断されて医師免許が取得できるようになりました。九条を守る動きから米軍基地問題に取り組む地域の広がりも生まれています。
 久保田さんは最後に、憲法前文の一節「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」を紹介し、「だからこそ、私たちは憲法を学び続ける必要があるのです」と語りました。

Table Vol.521(2026年1月)

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