2024年11月13日、コープ自然派奈良(理事会)は愛知県豊川市にある「漬物本舗道長」の石川豊久さんを招いて、ぬか漬けの基本や20年継続している遺伝子組み換えナタネ自生調査の話を聞きました。
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自宅でぬか漬けをつくろう!
「お米は世界で一番おいしい主食です。漬物やおかずは、ごはんをおいしく食べるための添え物ではないでしょうか」と石川さん。漬物のなかでも、ぬか漬けは素晴らしい発酵食品です。道長では手軽にぬか漬けづくりを楽しめるように、「つけ太郎ぬか」をつくりました。無農薬または省農薬のお米のぬかと、三河みりん、白たまりなどの調味料を合わせた、思い立ったらすぐに使えるぬか床です。季節のいろんな野菜に塩をまぶしてすり込み「つけ太郎ぬか」に入れると、野菜から出る水分で発酵が始まります。夏はナス、冬はカブを漬けると間違いなくおいしいぬか床になるそうです。さらに、もうひとつ。とにかく色んな野菜を漬けること。これが、おいしいぬか床の秘訣です。漬け時間は、カットした野菜は10時間ほど、ナスや根菜類は12~24時間ほどです。
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ぬか床は手入れが大変?!
「ぬか床をダメにした経験のある方、多いのではないでしょうか?」と石川さん。「混ぜるのは3日おきでも、1週間に一度でも、定期的に様子を見れば大丈夫!気温の上がらないところで保管してくださいね」と話します。ぬか床には乳酸菌と酵母菌が棲んでいます。乳酸菌は空気が大嫌いで、酵母菌は空気が大好き。混ぜることでバランスよく菌が活発になります。酸味が苦手なら、頻繁にかき混ぜれば酵母菌が元気になって、甘みの多い味になります。また、何度か野菜を漬けるとぬか床が水っぽくなりますが、新しいぬかを足すと再び良い発酵が起こります。ぬかの足し方は、ぬか床をザルに移して2時間程度水切りした後、ぬかを足して耳たぶくらいの硬さに調節します。塩分の濃さは海水をイメージして、毎回ぬか床の味を確かめてください。わずかな水分なら乾燥野菜や干し大根をガーゼにくるんで漬け込むと、水分を吸収し、さらに乾物のエキスが出て、とてもおいしいぬか漬けとぬか床ができます。長期間ぬかを触れないときは冷凍し、自然解凍すれば再開できます。
目から鱗が落ちるほどおいしい料理
ぬか床が増えすぎたら料理に利用できます。石川さんは、「玄米の代わりにぬか床を食べてください」とレシピを紹介しました。魚や肉を2日間ほどぬか漬けにし、ぬかを付けたまま焼くと香ばしい風味が楽しめます。スルメのぬか漬けをグリルで焼くと酒の肴にピッタリです。石川さんのイチオシは和風ハンバーグ。ひき肉の1/ 3程度の「つけ太郎ぬか」を加え、玉ねぎの代わりにネギを使ってよく練ります。「焼きあがったら大根おろし醤油で召し上がってください。ぬかが入っているとは思えないほど馴染んでおいしいですよ」とすすめます。魚・肉を漬けるときには、野菜用ぬか床とは別容器で漬けてください。
漬物屋の市民運動
石川さんは漬物屋でありながら、「遺伝子操作食品を考える中部の会」に所属し、遺伝子組み換え(以下GM)汚染を防ぐ活動を続けてきました。きっかけは1996年、愛知県農業総合試験場とモンサントによるGMイネ研究への反対運動でした。この運動は全国的に注目され、58万筆の署名を集めた結果、2002年に研究中止が決定しました。その後のGMナタネ自生調査では汚染拡大を食い止めるために、製油会社に対して輸送トラックからナタネがこぼれ落ちない施策や、一緒に駆除活動を行うなどの改善要求を提出。製油会社は逐次対策を実行し、中部の会と良い関係性を保ちながら汚染対策に取り組んでいます。石川さんは「生活の基本は食と農。顔の見える関係が食の安全を守ります。食べものは正直でないといけない。食を守る運動が子や孫への贈り物になるように取り組んでいます」と話しました。
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※日消連の「自分たちが食べるものは自分たちで決める」写真投稿アクション
Table Vol.510(2025年2月)