Table(タブル)はコープ自然派の情報メディアです。

くらしと社会

プラスチックと有害化学物質

有害化学物質から子どもを守るネットワーク(子どもケミネット)が設立されて1年。2024年4月22日に総会記念講演会が開催され、子どもケミネット世話人の3名が、子どもたちを取り巻く有害化学物質について警鐘を鳴らしました。

プラスチックの総量規制を

 プラスチックの海洋汚染が問題になっています。木村- 黒田純子さんは、「浜辺に打ち上げられたプラスチックゴミや、プラスチックの網が絡まったアザラシやウミガメの写真を見たことがある人も多いと思います。しかしいま、さらに深刻なのは目に見えないマイクロプラスチックによる汚染です」と話します。

 プラスチックの原料や添加剤には内分泌かく乱物質(環境ホルモン)などの有害な化学物質が含まれています。マイクロプラスチックは呼吸や飲食物を介して生物の体内に取り込まれ、人体にも影響を与えることになります。

 プラスチックから確認または検出されている化学物質は1万3000種類以上にのぼります。そのうち3200種類以上は潜在的な懸念があるとされ、約6000種類は有害性の有無の分析すらされていません。プラスチックには添加剤の表示義務がないので、何が含まれているのか分からないことも大きな問題点です。

 プラスチックは、製造、使用、廃棄、リサイクル、すべての過程で有害化学物質が溶け出し、大気、水系、土壌を汚染する可能性があります。リサイクルだけでは有害化学物質の問題は解決されません。まずは大量に使いすぎているプラスチックを減らすこと、そして、有害化学物質規制を実現することが重要です。「今年11月に国連で制定予定の国際プラスチック条約に向けて、国内からも機運を高めていきましょう」と木村- 黒田純子さんは呼びかけました。

木村- 黒田純子さん(環境脳神経科学情報センター副代表、JEPA※理事)※JEPA:NPO 法人ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議

プラスチックから溶け出す有害化学物質

 水野玲子さんからは、プラスチック容器・包装から溶け出す有害化学物質の具体例が紹介されました。

 プラスチック容器・包装に含まれる有害化学物質は、高温、接触時間が長い、脂肪分の多い食品、酸性食品などの条件下で食品に移行しやすいことが分かっています。即席カップ麺の発泡ポリスチレン容器、コンビニ弁当のポリスチレンやポリプロピレンの容器などは、熱湯を注いだりレンジで温めるので注意が必要です。2022年、環境省が行ったエコチル調査 (対象: 妊婦9万4062人)では、市販弁当や冷凍食品を週に1〜2回食べる妊婦は食べない人に比べて死産率が2倍という調査結果もあります。

 ペットボトルについては、未使用のペットボトルよりリサイクルペットボトルのほうがより有害化学物質を溶出しやすいという研究があり、リサイクルの新たな問題提起となっています。

 また、柔軟剤などに含まれる香りのマイクロカプセルは、ナノサイズのマイクロプラスチックを大気中に放出し、それを毎日吸い込むことになります。「せめて日用品にはマイクロカプセルを使わないように規制しないと大変なことになります」と水野さんは強い危機感を訴えました。

水野玲子さん(JEPA 理事)

消しゴムや感熱紙からも

 2021年、国際NGOの呼びかけで、消しゴムに含まれるフタル酸エステル類と感熱紙に含まれるビスフェノール類について、アジア9か国が参加して調査が行われました。その結果について、中地重晴さんから報告がありました。

 消しゴム調査では、日本の39商品中26からフタル酸エステル類を検出、感熱紙(レシートなど)調査では、同じく35例中27 からビスフェノール類を検出し、日本の内分泌かく乱物質対策は不十分であることが再確認されました。

 日本では、化学物質は「化学物質審査規制法」によって規制され、有害な物質は製造や使用が禁止される仕組みになっていますが、内分泌かく乱物質はスクリーニング評価の対象になっていないなど規制は不十分です。「有害化学物質から子どもを守るために調査を積み重ねるとともに、新たな法律の制定も含め働きかけていきたい」と中地さんは締めくくりました。

中地重晴さん(熊本学園大学教授、有害化学物質削減ネットワーク理事長、JEPA 理事)

Table Vol.503(2024年7月)

アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
MONTHLY
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3

アーカイブ

関連記事

PAGE TOP