1800ml(1升)のお酒をつくるのに酒米を1㎏使用。商品名の「来樂」は孔子の論語「朋あり遠方より来るまた楽しからずや」に由来しています。

ハイネリーに続いて、純米酒「来樂」でおなじみの茨木酒造(明石市)を訪ねました。茨木酒造は婦木農場が生産する特別栽培米「兵庫北錦」を使用したコープ自然派向けの純米酒を製造。9代目・茨木幹人さんに170年前から続く酒蔵を案内してもらいました。

酒米から始まる酒づくり

 茨木酒造がある明石市は新鮮な魚と清らかな水が豊富な地域で、古くから良質な酒が生産されてきました。酒造好適米といわれる「山田錦」は明石市で誕生した酒米で、最盛期には茨木酒造前の街道沿いに約70軒の酒蔵が並んでいたということです(現在は6軒のみ)。

 「来樂 婦木農場 純米生原酒」は婦木農場(丹波)の酒米「兵庫北錦」を使用したコープ自然派向けにつくられている商品です。婦木農場は米づくりのほか野菜栽培、酪農、養鶏なども行い、牛糞を使った堆肥による土づくりも行っています。「無農薬・自然農法で栽培された婦木農場のお米はとても美しくほれぼれします。酒づくりに使用するのがもったいないほどです」と茨木さん。また、酒蔵の前の田んぼでは酒米「五百万石」を育てています。「酒米について勉強したいと思い酒米栽培を始めました。米農家さんと対等に付き合うためにも酒米の知識は不可欠です。メンバーを募り、手作業で田植えから稲刈りまで米づくりを楽しんでいます」と茨木さんは話します。茨木酒造では兵庫県産酒米のみを使用し、酒の味が大きく変わらないよう、田んぼの水系にもこだわっているということです。

 兵庫県登録有形文化財に指定された酒蔵は東西に長く南北に短い長方形で、南側は分厚い土壁で太陽熱を防ぐ構造。夏は2階建ての南側から熱い空気が上がり、北から冷たい空気が入るようになっています。「理想的な構造の酒蔵は風がとどまることなく、カビを抑制します。創業時から棲みつく菌や微生物にとって快適な環境です」と茨木さん。今夏、屋根の吹き替えを予定しているということです。

 茨木酒造では洗米や醸造、ビン詰めなど製造から販売まで茨木さんが行っています。また、洗米から醸造まですべて手作業で行い、2重構造の発酵タンクは周囲に冷水を流して温度管理しています。

「水がその地域の酒の特徴をつくります。明石は魚介がおいしい地域なので、酒の味も魚介類によく合いますよ」と茨木酒造9代目・茨木幹人さん。

蔵の中に入るとケーキ屋さんのような甘い香りがします。

個性を引き出す花酵母

 日本酒は米と米麹、水を酵母の働きで発酵させる醸造酒です。元来、各酒蔵に棲みつく酵母を利用して行う生酛造りと呼ばれる製法で行われていましたが、手間と時間がかかるため、日本醸造協会が提供する「きょうかい酵母」が多数の酒蔵で使われています。味、香りなど品質が保てる反面、均一的な味になるという欠点もあるため、茨木酒造では東京農業大学が発見した花から培養した天然酵母を使い始めました。花酵母は味に個性を出しやすい、香りや風味が良い、発酵力が強いなどの特徴をもち、茨木酒造では日々草や月下美人、アベリアなどの酵母を使用しています。

 見学後は販売&休憩スペースで「来樂 婦木農場 純米生原酒」と「来樂 花乃蔵 純米生原酒」を試飲。「来樂 花乃蔵 純米生原酒」はアベリアの花酵母を使用した甘い香りと果実酒のような旨みが特徴です。どちらも加熱殺菌していない生原酒で、液体窒素を利用したビン詰め方法で酸化を防ぎ、つくりたてのフレッシュな味わいが保たれたまま届けられます。

蔵の横にはビン詰め工場跡を利用してつくられた販売&休憩スペースがあり、地域の人たちの憩いの場にもなっています。

Table Vol.367(2018年5月)