2023年5月10日、自然の住まい協議会はオークヴィレッジ学習会を開催。100年使えるモノ造りについて、清川二郎さんに聞きました。
100年使えるモノ造り
オークヴィレッジは、岐阜県高山市で1974年に設立され、もうすぐ創業50年を迎えます。「100年かかって育った木は100年使えるものに」「お椀から建物まで」「子ども一人、ドングリ一粒」という三つの理念には、木という素材を使って循環型社会をつくりたいという創業者の思いが込められています。
100年かかって育った木を、100年かけて大事に使うためには、素材、技術、デザインの三つが大切になります。例えば、まな板には固すぎず柔らかすぎず水に強い木を使うというように、樹種によって異なる性質に合わせて、素材を適材適所で使うこと。金属を使わず木と木だけで組み合わせる「木組み」の技術を取り入れること。また、木を余すことなく使うために、建物から小さなものまで製品を開発したり、自分たちが使った分、新たに木を育てる活動を行ったりもしています。
折りたたみサイドテーブルは、マグネット以外の金属は使わずに、折りたたんだり高さを変えたりできるテーブルです。使わないときはコンパクトに収納しておくことができます。
カラフルな木琴「森の合唱団」は、塗装をしていません。塗装をしないと音階が多少ずれるのですが、小さな子どもの安心安全と、素材そのものの色を感じてもらうことを優先しました。木は山にあるときから色が違います。だから材料になっても色が違うということに、大きくなったときに気づいてくれたらいいなという思いが込められています。
漆塗りの碗には、塗り直し券が同封されています。漆を塗りなおすことで、より長く使うことができます。
東京の明治神宮には設計から施工までを担ったカフェ「杜のテラス」があり、オークヴィレッジの建築を体感できる貴重な場所になっています。
100年続く森づくり
木製品を作って木材の「出口」をつくる会社として、林業会社や製材会社などと連携した地域活性化の取り組みにも参画しています。スギやヒノキといった単一の素材ではなく、山に生えるいろいろな木を使って製品を作ろうとしたとき、難しかったのは、さまざまな素材に対応できる乾燥や製材の技術でした。三者がそれぞれノウハウを蓄えることで、これまでチップやブナシメジの菌床としてしか使われていなかったブナの木や、炭焼きやしいたけのほだ木に使うしかなかったコナラの木を使った製品を開発することができました。
いま、若い人たちは、本当に欲しいものを高くても買う、そして大切に使うという価値観を持っています。オークヴィレッジの新入社員も、そういうモノ造りをしている会社であることに惹かれて入社するケースが多いそうです。木製品はどこまでいっても山に生える木がスタート。木に早く育てというわけにはいきませんし、原木をそぎ落としていくことによってしかモノを造ることができません。だからこそ、価格競争ではなく、木が持っている価値を伝えるような仕事をしたいと清川さんは話しました。
Table Vol.491(2023年7月)より
一部修正・加筆