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くらしと社会

【組合員紹介】男女共同参画の視点で防災計画を

近年、自然災害が頻発していますが、私たちの備えは万全でしょうか。コープ自然派おおさか・坂本真理さんは、防災の専門家として男女共同参画の視点を重視した防災計画を追求しています。

防災士・社会福祉士の坂本真理さんは豊中市内のオフィス「プラスワン防災」を拠点に活動。絵本『こんなときどうする!?』(2016年発行)も出版しています。2人の子をもつシングルマザー。

子どもの「安全」を懸念

―― 「防災」に関心をもたれたのはどのようなきっかけですか。
坂本 今、18歳の上の息子が小学校に入学したとき、それまでは保育園など大人の目の届くところにいたのに子どもだけで過ごす時間が増え、安全面について不安になりました。

―― 学校では「安全」や「防災」については特に教えていないですよね。
坂本 交通安全については自転車教習が行われていますが、自然災害などに対する防災教育は一般的には行われていませんでした。そこで、大地震が予想されていることもあり、学校での防災教育の在り方について研究を始めました。2010年に防災士の資格を取得し、同年、関西大学大学院社会安全研究科に入学しました。

防災教育を研究・実践

―― 大学院ではどんな研究をされたのですか。
坂本 学校の教育課程に防災教育をどのように組み入れるかということを研究しました。研究室では一期生だったので研究の先輩がいなくて書物や論文を読み込む日々でした。途中で下の息子を出産しましたが、がんばって研究を続けました。

―― 大学院卒業後はどのような活動をされたのですか。
坂本 2012年から2018年までは大阪府の学校防災アドバイザーとしてさまざまな学校で安全計画や防災計画、避難訓練の指導・助言などを行いました。学校での避難訓練時に市役所と学校、消防所が連携して無線の通信訓練を行い、地域の人たちは避難所の開設訓練を同時に行うような積極的な学校もありました。一方で、義務化されている火災時の避難訓練だけ行う学校もありました。

「防災」を普段の暮らしに

―― 2018年には大阪北部地震に見舞われましたね。
坂本 大阪北部地震で気づかされたことがあります。これまでは災害が起きれば避難所へ行くという発想でしたが、避難された方は1人でいるのが怖いからというケースが大半で、避難所のあり方を見直す契機になりました。

―― 在宅避難の場合、どんな用意をしたら良いのでしょうか。
坂本 1週間分の水や食料の備蓄は必要ですが、それぞれ必要なものは異なります。例えば、台風の場合、トイレはバケツなどで水を流せば良いのですが、地震の場合は集合住宅だと建物内の下水管が破損していることがあります。そうなると水を流すと階下で水が溢れ、在宅避難ができなくなるかもしれません。ですから、トイレ用凝固剤の用意が必要です。基本的には日頃から災害に備えるという意識が大切で、バッグの中身の見直しも大切、キーワードは「防災を普段の暮らしに」「防災にトキメキを」です。   

男女共同参画の防災計画

―― 学習会の講師も務められていますね。
坂本 男女共同参画の視点を重視した防災の在り方についてお話ししています。最大の課題は避難所での性的被害です。表沙汰にされないですが、避難所では必ずと言っていいほど性的被害が発生しています。「非常時なのだから仕方ない」で済ませるわけにはいきません。

―― 課題解決にはどのようなことが求められますか。
坂本 日本は世界的にみて男女共同参画が遅れていて、それが顕著に表れているのが防災の分野です。そこに「我慢は美徳」という風潮がプラスされ、人権侵害とも言えるような避難所の実態のままです。男女共同参画の視点が防災に必要だとここ10年くらいお話しさせていただいていますが、なかなか変わりません。それは防災計画を立てる分野に女性が参画していないことが大きな要因です。草の根的な活動は大切ですが、本気で変えようと思えば中枢に入っていかなければならないと考えています。こんなにも災害が多い国なのですから、防災計画の充実は喫緊の課題です。

Table Vol.459(2022年3月)より
一部修正・加筆

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