2021年3月19日(金)、第15回GMOフリーゾーン全国交流集会が大津市民会館とオンラインで開催され、会場88名・オンライン230名が参加。
天笠啓祐さん(遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン)の基調講演のあと、地元の有機農業生産者による報告などが行われました。
滋賀発フリーゾーン運動
GMOフリーゾーン運動は、遺伝子組み換え(以下、GM)作物を栽培しない、栽培させない地域を広げる世界的な運動です。1999年、スローフード発祥地イタリア・トスカーナ地方のワイン農家によって始まりました。日本では2005年、滋賀県の米農家が看板を立ててGMOフリーゾーン宣言をしたのが始まりです。2006年、滋賀県で第1回GMOフリーゾーン全国交流集会を開催。活動団体が集まり、農地、牧場、山林のフリーゾーン登録状況や活動報告のほか、有識者からの最新情報発表、懇親会、農場見学ツアーなどが毎年行われています。
第15回集会はコープ自然派おおさか・上野理事長の司会でスタート。コープ自然派京都をはじめ、地域で有機農業に取り組む生産者や加工会社などで実行委員会を立ち上げ、新型コロナウイルス感染症の影響による昨年の開催中止を経て準備してきました。開会あいさつに立った実行委員長・石津大輔さん(針江のんきぃふぁーむ)は、滋賀県での2回目の開催実現に感謝の気持ちを述べ、「分断を生む形ではなく、しっかりした知識に基づいてGM・ゲノム編集に反対していきます」と話しました。
滋賀で輝く多様な農の形
滋賀県は琵琶湖の水を守る環境保全活動とともに有機農業が盛んな地域。「滋賀で輝く!多様な農のかたちとこれから」と題して、地域の生産者5名から報告がありました。
トップバッターは実行委員長・石津さんの「針江のんきぃふぁーむ」。有機米をはじめ、古代米や地大豆など在来種の栽培、それらを使用した餅やアラレなどの加工品を製造し、2020年は旅館業にも進出しています。針江地区は「生水(しょうず)の郷」と呼ばれる湧き水が豊富な地域で、600年以上前から集落を巡る水路を利用し住民の生活用水としてきた文化「川端(かばた)」を紹介しました。
続いて、自然栽培・無農薬有機栽培の米をオンライン通販する野洲市「中道農園」。園長の中道唯幸さんは農薬が原因で体調を崩したことをきっかけに有機農業に転換。自然の摂理を学び、尊重し、真摯に農業に取り組むことの大切さを伝えます。また、有機農業技術の発展などにより、オーガニックの手法であっても自然界のバランスを崩してしまう恐れがあり、生きること、農業をすることの意味を考えながら日々の仕事に取り組んでいるということです。
「みなくちファーム」・水口さんは高島市マキノ町で化学肥料・化学合成農薬不使用で露地野菜と原木しいたけ、大豆、ハーブなどを栽培し、現在、有機JAS認証申請中です。2014年、アパレルのオンライン通販業から夫妻で新規就農しました。現在、露地野菜4.5ha、原木しいたけ5000〜7000本、乾燥しいたけや切干大根、味噌、漬け物、ドライハーブなどの加工品を販売。原木しいたけのホダ木を堆肥化して畑に返す循環型農業にも取り組んでいます。また、自然が豊かな地域を次世代に残そうと、荒地を整備してクヌギの植樹を始めました。
「山本農園」(秀明自然農法ネットワーク)・山本嘉紀さんは甲賀市信楽町の自然豊かな山村で育ちました。茶畑に農薬散布した日は母親が体調を崩し、川には生き物が少なかったと、子どもの頃を振り返ります。化学肥料・有機肥料・農薬を一切使用しない秀明自然農法で培われた畑を「天国」と山本さんは形容します。自然農法を始めて22年、現在は30品目以上の農産物を栽培。自然農法を実践することで、世界中の生産者とつながり、素晴らしい仲間たちと出会うことができました。
無添加・オーガニックのベビーフードを製造・販売する「はたけのみかた」・武村幸奈さんは、大学4年生の時に3人の同級生とともに起業しました。有機農業のすばらしさを理解する一方で、技術的な難しさや労力、高コスト、規格外農産物の発生など生産者の苦しい現状があります。また、女性の社会進出とともにベビーフードの需要が増加するなか、市販品の原材料や産地の不透明さ、甘味料・添加物・調味料の多用など、不安を抱える消費者の悩みも多数あります。そこで、規格外の有機農産物をベビーフードに加工することで両者の問題を解決し、市場に左右されず稼げる有機農業の実現を目ざすビジネスモデルを展開。消費者の課題を解決し、農業の価値を高めることを目的とした持続可能な商品を開発しました。(②に続く)
Table Vol.442(2021年6月)より
一部修正・加筆