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くらしと社会

大気汚染・地球温暖化のない未来を

※イメージ

現在、神戸市内では2基の石炭火力発電所が稼働し、さらに2基が稼働予定です。2021年1月18日(月)、コープ自然派兵庫はオンライン学習会「ママが原告になったわけ~石炭火力が招くみらい」を開催。NPO気候ネットワーク・山本元さん、弁護士・杉田峻介さん、神戸石炭訴訟原告・高田寿子さんにお話を聴きました。

温暖化による深刻な被害

 2018年度の国内における自然災害の保険金支払額(大半が台風災害)は過去最高の1.6兆円を記録し、半年間続いたオーストラリアの大規模森林火災(2019年9月)など、台風の巨大化や頻発する森林火災は地球温暖化が一因と言われています。

 気候変動に関する国際条約「パリ協定」では「産業革命前からの平均気温の上昇を2℃未満に抑える(できれば1.5℃)」と目標が定められました。そのためには今世紀末までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目ざす必要があります。昨年、菅首相が所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする」と宣言。しかし、世界中で目標のすべてを実施したとしても1.5℃未満に抑えるのは難しく、さらに3〜5倍の削減努力が必要と分析されています。

温暖化防止活動するNPO法人気候ネットワーク主任研究員・山本元さん。

石炭は最悪の燃料選択

 日本における温室効果ガス排出のほとんどが二酸化炭素で、約9割が化石燃料の燃焼から排出されています。また、部門別で見た場合、二酸化炭素の約4割が発電によるもので、その燃料種として最も多いのが石炭です。

 東電・福島第一原発事故後、規制緩和されて石炭火力発電が50基新設され、17基が建設中です。神戸では神戸製鋼で2基稼働し、その隣で3号機(2021年)と4号機(2022年)が稼働予定。両方合わせると最大1400万トンの二酸化炭素排出量になり、世界の排出量の2500分の1が神戸製鋼の敷地内から排出されるのです。

 石炭火力発電は硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじん、PM2.5といった大気汚染物質の大排出源で、ぜんそくなどの呼吸器系疾患を抱える人たちに影響を与える怖れがあり、最新型でも、大気汚染物質、温室効果ガス、水銀等を排出します。計画地は3km圏内に教育施設や医療施設などが多数あり、住宅地からわずか400mと近接。神戸製鋼から出るPM2.5の拡散予測地図では、芦屋市が最大汚染到達濃度地点となり、大阪、京都、奈良、さらに東へ流れ滋賀県にまで達すると予測されています。

 石炭などから排出される大気汚染が原因となり、世界中で700万人が早期死亡していると言われ、なかでもPM2.5は安全基準未満の濃度でも命に関わる健康被害があります。しかし、日本では石炭火力発電所の建設時にPM2.5の評価・検証がされていません。

 温暖化対策として、二酸化炭素を回収して地中に埋めるCCSという技術が進められていますが、神戸周辺に埋められる土地はなく、北海道苫小牧市で行われている実験では約30万kw(2018年度の日本の総排出量11億3800万トン)しか貯留できず、高コストであるため現実的な解決方法ではありません。

家族を守る神戸石炭訴訟

 「神戸製鋼石炭火力差止訴訟」は、大気汚染物質・二酸化炭素の長期間の排出で生命・身体を害される怖れがあるとして、新設発電所の建設・稼働・稼働指示の差し止めを求めて2018年に提訴。企業(関西電力、神戸製鋼、コベルコパワー神戸第二)と建設を認めた国(経産省)を相手取り、民事と行政の2つの訴訟で争っています。

 関西電力を被告としているのは、神戸製鋼から30年間の長期契約で電気を全量買い取り、実質的に関西電力の発電所として共同で稼働しているに等しいからです。民事差止訴訟は、子どもを含むあらゆる世代の39名が原告となり、環境破壊のない地球を次の世代に引き継ぐための「次世代訴訟」とも言われています。

 行政訴訟では、国には市民の健康・安全を守る義務、石炭火力発電所によって市民に生じる被害を防止する義務があることから、石炭火力発電所の建設を認めた国を訴え、「環境影響評価確定通知の取り消し」と「石炭火力発電所の二酸化炭素排出規制がなされていないことの違法確認」を請求しました。

 高田さんは子ども(現在、小学6年生)のぜんそく発症をきっかけに、石炭火力発電所を止める活動に参加するようになりました。「ぜんそくのつらさは本人にしかわかりません。少しでも原因の可能性があるなら取り除きたい、苦しい思いをする子を1人でも減らしたいと親子で原告になりました」と高田さんは話します。

 「神戸製鋼石炭火力差止訴訟」は応援サポーターを募集しています(問い合わせ先「神戸の石炭火力発電を考える会」kobesekitan@gmail.com)。子どもたちのために大気汚染・地球温暖化のない未来をつくりましょう。

(左)「神戸製鋼石炭火力差止訴訟(民事/行政)」原告弁護団を務める杉田峻介弁護士。 (右)住民原告・高田寿子さんは、証人として法廷に立ち、原告の被害の実情などを証言しています。

Table Vol.439(2021年5月)より
一部修正

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