畠山重篤さんの講演会を前に、森・里・海で行われている持続可能な取り組みについて、リレートークが行われました。
①森林整備で林業を活性化 香美森林組合・森本正延さん
現在、国産のスギ・ヒノキの木材価格は30年前に比べて10分の1まで下落し、林業の担い手不足などから森林が整備されないまま放置された状態です。高知県香美市を拠点とする香美森林組合は、間伐(密集した森林を適度な間隔で伐採して木の生長を促す)事業を主体に森林整備に務め、水源地の保護と地域林業の活性化を担っています。
日本は山の所有者(森林組合の組合員にあたります)が小規模に分散しているため、香美森林組合では複数の森林をまとめて広範囲に森林整備を行う活動に取り組んでいます。境界線を明確化し、作業道を開設、高性能林業機械を導入して高効率化・低コスト化をはかることで、香美森林組合は補助金・助成金収入の確保も含めて所有者への利益還元に努めてきました。そして、間伐を繰り返し保水力の高い森づくりを行い、良質の建築資材を育てています。
② 田んぼの生きもの調査コープ自然派しこく・伊原智恵美さん
コープ自然派の各生協では、地域の田んぼを利用して「田んぼの生きもの調査」を毎年実施しています。2018年度、コープ自然派しこく徳島センターは小松島市の「ツルをよぶお米」の田んぼを借りて、田植えや稲刈り、収穫祭など計5回のイベントを開催。1回目の集まりは子どもたちのどろんこ遊びから始まり、田植えは紐や支柱などを使い1列に並び手作業で行いました。2回目は産卵時期に田んぼに現れるアカハライモリを探索、3回目は田んぼと用水路で生きもの探し、多数の生きものたちに出会って子どもたちは大喜びです。収穫は鎌を使って稲を刈り取り、収穫した稲は昔ながらのハゼ干しにして美しい田園風景を楽しみます。収穫祭では新米の試食と刈り取り後の田んぼで生きもの調査を行いました。「田んぼの生きもの調査」は田んぼの環境が生きものと自然を守っていることを子どもたちに伝える大切な機会になっています。
③ 山の植樹活動に取り組む鳴門魚類・ 山本章博さん
「魚さばき教室」が人気の山本さんは北海道紋別郡雄武町(おうむちょう)での取り組みについて紹介。雄武町は日本最北の高層湿原、国が保護する原生林などがあるピヤシリ山とオホーツク海に挟まれた豊かな漁港があります。強い波と寒さの厳しい地域で、冬は流氷で海が閉ざされるほど。雄武漁港協同組合とは山本さんの父親の代からの付き合いで、帆立貝、鮭、イクラ、毛ガニなどが鳴門魚類を通じてコープ自然派に供給されています。
約15年前から雄武漁業協同組合婦人部を中心に植樹活動が始まり、鳴門魚類をはじめさまざまな企業や団体の協力を得て取り組んでいます。この活動は100年かけて100年前の山・川・海の環境を取り戻すというもので、現在、2万本以上の白樺や楢の木が植林されています。栄養豊富できれいな海からは、良質の帆立貝や天然昆布、その昆布をエサとするエゾバフンウニが獲れるということです。
Table Vol.388(2019年3月)