抗菌、除菌、滅菌、殺菌…、年々パワーアップする嫌菌言葉の氾濫と、それに呼応するかのように発売される薬剤の数々。まな板からテーブルまで、さらにじゅうたん、衣類など生活の隅々まで、そこらじゅうウヨウヨといる菌にスポットを当てて、気持ち悪い感を煽るCMが流される。
特に今冬のインフルエンザ猛威で、さらにウイルス除去にはさまざまな対策が取られた。幼い子どもや高齢者施設、もちろん病院ではマスクとアルコール除菌に使い捨てビニール手袋、使い捨てペーパーは必須で、虫よけベープマットのようなインフルエンザ除去製品や加湿器に入れる除菌液なども登場。年々ヒートアップする。
もちろん、抵抗力の弱い人が集まる場所には必要な対策かもしれないが、普通に生活する中にどんどん入り込む。予防には限りがないし、不安感は限りなく増す。
一方、菌活で腸を元気に!と、食べる方は菌流行り。納豆菌、乳酸菌、麹菌、酵母菌にきのこ菌など身体に優しいものと評価は高く、日本の伝統食が見直され、料理本やテレビ番組は大流行り。腸内環境には善玉菌と悪玉菌と日和見菌と…そう、昔から菌を大事にうまく取り入れてきたことが見直され、排除する一方であくなき追及をする。人は菌と切り離せない生き物なのだ。
先ほどの不安感。「毛虫が背中に落ちてきた!」と言われただけで、痒くなり腫れあがってしまう場合すらあると例えられるこの「不安感」と「恐怖感」。目に見えないものほど余計に、不安あるいは恐怖感は増殖する。人が最も克服しにくい感覚だと聞いたことがある。文化的生活水準が上がり体験が少なくなっていけばいくほど、潔癖症や無菌を求める人は増え自然との共生が困難になってしまう。
自然は菌だらけだ。「ののはなのおうち」の親子クラスでお散歩に行く森に入ると、普段歩かないような触感と空気感、少し奥に行くと薄暗い。いろんな虫や大きな蜘蛛、動物のフンもある。最初怖がっていた子も、1年近く歩くうちに身近な森になってたくましくなった。わが家の子どもたちはこの森に親しんだけれど、地元の小学校PTAが調べた「地域の危険区域」に位置しているのかもしれない。
整備された公園や運動場、舗装された道に立ち、大地から受け取る力を感じるのは難しい。花粉だPM2.5だ紫外線だと、天からのエネルギーを吸い込むのも難犠だ。環境も教育も、自然から切り離されたカプセル状態が進んでゆけば、子どもを育てることは並大抵ではない。子どものこころに触れるもの、そして、大人のこころに触れるものは何か。身近なものが教育と結びつく場としての「おうち」を目ざし、行動出来ればと思う。(ohisama)
「NPO法人みのおシュタイナーこども園友愛会」が今年5月より「NPO法人ののはなのおうち」と改め、代表理事を務める。コープ自然派おおさか組合員。
Table Vol.387(2019年3月)