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くらしと社会

メディアが報道しない現実

7月7日(土)、コープ自然派おおさかは志葉玲さんのパレスチナ・イスラエル取材緊急報告講演会を開催。
志葉さんはイラクなどの紛争地取材や環境、平和、人権などについて幅広く伝えるフリーのジャーナリストです。

フリージャーナリスト・志葉玲さん

米国の安保理決議違反

 今年5月14日、米国は在イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移転。パレスチナ自治区ガザ地区で起きた4万人による抗議デモに対して、イスラエル当局は銃撃などの武力を行使し、58人が死亡、2700人以上が負傷しました。

 エルサレム旧市街はユダヤ教・キリスト教・イスラム教の歴史的遺跡が多く立ち並ぶ3宗教の聖地で、米国大使館の移転はエルサレムをイスラエル(ユダヤ教)の首都とみなすことを意味します。

 今年、建国70年目を迎えるイスラエルは、1948年から1973年の間に起きた4度の中東戦争(イスラエルとアラブ諸国との戦争)を経て国土を拡げます。一方、現在のイスラエル全域を占めていたパレスチナの国土は大幅に縮小し、東をヨルダンに接する「ヨルダン川西岸地区」、地中海とエジプトに接する「ガザ地区」に分断されました。1980年、イスラエルはエルサレムを首都と宣言しますが、国連安保理はこれを認めず大使館設置を禁止。イスラエルとパレスチナの平和的な共存を目ざす「2家共存」を進め、1990年から米国の歴代政権は支持してきました。米国は国連安保理常任理事国であり、今回の大使館移転は安保理決議に反する行為です。

国家による市民への暴力

 イスラエルはヨルダン川西岸と東エルサレムなどでユダヤ人入植地の建設を続けています。隣接する地域では住居や農地、給水タンクなどが入植者によって破壊され、パレスチナ人への暴行、ひき逃げ、放火などが頻繁に発生していますが、入植者が処罰されることはほとんどありません。一方、抗議するパレスチナ人がイスラエル当局によって逮捕・拷問されるなど日常的な暴力が起きています。

 パレスチナ自治区ガザ地区は、1948年第一次中東戦争で発生したパレスチナ難民とその子孫の人口が急増し、世界で最も人口密度が高い地域です。2007年、ハマスによる実効支配からイスラエルが経済制裁を強化、経済が停滞し失業率は世界最悪の40%を超え、人口の8割が国連の援助物資に頼って生活しているとのこと。今年3月末から毎週金曜日、イスラエルの占領反対を訴える抗議デモが行われ、1万5000人近くパレスチナ人が負傷しています。

 これらの抗議活動は、投石や目くらましのために燃えるタイヤを転がすといったもので、石は抵抗の象徴でもあります。一方、イスラエル当局は銃や催涙ガスなど武力で対抗。境界線ではイスラエル軍のスナイパーが狙撃用スコープで頭や胴体など急所を狙うこともあり、催涙ガス弾は呼吸困難に陥る強力なものです。実弾にはバタフライバレットという殺傷能力が高く、国際法で禁止されている非人道的な兵器が使用されています。これらの攻撃は医療従事者や外
国人ジャーナリストにも向けられ、今年6月1日、救急ボランティアのラザン・アルナッジャールさんが救護活動中、イスラエル軍のスナイパーに背後から撃たれて死亡しました。ラザンさんは21歳の女性で白衣を着用し両手を挙げて負傷者に向かって歩いていたということです。

命をかけて世界に発信

 これらの紛争地でジャーナリストは完全防備で取材することが求められ、志葉さんはヘルメットを被り、「PRESS」と記された防弾アーマーを着用します。防弾アーマーは鉄の板が入った戦闘用の銃弾に対応したものです。このような危険な状況の中、老若男女が抗議デモを行い、「命の危険はあるが、ガザの絶望的な状況を世界中に伝えたい」と10代の子どもたちが主張しています。「世界の無関心がパレスチナの人々を危険な場所に追いやっています。イスラエル当局や入植者たちによる非道な暴力や国際法違反を国際社会が対応しないため、彼らは自分の命をかけても世界に伝えようとしているのです」と志葉さんは話します。

 第2次安倍政権発足以来、日本とイスラエルとの協力関係が強化されています。5月の安倍首相のイスラエル訪問では、経済だけでなく防衛関係への投資を増やしていくとの約束が交わされました。8月29日・30日、川崎市とどろきアリーナではイスラエルの軍事見本市が開催されました。安倍政権下での武器輸出三原則の撤廃で、このような軍事見本市の日本での開催が増加しているとのこと。私たちの知らないところで、日本はパレスチナ人の殺害と迫害に手を貸し、国際法違反に加担しているのです。

西日本豪雨の真っただ中、62名の参加があり、参加費2万1750円は志葉玲さんの取材協力費として寄付されました。

Table Vol.375(2018年9月)

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