「放牧神山鶏」の鶏舎から見えるのは向かいの山のみ、まさに「天空の鶏舎」を訪ねて、川村農場の川村忠雄さんの取り組みを聞きました。
神山鶏は、生協の父・賀川豊彦に学び、「誰もが栄養豊かな食べものを食べ、飢える人がいない養鶏の郷をつくりたい」と徳島県石井町で養鶏農協を開いたのがはじまりです。健康な鶏を育てるために、自然の光や風が入る開放型鶏舎で30年以上前から抗生物質や抗菌剤を使用しない無投薬に取り組んでいます。
──神山鶏が始まった頃のことを教えてください
川村 当時は鶏を飼うのに薬をたくさん使うのが当たり前でした。でも、いくら薬をやっても鶏が死ぬんです。これは危ない、考えないといけないと思っていました。コープ自然派の前身の生協から無投薬でやってほしいと頼まれて、試験的にやってみたら死ぬ鶏が減ったんです。薬はやらん方がいい、どうやったら健康になるのかを考えないといけないです。
──鶏を健康に育てるには?
川村 鶏はものを言わんけど、毎日見ていれば鶏が何をしてほしいのかわかります。暑がっていたら風を通して温度を下げて、寒そうにしていたらぬくめてやって、いいエサと、山の湧き水をやってね。温度、湿度、鳥インフルエンザを運ぶ野鳥などいろいろと神経は使います。
養鶏を始めたとき「山の上にそんなに大きな鶏小屋を建ててどうするんだ」と周りから言われましたけど、山の木を自分で切ってきて設計して建てて、山から水を引いて、給水や給餌の仕組みも全部自分で考えてつくりました。
──放牧神山鶏について教えてください
川村 EUのアニマルウェルフェア認証に対応する先進的な施設をつくりたいという話があって、「よし!やってやろう!」とすぐに決めました。オーガニック基準の広い運動場を造成して、鶏が自由に出入りできる鶏舎に改築して、2019年から放牧神山鶏の生産を始めました。いま放牧は1棟ですけど、ゆくゆくは他の鶏舎も全部放牧にしたいと思っています。鶏にはその方がいいに決まっとるからね。なんでも楽しみながら積極的に踏み込んでやらんと。一生懸命すれば楽しいですよ。誰もしていないことにチャレンジするのが面白いんです。
Table Vol.507(2024年11月)