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くらしと社会

腸内環境と免疫

2021年11月22日(月)、コープ自然派奈良(ゆったりさん主催)は薬剤師・藤原愛美さんを講師に腸と免疫についてオンライン学習会を開催、藤原さんはDETOXプログラムの提供や食事&生活習慣の教育活動などを行っています。

※イメージ

●腸の乱れが不調のもとに

 腸には免疫細胞が多く存在し、消化、吸収、排泄、免疫、セロトニンをつくるなどの役割があります。そのため、腸の乱れは大腸がんや腸炎、肝臓疾患、肥満、2型糖尿病、アレルギー疾患、脳精神神経疾患(多発性硬化症、自閉症、うつ病、パーキンソン病)、慢性関節リウマチ、尿毒症などさまざまな不調につながります。また、2021年11月、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血患者に多く検出される腸内細菌を特定したと大阪大学が発表しました。

 免疫細胞は異物が入ってきたと認識すると体から追い出すために抗体や炎症によって攻撃します。炎症を起こしすぎると腸炎や肺炎などが起きやすくなり、免疫機能の調節ができないと自己免疫疾患を起こして全身性エリテマトーデス(SLE)や潰瘍性大腸疾患などの病気になりやすいということです。

 「リーキー(漏れ)ガット(腸)」という腸のバリア機能が壊れる現象があります。細胞は細胞同士の密着結合によって異物の侵入を防いでいますが、このバリア機能が壊れると細胞と細胞の間に隙間ができて体内(血管)に不要なもの(毒素・アレルゲン・ウイルス・細菌など)が入り、血管を通して全身を巡ります。その結果、自己免疫疾患や全身のアレルギー症状、倦怠感、体の痛み、免疫力の低下、神経過敏などさまざまな症状が現れるリーキーガットを引き起こすとのこと。原因には小麦グルテンや砂糖、加工食品などの食事、抗生物質や胃酸抑制剤、ピル、非ステロイド性抗炎症薬などの使用、ストレスなど腸内細菌の乱れがあります。

●腸内の多様性とバランス

 病気の予防には腸内細菌を増やすことと、さまざまな種類の腸内細菌をバランスよく保つことが重要です。腸内細菌は食物繊維を分解してアミノ酸やビタミン、短鎖脂肪酸といった物質をつくり出します。短鎖脂肪酸(乳酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸など)は腸内を弱酸性に保ち、腸蠕動運動の促進、腸粘膜のエネルギー源、水・ナトリウム・カルシウム・マグネシウムの吸収の促進、炎症性サイトカインの抑制、肝臓で脂質合成を抑制するといった働きをします。

 短鎖脂肪酸の1つ「酪酸」はレギュラトリーT細胞(Tレグ細胞)を活性化し免疫機能を調節します。Tレグ細胞は免疫の働きを抑制して暴走を抑える免疫抑制細胞の1つです。さらに、酪酸は大腸粘膜を修復し、酪酸をつくる腸内細菌(クロストリジウムなど)は食物繊維を食べることでつくられます。

 有用菌を腸に直接届けて有害菌の活動を抑えるプロバイオティクス食材として、乳酸菌(ヨーグルト・酒粕)、納豆菌、ビフィズス菌(ぬか漬け、味噌)が最適です。有用菌(善玉菌)を増殖・活性化し腸内環境を整えるプレバイオティクス食材には、オリゴ糖(タマネギ、豆類)、水溶性食物繊維(昆布、ワカメ)、不溶性食物繊維(豆類、きのこ類)など、腸内細菌を育てる食材を摂ることが重要。「私たちができることは、腸内細菌が喜ぶ食生活を心がけ、うまく可愛がってあげることです」と藤原さんは話しました。

講師の薬剤師・藤原愛美さん。

Table Vol.461(2022年4月)より
一部修正・加筆

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